新たな絆とましろの涙
「すーこ……、すーこ……。ふみゅう……。お兄様ぁ……。よしのは闇堕ちの黒武者になりましたが、囚われの姫を助けましたぁ……」
「闇堕ちの黒武者って……」
「よしのは、どんな夢を見てるんだ?」
敵との戦闘でよしのは気力を使い果たしたのか、その場に崩れ落ち、兜と鎧を取ると気絶するように寝てしまい、その寝言にましろと俺は苦笑いした。
「よっ…と! これで全員かな?
物的証拠もあるようだ。
じゃあ、俺は警察に連絡取ってみるよ。」
「ああ。頼む。上原」
上原は、半グレ男と寝取を縛り上げると、売っていた合法ドラックらしきものが大量に入った段ボールを確認すると、
電波の通じ易い場所を探して外へ出て行った。
「……」
「……」
起きているものが自分達しかいない状態で、俺とましろはぎこちなく向かい合った。
さっきはましろを助ける事に必死で考える余裕がなかったが、昨日、出生の秘密を知らされてからとても気まずい関係になっていたのだった。
「どうして……こんな危険を犯してまで助けに来てくれたの? 私、もう、よしのさんの体じゃないのに……」
ましろに固い表情で心外な事を言われてしまった。
「何言ってんだよ。よしのの体でなくても、そりゃぁ、助けに来るだろ! ましろのお母さんからお前がいなくなったって聞いて、どんなに心配したか!」
「どうして? もう私は義隆先輩の彼女でも元カノでもない。友達にも……なれないじゃないっ……」
「…………」
俯いて、涙を堪えているましろに何と言おうか俺はしばらく考えた末……。
「正直驚いたし、戸惑ったよ。両親が何か変な事を言い出したと思ったら、DNAの鑑定結果を見せられて……」
『鑑定対象者 虎田ましろ/兄弟姉妹である可能性は99.98%以上と判断されます。』
俺はそう言い、あの鑑定結果を見せられた時に生じた気持ちを素直に伝える事にした。
「だけど、俺は……、嬉しかったよ。お前と実の兄妹だった事が分かって嬉しかった! それが助けてやりたかった理由じゃいけないか?」
「ええ!?」
目を剥くましろに俺は続けた。
「その事実を知って今まで、お前に感じていた親近感とか、似ている空気感とか、不思議に思っていた全部が腑に落ちたような気がした……!
よしのの体に入っていたお前と妹として接していた時は、こんな関係も悪くないなんて思っていた!
お前はどうだ? 俺が兄だと知って、嬉しくはなかったか?」
高揚する気持ちのまま、勢い込んで聞く俺に、ましろは憤然と叫んだ。
「は? バカなのっ? 嬉しいわけないでしょーがっっ!? 元カレだったのよっ! 今でも大好きなのよっ! そ、それなのにっ…兄妹なんて知らされてっ、わ、私がどんなに辛い思いだったか、分かるっっ!? ひぐっ…。義隆先輩の無神経っっ!!!」
涙をボロボロ零し俺を罵倒しながら、ましろはボカスカと拳で俺を殴って来た。
「バカッ!! バカ野郎っ!! うわあぁっ!!」
「いてっ! 痛いよ! ましろ」
結構本気で殴ってくるましろの手首を握り、動きを封じた。
「ううっ……。うあぁっ…」
赤い瞳から涙を流しているましろに俺は笑った。
「なら、兄妹としては俺の方が片想いだな?
彼氏としては至らなかった俺だが、兄として、これから少しずつ妹に振り向いて貰えるように頑張るよ。だから、側にいさせてくれないか?」
「っ……!!!! そ、そういう言い方はずるいのよっ!! ひぐぅっ……」
ましろは大きくしゃくり上げると……。
ガバッ!!
「よ、義隆先輩っ!!義隆先輩っ!! こわかった……。こわがっだよぉ〜〜!!
うわああぁっ!!わああぁんっ!!」
「ましろ、怖かったな。もう大丈夫だ。これからは、俺がお前の事、守ってやるからな?」
俺に抱き着いてわんわん泣いているましろを抱き締め返し、そのツインテールの頭を撫でてやっていると……。
「私も妹のましろさんを守りますぅっ! ハッ!」
「「!」」
よしのが、叫びながら目を覚ました。
「あっ……とぉ? 皆さん無事……ですかぁ?」
立ち上がり、袴姿で周りをキョロキョロし、遠慮がちに伺ってくるよしのに俺は頷いた。
「ああ。そうだな? よしのもましろを守るため大活躍してくれたな?」
「ひくっ…。よ、よしのさん……。確かに、大活躍だったけど……」
さっきの衝撃のシーンを思い返したのか、ましろは青褪めていた。
「そ、それに、何で私があなたの妹になるのよ! あなたとは血が繋がっていないわよ?」
ちまっ……!ましろは小さい胸を張って、人差し指を突き付けてそう主張すると……。
「血が繋がっていなくても、私はお兄様の妹! お兄様の実の妹のましろさんとは姉妹のようなものじゃないですか! だから私がましろさんの姉!
ましろ? これからは私の事、「お姉様」と呼んで下さいねっ?」
ぷるんっ!よしのは大きな胸に手を当てて笑顔でそう主張した。
「はあ〜〜?! 百歩譲ってあなたと姉妹だとして、なんで私が妹ぉ?!」
「ええ。お母様に聞いたら、生まれた時間は私の方が5分早かったそうです。だから、私が姉!」
「っ……! う、生まれた時間はともかく、おバカで天然のあなたより、しっかりしている私の方が姉の筈でしょうっ?ねぇ、義隆先輩?」
「え? うーん、そうだなぁ……」
俺はましろに同意を求められ、少し考えてみた。
ましろといえば……
寝取に唆され、NTRビデオレター作る。
→全然しっかりしていない。
半グレ&寝取に攫われる。
→危なっかしい。
サンタさんを固く信じている。
→その純真な笑顔、守ってあげたい。
「うん。やっぱりましろが妹かな?」
「なんでぇっ!?」
「やったぁ!!」
にっこり大きく頷く俺にましろは愕然とし、よしのはガッツポーズを取ったところへ……。
「おーい。警察があと5分位で到着するそうだぞ〜。」
上原が窓から俺達を覗き込み、声をかけてくれたのだった……。
*あとがき*
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