最悪の展開 《虎田ましろ視点》
「うぅっ……」
頭がガンガンする。
私、一体どうしたんだっけ……?
頭を押さえ、うっすら目を開けると、人間がこちらを見下ろしているのがぼんやりと見えた。
「おっ!彼女、起きた〜?」
「いいね〜!起きた時の表情頂きました〜!!」
「!! 誰っ!?」
焦点がはっきりすると、コンクリート打ちっぱなしの壁に四方を囲まれた殺風景な部屋で、見知らぬ男達―金髪の柄の悪そうな男、スマホのカメラを構える黒いサングラスの男が邪ないやらしい笑みを浮かべてこちらを見ているのに気付いた。
「痛っ……!?」
飛び起きようとすると、腕の自由が利かない。
両手を縄で後ろ手にきつく縛られているようだった。
「ま、ましろ……!」
「あ、あんたは……!」
そして、二人の男の近くで二度と面を拝みたくないと思っていた男、寝取が途方に暮れたような顔でこちらを見ていた。
「もしかして、あの手紙、あんたの仕業……? 頭おかしいの?これ、犯罪よ! 退学になりたいわけっ!?」
信じられない気持ちで私が喚くと、寝取はビクッと肩を揺らし、涙目になった。
「う、ううっ……。し、仕方ないだろっ! 堺さん達に、女の子を調達出来なきゃひどい目に遭わすって言われて……。ひっ!」
ガシッ!
「あら、寝取ちゃん、俺ぁただ、お友達としてお願いしただけだよね?」
「!」
寝取りの肩をガッチリ組むと、リーダー格らしき金髪の男は嫌な笑いを私に向けて来た。
「この寝取ちゃんねー?街でフラフラしてるところを数日前に俺らが拾ってやって友達になってやったの!
話聞いてたら、君ら彼氏にNTRビデオレターを送った仲だってゆーじゃん! アハハッ! ひっどい事すんね〜!」
「っ……! だ、だけど、私はコイツと関係なんか持ってな……」
「ハハッ! 関係持ってないからって、全部コイツのせいにして、彼氏と元鞘したって? そんなん、コイツも収まらないしょ!」
「うんうん。そりゃあ、収まらないよ。これは、友達として力にならないわけにはいけないよな〜。 はい、ひどい女の子のアップ〜!」
「や、やめて!何撮ってるのよ!」
金髪の男の後に、サングラスの男がそう続けて笑い、スマホを近付けて来たので、私は不快で堪らなくて、必死で顔を背けた。
「俺ら、この近くを皆が幸せになれるお薬を売ってるだけど、お客も女の子も中々捕まらなくてストレス溜まってたんだよね〜?
友達の話を聞いて、力にもなってあげたかったし?
寝取くんに彼氏の筆跡真似て手紙書いてもらって、君をおびき出す作戦立てたんだけど、まさか本当にノコノコ来てくれるとはね?」
「〰〰〰!」
バカだ、私! あんな手紙、明らかに怪しかったのに……!
携帯の連絡も全て無視していたこのタイミングだったから、手紙で連絡が来るのもあり得るかもと思ってしまった。
金髪男は歪んだ笑いを浮かべて、狂った提案をして来た。
「ハハッ。俺達で、今度こそ、本当のNTRビデオレター撮って彼氏くんに送り付けてやろうよ? ね、寝取くん?」
「あ、ああ。もう、こうなったらやってやるぜ! 俺の学生生活をメチャメチャにした鷹宮に吠え面かかせてやる! お前を溺愛しているあいつは今度こそ泣いて悔しがるだろうよ!」
「……!! 何言ってるの? バカじゃないのっ!?」
私は青褪めながら叫んだ。
義隆先輩は、大事なよしのさんと入れ替わりが解消された今、私の事なんかどうなろうと泣いて悔しがったりしないわよっ。
「そんな事したって、義隆先輩はっ……
」
「まぁまぁ、君にも気持ち良くなるスイーツあげるから!」
「うぐっ!やあぁっ!やめっ……!!んうっ…!」
金髪男にゼリーグミのようなものを数粒口に入れられ、口を押さえられ、私は喘いだ。
「うおおっ! ましろ!」
ガタンッ!
「やぁっ! 」
「おおっ! 寝取くんナイスぅ! 次、俺の番だからね?」
「次は俺ね?」
雄叫びをあげる寝取に体を押し倒され、ブラウスのボタンに手をかけられ、男達にニヤニヤした視線を向けられ、嫌悪感に吐きそうになった。
嫌だ! こんなの!!
義隆先輩!! 義隆先輩!!
思い出すのは、今は実の兄と判明した義隆先輩の事ばかり。
お願い、助けて! 義隆先輩!!
叶う筈もないと知りながら、そう願わずにはいられなかった。
涙が幾筋も、耳の横を流れて行ったとき……。
ガッシャーーーーン!!!!
ダダッ!!×2 ガシャン!!
「「「「!??」」」」
突然、窓ガラスが派手に割れ、部屋の中に飛び込んで来た数人の人の中に、私は今心に強く思い浮かべていた人の顔を見つけて、私は目を丸くしたのだった…。
*あとがき*
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