歓喜
ヒロシともう一人の男は、気を失ったままで椅子にしばりつけられた後「文具の能力を使えない」“ルール”がある部屋に連行されていった。
歓喜溢れかえる会議室の中で会長もシュナイダーも藍も、そして僕も少し表情がゆるんだ。
シュナイダーがトニーに手を差し出す。
「よろしくお願いします。トニー」
「うん、よろしく!」
その光景は微笑ましかった。先ほどは頼もしく見えたトニーも、年齢にして10歳前後といったところだろうか。トニーは帽子をかぶり、背中にはリュックサック、サングラスを頭にかけて半袖半ズボンだ。
「あっ・・・!」
声を漏らしたのは藍である。
先ほどから藍はこの少年が可愛くて仕方がないらしかった。
今はその開きっぱなしなのに本人がまったく気づいていないリュックサックを見て、キュンときているようだ。母性本能というヤツか?
シュナイダーが
「さっきは屋根裏に隠れていたのかい?とてもかっこよかったよ・・・そう、例えるならニンジャみたいだったよ!」
「えっ、そうかい!!僕、ニンジャ大好き!」
「藍、藍もニンジャに見えたよね?」
「えっ、あっ、う、うん!に、忍者みたいだったよ・・・!!」
シュナイダーはニンジャの話題だから日本人である藍に振ったのかどうかは分からなかったが、藍もさほど詳しくはなかったようだった。そりゃそうだ。日本にだって、もう忍者なんていないしな。
その後は藍とトニーの微妙に噛み合っていない会話を聞きながらシュナイダーと笑って二人を眺めていた。
ガチャリと音がして会長秘書が会議室に入ってくるなり
「二人が目覚めました」
会議室は再び緊張した空気になった。




