願え。されば現れん
定子ぉおお!!
と心の中でシャウトしたそのとき廊下に姿を表したのは定子─────ではなく校長だった。
でも構わない!ファインプレー、校長!!
全校集会のとき「えー、」の回数を
数えて爆笑してたことは謝るぜ!!
「何をしているのかね、君たち」
その白々しさも一級品だ。
「あ、ああ、いえ。・・・それじゃ、俺はこれで。・・・。
・・・・・・・。」
これで引くということは校長がこちらの傘下であることはばれていないらしい。
委員長は最後まで何か言いたそうに僕の顔を見つめていたが、やがて教室の方へと去っていった。
「ありがとうございました」
僕は校長に頭を下げる。
「いや、なに、私はただ定子が校長室で着替えるというから追い出されただけじゃよ。」
ふぉっふぉっふぉっと元気良く笑うこの爺さんはまだ当分死ぬ心配はないな、と思った。
それにしてもどうして女史は着替えているのだろう?
しばらく校長と雑談をしながら校長室の前で暇を潰したあとでドアをノックした。
「はーい、いいわよ!」
と聞こえたので
「なぁ定──」
「キャアアアアア!!!!」
「うわっ、ちょっ、待っ─────ぶっ!!」
何かが顎にヒットした。続けざまに額、腹へと当たる。
だが僕は痛みをこらえて前方を盗み見た。
定子はまだ着替えの最中だったらしい。ということは「いいわよ!」といったのは、今まさにクローゼットのなかで腹を抱えて笑い転げているあの悪女こと、会長で間違いない。
「こっち見るなアホ───────!!!」
定子の放った何かのトロフィーは僕の顔面にめりこんだ。
ああ・・・このトロフィーが尖ってなくてよかった・・・
尖ってたら、確実に死んでたな・・・
薄れゆく意識のなかで馬鹿笑いする会長の声と僕の名前を呼ぶ校長の声だけが聞こえていた。




