クリスマスデート♡③ 〜よしのとの思い出の場所〜
「ふふっ。外で手を繋ぐなんて久しぶりですね? 小学生以来でしょうか?家族でここに来た時もお兄様と手を繋いで回りました。覚えてますか?」
「そうだな、よしの。覚えてるよ。どこか行きたいところはあるか?」
ルンルンしているよしのを前に俺は穏やかな笑みを浮かべて聞くと……。
「はいっ、お兄様。『動物ふれ合いコーナー』に行きたいです!」
よしのは満面の笑みでそう答えたのだった……。
✽
ふれ合いコーナーの小動物スペースで、よしのは真っ白な毛並みのうさぎを撫でて、感動に震えていた。
「ふわあぁ! しっとりフワフワ〜♡ 首輪にミルクちゃんって書いてある。可愛いお名前ですね。お兄様、触らないんですか?」
「お、おう……。じゃ、じゃあ、ちょっとだけ……。お、おおっ!」
俺が恐る恐るその背を撫でると、その毛は驚くほど柔らかかった。
「お兄様、そんなおっかなびっくり触らなくても! ふふふっ。おかしい!」
「いや、だって、小さい生き物って、そっと触らないと、壊してしまいそうで怖いじゃないか!」
笑われ、俺が赤くなっていると、よしのは感慨深そうに目を細めた。
「ええ。お兄様は、本当に優しい。優しい人なんですよね……」
「よしの……?」
少し切なげでもあるようなよしのの表情に胸がシクリと痛んでいると、彼女はすぐに無邪気な笑顔に戻った。
「何でもありません。あっ。あそこの自販機で動物さんのエサが買えるみたいですよ?うさぎさんにニンジンあげてみたいな…!」
「あ、ああ。俺、買ってくるよ。」
それから、動物達にエサやりを20分程楽しんだ後、よしのと俺は動物ふれ合いコーナーを後にした。
「今日は、うさぎさんともっと一緒にいたいって泣かないんだな?」
「……! ///お兄様、いつの話をしているんですか! もう、私は大人ですよ? あの頃とは違うんですよ?」
以前、家族で動物園に来た時は、閉園時間になっても帰りたくないとゴネていた事を引き合いに出して、からかうように言ってやると、よしのは赤くなってプリプリ怒っていた。
「でも、お兄様の事が大好きと言うのは、ずっと同じですけどねっ。エイッ!」
「! よし……」
いきなり腕を取られ、恋人のように寄り添うよしのに驚いて声を上げると、彼女は恥ずかしそうに目を伏せて震えていた。
「し、しばらくこのままでいてください……///」
「お、おう……///」
くっ。どうして、ここで胸が高鳴ってしまうんだ。
入れ替わり以前は、手を繋いでも、頭を撫でてもよしのに対してこんな風に思うことはなかったのに……!
揺れるツインテールも、こちらを縋るように見る大きな目も、触れ合ったところから感じる温もりもたまらなく愛おしいと思ってしまう。
ましろの姿のよしのの側にいると、心も体もおかしくなって、流されてしまいそうになる。
彼女は実の妹だ。もうすぐ、彼女は元の体に戻る。そうしたら、こんな不埒な想いもきっと消えてなくなる。
だから、今のこの想いはよしのには決して気取られてはいけない。
俺は、咳払いをするとよしのに呼びかけた。
「よしの。お誕生日のお祝いに、何か記念になるものを買ってやりたいんだけど、お土産コーナーに行かないか?」
「……! ✧✧ 嬉しい! お兄様、いいんですか?」
「ああ、もちろん。俺がよしのにそうしてやりたいんだ。」
目を輝かせるよしのに俺は笑顔で頷いた。
気持ちをあげられない妹に、俺は出来る限りいい思い出をプレゼントしようと決めたのだった。
✽
「えーと、じゃ、じゃあ……。皆で一緒に食べられますし、このうさぎさんのプリントクッキーを……」
「いやいや、それじゃ、普通に家族へのお土産だろう?それはそれとして買うけれども、よしのが欲しいものを選んでくれよ」
「ううっ。でも、ただでさえ私とましろさんのDNA検査でお金がかかっているのに、高いものは……」
お土産ショップに入ったものの、遠慮して、なかなか高価なものを頼もうとしないよしのに俺は苦笑いで手を振った。
「いや、それは気にしないでくれよ。俺は、普段そんなに金を遣う方じゃないし、こういう時位しか使い道がないんだよ。ホラ、こういうアクセサリーとかでもいいし……」
「……!///」
と、俺はアクセサリーコーナーにある商品を指差して、よしのが目を見開いた時、はたと気付いた。
今の俺がよしのにアクセサリーを贈る意味について……。
確か、男性から女性にアクセサリーを贈るのは、「束縛」という意味があったような……。
入れ替わりによって、対外的に恋人同士を演じているだけの兄が妹にアクセサリーを贈るのはおかしいよな?
それは兄ではなく、いつか現れるよしののパートナーになるべき男性の役割だ。
よしのが他の男性と仲良くアクセサリーを選ぶ姿を想像してしまい、胸がズキズキと痛む中、俺は無理に笑顔を作って謝った。
「いや、ごめん。他のものの方がいいな?えーと、よしのは雑貨とか好きだったよな?」
早口でそう言い、隣のコーナーへ移動しようとすると……。
ギュッ!
「よしの?」
服の裾を掴まれて俺が戸惑っていると、よしのはいたずらっぽく微笑んだ。
「いーえ! お兄様が嫌じゃないなら、私は、お兄様にアクセサリーを買ってもらいたいです! 」
「えっ」
「ホラッ。このうさぎのモチーフのネックレスとか、どうです?似合いませんか?」
「!」
よしのが手に取ったネックレスは、青いラピスラズリと、うさぎのモチーフの入った可愛らしいデザインのものだった。
やはり少し気を遣っているのか、値段は手頃なものだったが、それはよしのの雰囲気にとてもよく合っているように感じられた。
「ああ……。よしのに似合いそうだと思うよ」
正直にそう言ってしまうと、よしのは、喜んで飛び跳ねた。
「よかった! ✧✧ では、恋人として初めての誕生日プレゼント、これをお願いします! 」
「ああ。分かったよ……。」
入れ替わりが解消されたら、兄妹に戻る俺達にとって、恋人としてのプレゼントはこれで最初で最後になるとよしのも分かっていたと思うが、彼女は敢えて最後とは言わなかった。
俺も彼女の気持ちを汲んで敢えて口には出さなかった。
✽
「よしの?」
商品を買い終えて、ショップの外で待っている筈のよしのを探してキョロキョロしていると……。
「お兄様〜!」
カップに入った飲み物を持ってよしのがこちらに走って来た。
「お兄様、プレゼント、買って下さってありがとうございます! これ、せめてものお礼です」
「おう、よしのありがとう!」
カップに入った温かいコーヒーを差し出され、受け取ると、彼女はにぱっと可愛らしい笑顔を浮かべ、近くのベンチを手で指し示した。
「ましろさんを迎えに行く時間まで、もうあと20分程ですし、時間になるまでそこでお話でもしませんか?」
「お、おうっ。いいよ……?」
よしのと二人きりの最後の20分程ー。
俺はある種の覚悟を決めてよしのと並んでベンチに腰を下ろしたのだった……。
*あとがき*
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