おまけ話 入れ替わり 原因と結果《黒崎直也視点》
黒崎直也自宅リビングにてー。
『ジャーン!なんと、ステッキがお花になっちゃいましたぁ!』
『ホラッ!手を離しても、コップからお水が溢れないんですよ!』
「うんうん、鷹宮さんも虎田さんも二人共、自然な感じで出来るようになって来ましたね〜」
クリスマス交流会で披露する予定のマジックの練習の様子を撮った動画をスマホからテレビに映し、確認していた生徒会副会長、黒崎直也。
「大掛かりなマジックの方は、まだまだ練習が必要ですが、良くなっていますし、後はもう一つぐらい、このメンバーならではの出し物があってもよいような気がするのですが……」
直也が顎に手をかけて考えていると……。
「ただいま。おっ?直也はまたマジックで遊んでいるのか?」
「父さん…!」
直也の父であり、総合病院の院長でもある、黒崎俊也の珍しく早い帰宅に、直也は意外そうな声を上げた。
「遊びもいいけどな?勉強もきちんとしないと……」
「はいはい。成績は学年一位をキープしていますから。成績を落とさなければ、好きな事をしていい約束でしょう?」
「まぁ、そうだが……」
俊也から漏れかかる小言を間髪入れず、封じる直也。
医者の家系ではあったが、総合病院は兄が継ぐことになっている為、次男の直也にはある程度の成績さえ収めていればある程度の自由が許されていた。
(ちなみに母は看護士で、まだ就業中。)
「それよりも、父さん、お疲れのようですね。雪絵さん(お手伝いの年配の女性)が夕飯を作り置いてくれてますが、温めましょうか?」
「ああ…。すまないな。」
自身に居心地のよい環境を作るため、にっこりと笑顔で親の機嫌を取る事を忘れない直也に、俊也も相好を崩した。
✽
「今日は、確か会議だった筈では?」
「ああ……。今日は医療安全会議だったんだが、業務ミスの件数が去年よりも増えていて、頭が痛くなってしまってな、後は改善案を家で纏めようと思って仕事を持ち帰って来たんだよ……。」
「なるほど、ミスを防止する体制を整えるのは大事ですね。薬剤や量を間違えたりなんてすると、患者の生命に関わりますもんね。」
「ああ。うちの病院ではないが、名前が似ている二人の患者に、投与する薬剤が危うく入れ替わりそうになった事もあったらしい。本当に気を付けなければならないよ。」
「名前が似ている為に、二人の患者の薬剤が入れ替わりそうに……。それは、危なかった…ですね……」
俊也の言葉に、直也は難しい顔になった。
(鷹宮さんと虎田さんの入れ替わりは確かに不思議な現象だけど、全く偶然に起こったものなんだろうか?
何かしらの原因、因果関係があっての結果と考えた方が、僕的にはしっくり来るんだよなぁ……。
聞けば、虎田さんと鷹宮さんは、同じ誕生日で、母親同士がママ友だったとか。
二人が生まれた状況までは分からないけど、ただの偶然で片付けてしまうには、共通点が多過ぎる……。)
直也は、疑問に思っていた事を俊也に聞いてみる事にした。
「父さん。入れ替わりと言えば、産院で子供が取り違えられたなんて話を聞いたことがありますが、実際結構あり得る事なんですか?」
「ああ。ベビーラッシュの世代にかなり多い件数が発生していたようだが、今は取り違えが起こらないように、新生児に母子標識をつける事になっているから、まずあり得ないだろうな」
「そうですか…」
直也は、その答えにホッとしたが、俊也は更に付け足した。
「まぁ、人のする事だから全くのゼロとは言えないだろうがな……」
「………。ハハッ。そりゃ、そうですよね?」
直也はそう言って笑顔を浮かべたものの、一抹の懸念が拭い切れないでいた。
(まぁ、まずないとは思うけれど……。確か、会長は以前、DNA検査を検討していたよな……?一応、確認してみるか)




