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幸福な不幸、不幸な幸福  作者: どうしようも納言
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不幸な幸福、幸福な不幸 林

林さん、家の中でゴロゴロ

 後日、林のマンションのポストに振り込み明細書が届けられていた。

「うーん、十万か...まずまずだな」

 一分で十万。十万で十分。すでに一度コンビニを襲った後だったので、今回をのぞいて後二回すれば月に四十万の給料となる。四十万もあれば多少贅沢しても暮らせる。彼は別に大金を望むわけではなかった。

大金を望むわけでもなく、かといってまっとうな人生を歩むわけでもない。だが充実した人生だ。

出来杉君よりできすぎた人生だな。林はパソコンの電源を入れながら、思いをはせる。

 幸せな人生を送るには...不摂生することなく、毎日を生きること。けっして強欲にならず、そして、僻みもせず。

 出来杉君は可哀想な男である。本当ならば静香ちゃんと結婚できていたにも関わらず、なぜかいつも人に助けを求めているばかりの男に知らずのうちにそのしずかちゃんを取られていたからだ。

  出来杉と静香ちゃんが結婚ルートがあったとすれば、小学生とはいえ、出来杉は本人が意識しようとしなかろうと、多少はしずかちゃんと一緒になることを考えていたはずである。なぜなら、彼はできすぎなのである。神が万能ですべてができるため、存在することもできる、つまり神は存在する、という論理同様、出来杉はできすぎるため、あらゆるルートを考察し、自分がもっとも出来すぎるものとして存在することを望むだろう。しかし、その道を他人に頼ってばかりいる人間に取られてしまったのだ。

 自分の人生に対して、悲観するのもまたエリートたるゆえんである。

 かれはかの怠惰な主人公を責めることなく、ひたすらに自分を責めるのだ。その点おれは運がいい。静香ちゃんのような女性を求めるような気持ちを林は知らなかった。というよりも興味がわかなかった。

 苦しみは理想と現実の挟間から生じるものだ。だったらその挟間をなくせばいい。簡単だが、なかなかできることではない。

 林はとあるサイトを開いていた。そこでは浮気などの詮索をする簡単な依頼から、殺人を要請するような依頼まで多種多様な案件が書かれていた。

 今の世の中、パソコンで出来ないことはない。だが、匿名性が高いからといって、必ずしも安全であるとは限らない。警察が監視しているのは確かだった。

 林が探している記事は「来たれ、猫のゲーマー達よ!」という依頼だった。そこでは巨大なモンスターを狩るゲームの仲間を探している、という簡単な依頼だ。

 だが、その一見拍子ぬけたような題で隠した、泥棒たちの情報交換の場所であった。

彼は「dorami」というコードネームを持ち、飛び道具の達人として、仲間内であこがれの的でもある。

 一緒に狩りに出られるのは四人、だがdoramiこと林の要求するクエストはトップクラスの難易度のものばかりで、四人集まるとも限らない。

 いつものように林がメンバーを集めると、またずして二人集まった。林はすぱすぱとタバコを吸うふりをする。...一人は一般人、もう一人は「猫」と書かれている。

 警察がここを検挙するのはほぼ無理だと林は確信している。なぜならここに集まるためには重度のゲーマーでなければならず、万が一そうであっても、名前が猫関係でなければならず、また、さきほどのサイトから入ると、違うゲームに飛んでしまう。

 このシステムを林が知っているのは、どろぼうのいわゆる「業界」ネタで知った。教えてくれたのは世間から身を隠し、そのような情報を売り買いすることで生計を立てている一人のホームレスだった。

 「どらみ」が飛び道具を使うのはある一つ理由があった。つまり、彼が補助をする、という一つのメッセージだ。前回のコンビニ襲撃の際も、シフトでいつバイトだけになるか、レジのカギの複製、監視カメラ、店長へと置手紙、など、実際の襲撃を隠ぺいするのが彼の仕事であった。

 一方、今回の「猫」が使っているようなソード、つまり近距離系の武器を持っているのは当日、速攻で相手を仕留めることができる、という一種の目印であった。

 それだけわかれば後はなにもない。彼らはひたすらに自分より数倍も大きな相手に集中して、立ち向かうのだった。


 

 

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