クリスマスデート♡⑦ 〜ましろの告白とこれからの関係〜
両親共働きで、小さい頃から妹のよしのの面倒を見る事が多かったせいか、他の友達を助けたり、リードする立ち位置にいる事が多かった俺は、他薦され、児童会、生徒会と関わるようになって行った。
高校で生徒会に入ったのは、その延長線でもあり、次年度から入学するであろう妹の環境を少しでも良くしてやりたい気持ちからだった。
そういう役職についているせいか、告白される事は度々あったが、「生徒会長の彼女という立ち位置になりたい」という女子達の見栄や上昇志向などの思惑が透けており、また、その告白を受け入れる事で、女子同士の派閥争いに巻き込まれる事が容易に想像がついた。
だから、今は生徒会の仕事に集中したいという理由で全て断っていた。
でも……。
『私、あんたと、つ、付き合ってあげても、いいわよ?』
一切の策略なしに、真っ直ぐに言いたい事だけ伝えてくるましろの告白は、とても新鮮で、気付けば受け入れてしまっていた。
付き合っている間、彼女に理不尽な要求や怒りをぶつけられ、げんなりする事もあったが、何だかんだ憎めず……。
初めての交際でこちらも行き届かないところがあるだろうし、少しずつ関係を改善していければと思っていた。
NTRビデオレターでその気持ちがリセットされるまではー。
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「ましろ!」
「義隆先輩!」
お土産ショップの外のベンチに座っていたよしのの姿のましろを見つけ、立ち上がる彼女に駆け寄ると、俺は今買ったばかりのプレゼントの入った紙袋を差し出した。
「ましろ、俺からの誕生日プレゼント、受け取ってくれ」
「…………」
ましろはそんな俺を泣きそうな顔でしばらく見つめていたが、やがて意を決したような表情で、俺に告げた。
「義隆先輩。すっごく嬉しいんだけど、そのプレゼントを受け取るの、私が義隆先輩にずっと言いたかった事を伝えてからでもいいかな?」
「あ、ああ……。構わないけど……」
ペンギンのお散歩イベントの時に言いかけた事だろうか?
取り敢えず、それぞれベンチに並んで腰を下ろして話を聞く流れになった。
「義隆先輩、私、どうしても言いたい事があったの……。…………。」
「ましろ?」
膝の上に固く手を組んで、なかなか次の言葉が続かない様子の彼女を待っていると、やがてポツリポツリと話し始めた……。
「よ、義隆先輩と付き合ってる間……、最初は想いが叶ってすごく嬉しかったんだけど、その内よしのさんとの仲の良さに嫉妬するようになっちゃって……。
義隆先輩はいつも優しくしてくれたのに、怒っていっぱいワガママとか言っちゃって……、ご、ごめんなさいっ。」
「ましろっ…。いや、それに関しては、俺も至らず、ましろの気持ちを汲んでやれないところがたくさんあって、悪かったんだよ。ましろが謝る必要は……」
ましろのまさかの謝罪に驚いて俺がそう言いかけると、彼女はブンブンと首を振った。
「ううんっ。私、本当にダメだったの! 前、水族館デートに来た時も、ペンギンのお散歩イベント見られなかった事をずっと責めるばっかりで!
本当は、それでも、初めてのデート、ドキドキして楽しかったし、最後にペンギンのペンケースプレゼントしてくれたのも嬉しかった!
また、デート誘って欲しいと思って、電話したんだけど、うまく言えなくて、文句言ってるばっかりになっちゃった……」
「え! デートの後、延々ダメ出しの電話して来たのって、次のデートを誘って欲しいって事だったのか?」
捲し立てるように自分の気持ちを吐露するましろに、今初めて真実を知り、俺は愕然とした。
あれにより、次のデートは完璧にしなければと思うあまり、逆に誘いづらくなってしまっていたんだが、ましろの気持ちとは逆の方向へ行ってしまったわけか……!
「う、うん。そう、それから、そのっ……。すぅっ…。」
ましろは大きく息を吸うと……。
「NTRビデオレターを送ってしまって、ごめんなさいっっ!!」
「!!」
目の前で、深く頭を下げて来るましろに俺は目を見開いた。
「義隆先輩が大好きで、ただ関心を持ってもらいたかっただけなのに、私、方法を間違えちゃった。
私の体のよしのさんにW寝取られしたかと思った時、自分がどんなひどい事をしたのか思い知ったわ。
義隆先輩と関係も、今までの思い出も全部メチャメチャに壊すような事をしてしまって、本当にごめんなさいっ!」
「ましろ……!」
「よしのさんの体で謝ったら、義隆先輩は絆されて許すしかないかもしれない。卑怯だと思うけど、入れ替わりが解消されたら、義隆先輩は裏切った元カノなんかにはもう関わりたくないでしょ?
だから、い、今の内にちゃんと謝って置きたかったのっ。ぐすっ。」
ボロボロ涙を流して謝って来るましろに、俺は胸が張り裂けそうに痛む。
裏切られ、顔も見たくないと思った元カノだったが、今は憎しみの気持ちは消え失せていた。
「NTRビデオレターの件は、流石にショックだったが、俺も訊問会で断罪したんだし、お互い様だろ?
お前の謝罪を受け入れるから、もうこれ以上気に病まなくていいよ」
「よ、義隆先輩っ、ずっ…。あ、あり…がとうっ!」
泣きながら笑顔を見せるましろに、俺も告げなければならない事があった。
「だけど、入れ替わりが解消した後、このままの関係でいる事は出来ない。
もう怒っているわけではないが、付き合っていた頃の気持ちは、一度リセットされてしまった。
今、よしのの姿のお前に感じている気持ちは、恋愛とは別のものなんだよ」
「ん……。分かってる」
ましろは苦いものを覚悟して飲み込むように目を閉じた。
「だから……。友達として、一から関係を築き直せないか?」
「へっ?!」
目をパチクリさせるましろに、俺は慌てて付け足す。
「いや、ましろが嫌だったら無理は言わないが……。生徒会メンバーとも打ち解けているし、よしのとも何だかんだ、仲がいいし、俺もその……」
躊躇った末、頬をポリポリ掻きながら、ボソボソと告げる。
「お前と話しているの、楽しくなくはないし……。急に関係を断ってしまうのはちと寂しいかと思ってな……。」
「!!///」
ましろは、ぱあっと顔を輝かせた。
「よ、義隆先輩が寂しがるなら、仕方ないわねっ。ビデオレターを送り付けた元カノと訊問会で断罪した元カレという関係だけど、入れ替わり解消後も友達やってあげるわよ」
「おう。なんか、急に偉そうになったけど、よろしく頼む」
「ええ。こちらこそ、よろしく!」
俺が差し出した手を、ましろは握り……。
「ふえ〜ん! もう、これで義隆先輩とはお別れだと思ってたぁっ。ぐずっ…。よかったぁぁっ…」
「ましろっ……」
また、ポトポトと涙を流すましろの姿を俺は目に焼き付けた。
ロングの綺麗な青い髪に大きな青い瞳。口は悪いがいつも一生懸命な彼女は、よしのの外見でありながら俺の元カノであり、新たな友達であり、とても好ましく思っている女の子だった……。




