ナズナの秘密
アレックス・・・?
どこかで聞いた気がする。
「定子は元気か?」
「えっ?・・・あ!!」
思い出した。数日前の部室での会話に出てきていた、定子の護衛を引き受けたという二人の男のうちの一人だ。
「定子は?」
アレックスは辺りを見回している。
「今は居ませんよ。本部にいると思います。」
アレックスは少し残念そうな表情をしたが、すぐに元気を取り戻す。
そこで僕はナズナの事を思い出した。
「あ、ナズナさんを探しにいかなきゃ!」
「あ。あ───、それは多分、大丈夫だぜ。」
「え?」
僕が聞き返すとアレックスは、ばつが悪そうに頭をかき、
「シュナイダーが止めに行ってる。」
と言った。
止めるってどういう事なんだろう。というか、シュナイダーさんも来てるんだね。
「シュナイダーだけじゃ無理かもしれないから、俺らも行ってみる?」
と言ったアレックスが指差した方向は
──────屋上。
あれ─?校内の鍵閉めたよね?
もしかして・・・外壁から登った?
僕たちは屋上へ向かった。
アレックスはまず僕を抱えて飛んだ。どういう原理なのか分からないが、多分これも能力なんだろう。抱えられた状態だからよく見えないけれど、一瞬、羽があるようにも見えた。
屋上へ着いた。アレックスは僕を下ろし、にへらと笑った。
「あーらら、惜しかったね。あと少し早けりゃ見られたのに。」
そこで顔を上げた僕は見た。
シュナイダーがナズナに抱きついてる。
「なんだ・・・あれ」
後ろから声がし、僕が振り返ると口を開けた矢代が立っていた。アレックスの相棒、アレンから今下ろされたばかりなのだろう。創も矢代の隣で驚いている。
僕らが唖然として見守る中、ナズナがシュナイダーの腕の中でがくりと崩れ落ちる。気を失ったらしい。
「どういう事なんです?」
と僕がアレックスに聞くと、相変わらずのニヤニヤ顔で答えた。
「シュナイダーに抱きつかれるとナズナは気を失っちまう。よっぽど好きなんだね」
「?」
さっぱり意味が分からない。
僕はそんな表情だったのだろう。アレックスは不可解そうな顔をした。
「あれ?まさか知らない?」
そして僕がさらに困惑している表情を見ると
「あらぁ、知らないんだぁ。」
と若干オカマ言葉でにやにやしだした。
僕が矢代と創の方を見ると、二人は目を逸らした。
お前ら、意味が分かってるのか。
「いや、だって俺が説明しようとした時最後まで話聞かなかったじゃん。」
という矢代の発言に対し慌ててブンブンと首を縦に振る創。
「じゃ、教えてやろーう」
アレックスが少し偉ぶった口調で言った。
「ナズナは二重人格者なんだ」




