一瞬の入れ替わり解消の謎
クリスマス交流会の打ち上げの途中からよしのも、ましろも何かを考え込んでいるような表情で、無口だった。
よしのや生徒会メンバーと別れて、家へ帰ってから、興奮した両親に労を労われた後、それぞれの部屋に戻る時、ましろは取り繕ったような笑顔を俺に向けた。
「義隆先輩、じゃ、じゃあね?今日は本当に司会お疲れ様。」
「ああ。ありがとう。お前もマジックショーお疲れ。今日はゆっくり休めよ?」
「あ、ありがとう……。そうさせてもらうわ。」
ましろはその言葉通り、早めに休んだのか、隣の部屋から今日はペンペンとの語らいが漏れて来ることもなく、しんとしていた。
今日は耳栓の出番もなくて、何だか調子が狂うな。
イベント後で疲れてもいるし、俺も早めに寝るかとベッドに移動しようとした時だった……。
ガタガターン!!
ガツン!
「いったぁぁ!!」
?!!
けたたましい音と共に、ましろの叫び声が聞こえ、俺は慌てて隣の部屋に駆け込んだ。
「ましろ、入るぞ!」
ガチャッ!
「うん……。」
!!
ドアを開けると、よしのの姿の彼女は、ベッドの近くのフローリングの床に倒れて呻いていた。
「凄い音したけど大丈夫か?ましろっ!?」
「?!」
近付いて、声を掛けると、彼女は俺を見て、大きな目をパチパチと瞬かせた。
「あ…。ご、ごめんなさい……。私どうしたんでしたっけ?
悩んでいる自分に喝を入れようとしたら、転んで頭を打ってしまって……」
ぼんやりした表情で身を起こした彼女のおでこは腫れていて、痛々しくて、俺は顔を顰めた。
「本当だ。コブになってるな。さっきも何か悩んでいたようだし……。待ってろ。今、冷やすもの持って来てやる。あと、悩んでいるなら話聞いてやるから、ココアでも淹れてやろうか?」
「えっ。そんな。お兄様にそんな事して頂くなんて悪いですよ。寧ろ私がミルクセーキでも淹れましょうか?」
「「??…………」」
ましろが自ら飲み物を淹れようと申し出るだとっ??しかも、ミルクセーキって。
あと、さっきから口調が丁寧だし……。
何だか会話が噛み合わず、強烈な違和感を感じて、俺と彼女はしばし目を瞬かた。
「お前……、もしかして、よしの……か?」
「!!」
俺のその言葉に、彼女はハッとして自分の姿を見下ろして何かを確認すると、ハッと息を飲み……。それから、部屋の周りをキョロキョロし出した。
「元に戻ったのか…?」
その様子に俺の疑問がほぼ確信に変わり、俺が愕然と呟くと、彼女は震えながら、頷き……。
パタッ!!
「よしのっっ!!」
突然意識を失い、その場に再び倒れた彼女を慌てて抱き起こした。
「う……んっ…。」
「よしのっ!よしの、どうしたっ!?」
「…!!」
彼女が目を開けると俺の姿を見て驚いた表情になった。
「よ、義隆先輩っ……!ま、また戻っ……?!||||」
!!
歯の根も合わない程、震えている彼女の途切れ途切れの言葉から俺は状況を読み取れたような気がした。
「…!!ましろ??もしかして、また入れ替わった?」
彼女はコクコクッと頷き、俺は目を見開いた。
「一体、どうなっているんだ……!?」
チャララ〜チャララ〜チャララララー♪
「「!!」」
机の上のスマホから着信音が鳴り、ましろが慌てて取りに行くと、画面を確認して、直ぐに俺を振り替えった。
「義隆先輩、よしのさんからみたい……」
「…! 出てくれ!」
「う、うん。スピーカーONにするね?」
ましろが緊張気味に電話に出ると、電話口から(声自体はましろのだが)よしのがましろに問いかけてくる声が響いた。
『よ、よしのです!ましろさん、今一瞬元の姿に戻りましたよね?』
「え、ええ……。そうね。一体何が起こったのかしら?」
『分からないですけど……。明日お話しようと思っていたのですが、皆に一つ嘘を付いている事があって……。そのせいだとしたら、ほ、本当にごめんなさいっ……。お兄様にも嫌われてしまうかもしれないけど、本当は100%だったのに、わ、私っ…。』
「ええ?どういう事?あっ…。義隆先輩!」
「貸してくれ」
要領を得ない言葉に首を傾げているましろから受話器をもらうと、俺はよしのに呼びかけた。
「よしの、落ち着け。何だか分からないが自分を責めなくていい。何を隠してようと、俺がお前を嫌いになる事はないから安心しろ!」
『お兄様ぁっ……!』
よしのは涙声になっている。
「一瞬でも入れ替わりが解消されたんだから、それを元に完全に元に戻る道が見つかるかもしれないじゃないか。
今夜はもう遅いから、それぞれの家でこの後入れ替わりが起こらないか様子を見よう。
何もなければ、この件は明日学校で生徒会メンバーに相談するから、何か言いたい事があるなら、その時までに考えをまとめておいてくれ。」
『お兄様……、分かりました。すみません。気持ちを落ち着けて、明日お話します……。』
「ましろも自分の状況について考えられる事をまとめておいてくれな。」
「わ、分かったわ。よしのさんも、その時、きっちり話を聞かせてもらうわよ。」
『はい。もちろんです。ましろさん……。』
そして、よしのとの電話を切ると、俺は、しばらく動揺しているましろを宥めてから、自室に戻った。
その後、再び入れ替わり(解消)が発生する様子はなかったが、まんじりともしない夜を過ごした。
ましろもよしのも同じだっただろう……。
*あとがき*
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