消滅
「つまりこういうことだ」
そういうとヒロシは指先を天井へ向け
「今のところ、俺以外にあの石板を解読できるやつがいない。それはつまり────情報を提供しないという選択肢も俺にはあるという事だ。」
会長が眼を怒らせる。
「ヒロシ・・・貴様まさか・・・」
「やぁ、大丈夫だったら。そんな怖い顔しないで」
ヒロシは会長にウインクを飛ばしてみせた。なぜこの状況下でそんな余裕があるのか。
ヒロシはすぅっと息を大きく吸い
「しかもその情報ってのもどういう訳かかなり貴重なものでいろんな組織が欲しがっていると聞いたら、そりゃあこんな待遇の悪いところだけに独占提供する理由もないよな。・・・ということで・・・ここでいう、敵対勢力の『文具同盟』にも提供する事にしたんだ」
と、一息に言い切った。
会長の眼の色が憤怒から驚愕に変わる。
「な・・・んて・・・ことを・・・」
定子をはじめとするその場の全員が息を呑む。
シュナイダーが恐る恐るといった様子で口を開く。
「お前・・・どうしてわざわざ抗争が激化してしまうようなことを・・・!?」
それを聞いてヒロシは笑った。
「ははは、強いものこそ欲しいものを手に入れられる。・・・その過程を見るのが面白いからだよ!!」
僕はその時ヒロシの目だけは笑っていないのに気づいた。
「能力を持った奴らが・・・無能力者のこの俺の情報にハイエナのように群がり、殺しあう!こんなに楽しいことがあるかよ!!」
(正気かよ・・・!)
と僕は思った。
その時定子が動いてヒロシをいつのまにか押し倒す。
「・・・お前・・・みたいなやつは・・・」
定子は馬乗りの状態で自分の腕をゆっくりと上げる。
「二、三回死んでこい!!!」
ガッ、と音がして定子の手が床にぶつかり、その音が会議室中に響く。
ヒロシは最後まで低く笑いながら拳が自らの顔に到達する直前に姿を消していた。




