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幸福な不幸、不幸な幸福  作者: どうしようも納言
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幸福な不幸、不幸な幸福


 ふぅっ、とため息を一つつく。手に持っていた、ウィーコントローラーヌンチャク付きをだらりと下げる。

 何を隠そう、今の今まで深夜のコンビニで戦闘を行っていたのは、ほかならぬさやかだった。


 彼女は夕刻、潤と別れてから、性懲りもなく、潤との運命について考えていた。潤は「おれに格ゲーで勝てたら、それを認めてやろう」といった。ならば...

 さやかは正規の方法の格ゲーで潤に勝てるわけがないと思う。また、それを承知で潤はこのことを持ちかけてきたのだ。ならばこそ、

 さやかは弟の部屋にあった、ウィーコントローラーを無断で拝借した。

 この人生というゲームを格闘というジャンルに持ち込むまで!

 鳴かぬなら 鳴かせて見せよう ホトトギス

 かつて江戸の庶民は織田信長のことをそう評したという。ここにそのオーラを受け継ぐものが立ちあがった。時計の針が十二時を過ぎるたころ、シンデレラは王子の下を去り、さやかはサングラスをかけ、ラフな格好で王子を襲撃せんとす。


  さやかはなにも潤を殺そうとするのはもちろん、気絶させようとしていたわけでもなかった。が、いざコンビニに到着すると、いやらしい顔を浮かべて青年雑誌に見入る潤の姿をとらえてしまったのだ。

 さやかの頭の何かが外れた音がした。

 その瞬間から潤が倒れるまで、まぶたを一回閉じれたかどうかの短い時間だった。

気がつくと、さやかは目の前に倒れている潤を発見した。自分の手にはウィーコントローラーがにぎられている。。

  ...これは。

 まあ、何がともあれ、私の勝ちよね。潤も分かってくれるはず。

そうさやかが納得した時だった。

 が...

 後方から客の来訪を告げる電子音が聞こえた。

すっ、と背筋が凍る。やばい、見られた。誤解される...

 

 おそるおそる、振りかえると、同じようにサングラスをかけた男が立っていた。男はさやかの様子をいぶかしげに見ている。どうしようか、このまま黙って立ち去るべきかな、っとさやかが思案していると、

「仲間にするなら?」と唐突に男が訊ねてくる。

 さやかは一瞬、何を問われたのか分からなかったが、彼女は無意識的に「キティちゃん!」と答えていた。仲間にするならもちろん、キティちゃんに決まってる。

馬鹿じゃないの、そんなの決まってるじゃない。と頭の中で呟いてから、さやかも男の様子をうかがう。

 すると、その男は、案の定、さやかの回答に納得がいったのか、うなずくと、背中を見せ、レジへと向かっていく。

  えーっと...わたしはどうするべきなのかな。一、このまま帰る。二、潤が起きるまで待つ。あ、でも潤が起きなかったら、あのお客さん商品買えないじゃん、どうしようか...いや、え?ちょっと待って?!

 さやかの目はレジにくぎ付けになった。男は平然とレジに手を突っ込み、札束をつかみだす。

  え...泥棒?...

 さやかがそう思ったのは、すでに行動した後のことだった。 目の前には潤の場合と同じように、男が一人倒れていた。

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