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【プロローグ】

こんにちは!初投稿&処女作になります。

若干俺ガイル味があるかもしれないですが、大好きな作品なのでリスペクトということで目をつぶっていただきたいです。よろしくお願いします。


※この作品はフィクションであり、登場する人物・団体・地名等はすべて架空のものです。実在のものとは一切関係ありません。

朝の光が大きな窓から差し込むと、白い壁と木目の床が淡く輝いた。

まだ人影の少ないロビーに、清掃スタッフの掃除機の音と静かな足音が響く。

誰もがまだ目を覚ましたばかりのような静けさの中で、今日一日のドラマがゆっくりと動き始めていた。

俺は深呼吸をひとつして、胸の奥に積もった不安を押し込めた。

これから始まる結婚式、そして自分自身の新しい一歩。

夜の世界から昼の舞台へ、俺はもう戻れない場所に立っている。

「さーあ!締まっていこう!!」

チャペルの扉を開けて、ヴァージンロードで。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「あぁっ〜〜〜やっと辞めれたぁ〜〜〜…」

早朝7時、夜を知らない街のネオンも輝きを鎮め、歌舞伎町から自宅までに帰る最後の日。


「…まあもうでももう行かなくていいんだもんなあ…」

辞めると決めた日には、クソ喰らえ!燃やしてやるこんなとこ!!って思ってた癖に、今は不思議と寂しさがある。思い返してみれば、店長に足を蹴られた日、全力平手ビンタを喰らった日、灰皿を投げつけられた日…。いやねえな、ないない。まじであのクソ店長次会う機会があればジャンボジェットのエンジン詰んで右ストレートかましたるわ。

ギャンブルにハマって借金作って夜の仕事を始めて地獄を見て…まあやっと辞めれて。全部自業自得の地獄なんだけど。韻踏めちゃったラッパーになろうかな。革命の時ィィィ!!


「つったってなあ、金がねえなあ」

深夜テンションを朝まで引き摺りながら、ふと自分の現状を見つめ直す。大学に行きながら金を稼ぐ、1番コスパが良くて生活リズムが合うのが夜の仕事だった。学業と金のバランス、これをもう崩せない。ロフトに敷いた某ニ〇リのやっすい布団の上で、ぼやきながらスマホ片手にタバコを吸う。と、ふと目に止まるものがあった。

「…ブライダルスタッフ?あー、結婚式場か」

結婚式場。確か高校のころ学校に隠れてこっそり働いてたやつがいたっけな。


「………ぷふっ!!ねえなあ!キャバクラで働いてた穀潰しのパチンカスヤニカスアル中に、人の幸せの支えなんて!!」

自嘲気味を通り越してもはや他人が如く笑ってしまった。ないない。そう思いながらも、昔親戚の誰かの結婚式に呼ばれた記憶を思い返す。

煌びやかなチャペル。華やかな披露宴会場。ヴァージンロードを歩く純白の新婦。

「…まあでも、一周回ってアリかもな。経験として。」

寝酒なのか朝酒なのかわからないものを煽りながら、気がついたら寝てしまっていた。応募ボタンを押した後で。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


すっかり紅葉の街路樹は赤く照り、暑いのか寒いのかわからない日が続く。2時間の仮眠と明らかに抜ける筈のないアルコールでできた重い身体を支えながら、キャンパスのタイルを革靴で鳴らす。


「風呂入れなかったな、ふわあぁあぁ…」

コーヒーなんぞで誤魔化せない眠気と共に、夜の匂いを撒き散らす香水を振る。何を学んでいるのかわからない授業なんて行く必要あるのかね。いや!行くことが大事!大学は出席が命だからね!!


そんなしょうもないことを考えているとスマホが震える。電話だ、知らない番号。出なくて良くない?え、どうせ電力会社だよ。と思いつつも、調べるのも面倒で出てしまおう。

『もしもし。Maison du Pragmaメゾン・デュ・プラグマ、シラカワと申します。こちら朝霞様のお電話で間違いないでしょうか。』

…どこのシラカワ?メゾ、メゾン?何??

「はい、間違いないですが。どういったご用件でしょうか。」

『こちらご応募いただいた「ブライダルスタッフ・バンケットサービス部門」のアルバイトについて、面接の日程の調整でお電話差し上げました。』


うん、忘れていた。今日のことなのに。あらやだ妖怪のせい?いいえ、これは酒のせいです。なんでも妖怪のせいにしていい時代は終わりましたよ。いやまあ酒のせいにするやつの方がよっぽどクズなんだけどな。

「あー…承知致しました。よろしくお願い致します。」

応募しちゃったもんは仕方がない、とりあえずは面接行ってみてから考えよう。合わなかったら辞めるし、まあ面接で落とさせる可能性も高い。


トントン拍子で進む日程調整に、適度に返しながら散った紅葉を踏み鳴らす。



ーこの日をきっかけに、俺の人生もチャペルに差し込むような光に照らされるようになるとはね。

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