表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
文具戦争  作者: 文音マルタ
Fight&Fight
52/54

二人

そのとき、僕らがそこにいたのは偶然だったのだろうか。

ドン!という音が協会の外から聞こえた。

今閉めたばかりのドアから会長が飛び出す。

「何事だ!」

「わかりません」

「外に出よう」

シュナイダーの提案に僕らは頷き、出口へと走る。

「まさか・・・あいつらか」

会長がいつになく慌てている。

「あいつら」。多分、文具同盟の事だ。僕もそんな予感がしていた。

出口を勢いよく開け、外へ飛び出すとそこには─────白髪の男。

「か・・・神威・・・!!!」

僕は思わず歯軋りをした。

と、肩をぐいっと引かれ、協会の中へ戻される。

「アレックス・・・!?」

アレックスはドアを閉めて僕の肩をつかむ。

「お前はダメだ。・・・いいか、まだ詳細は話せないが─────お前は絶対に顔を覚えられちゃいけない。」

「でも・・・」

僕はアレックスに何かを言い返そうとしたがドンドン!という爆音で掻き消される。爆発物でもあるのだろうか。かすかに火薬くさい。

ドアの向こうから神威の声が聞こえてくる。

「さぁて、早速だが──────うちのメンバーがお世話になっているようだな。」

「・・・お前、どうやって入って来た!?セキュリティーシステムは定子に作り直させたのに・・・!」

会長の声には怒りと戸惑いが混じっている。

「定子・・・」

神威は何かを考えているらしい。と、突然大笑いを始めた。

「ふっ・・・はははははは!!」

「なにが可笑しい・・・?」

「くっくっくっ・・・だって、定子・・・くっはっはっはっ!・・・定規だから、定子って・・・くっくっ・・・あー、面白い」

「・・・?」

「昔っから柳瀬のネーミングセンスには笑わされるぜ!」

ん?柳瀬って誰?

「何故・・・お前がそれを知っている・・・?」

会長の声が震えている。

「────そんな事はどうでもいい。"イレイザー"はどこだ」

「はは・・・知りたければ俺らを倒していけ!」

矢代の声だ。なんだ?どういう事だ?

「会長、ここは俺たちに任せて下がっててください!」

いつになく真剣な声。僕の中での矢代が、ただの委員長でしかなかった頃に聞いていた声。

「一般隊員!総員構え!俺の合図で射撃しろっ!!」

一般隊員?一体外でなにが起こっているんだ!?

アレックスがすっと顔を寄せる。

「お前は知らなかっただろうが、蛍光戦隊側から警備のために武装兵が配備してあったんだ。さっきの爆音は、銃声だろう。」

そんな・・・!

そのとき神威のイライラとした声が聞こえてきた。

「ちっ・・・飛び道具持ち込みやがって・・・腕怪我しちまったぜ」

あ、当たったのか。

「お前ら・・・確か蛍光戦隊とかいったな?フン、いいだろう。俺が消してやる」

僕はすごい寒気を感じた。鳥肌がたった。

「殺気・・・?」

アレックスは顔を真っ青にする。

「やばい、矢代ってヤツ、死ぬぞ」

「──────は?」

死ぬ?誰が?矢代?なんで?

「っ!」

アレックスがドアノブに手をかけ、開け放った。

そこには今にも矢代に襲いかかろうとする神威がいた。

「やめろおおおおおおおお!!!」

アレックスは叫んだ。ぶわっと白い羽が舞う。

ピタッ、と神威が動きを止めた。

僕は驚きに目を見張る。

「・・・震えてる・・・?」

そのとき突然、遠目からみても分かるほどに白髪の男は震えだした。汗が粒になって彼の顔をつたい落ちて行く。

「・・・ば・・・ばかな・・・そ、そんなハズは─────」

「もうやめろよ、ヒロキ。そいつを殺したってなんにもならない。罪を重ねるな。お前が本当にやらなきゃならないのはそんな事じゃないだろ」

アレックスが神威を諭している・・・?

「そ、そんなハズはないんだ!だって!お、おおお、お前は─────うわあああああああああああ!!」

神威が逃げ出した。

「・・・?」

矢代をはじめとするそこにいるアレックス以外の全ての人間は、口を開けて眺めている事しかできなかった。

アレックスがポツリとこぼす。

「償いだろ・・・馬鹿野郎。」

叫びながら10メートルほど走ったところで、神威はあのときと同じように、突然姿を消したのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ