誘拐
校長室の前についたものの、中にいるのが校長だけだったらと思うと躊躇ってしまう。
「ねぇ・・・やっぱりやめようよ・・・!」
そういいながら僕の制服の裾を弱々しく握る。これでも彼女なりに必至に止めているつもりらしい。だが僕は逆にこれで決心した。
─────どうせ一度の高校生活。一緒に、波乱万丈ライフと行こうぜ─────
ガチャリ。
「え・・・。」
校長すらいない。
「ほ、ほら、噂だけだったんだよ。ね?帰ろう?」
まぁ、最初から冷やかしのつもりだったからショックはさほどない。
だが、その時ピリッとしたものを感じた。誰もいない部屋のはずなのに妙に緊迫した空気を感じる。
「・・・殺気・・・!?」
その時だった。
「きゃあっ!!」
驚いて後ろを振り向く。
だがそこに藍の姿はない。
「藍っ!!」
角を曲がる人影が見えた。
「くそっ!」
なにが起こったのかわからない。
だけどこれはただ事じゃない・・・気がする。
さっきの校長室の空気といい、人影といい、明らかに日常ではあり得ないことだ。
無心で追いかける。
見失ってたまるか!!
相手は速い。だが差を広げられる事はない。
階段をまた一つ上がる。
そして次の階段を上った。
どうやら相手は屋上に向かっているらしかった。相手が屋上の扉を蹴り破る。
眩しい。でも僕は見失わないようにしながら光の中に飛び込んだ。