羽ばたく気持ち《虎田ましろ視点》
生徒会の初仕事である、クリスマス交流会を頑張ろうと張り切っていた矢先に、風邪を引いて学校を休む事になってしまい、しょんぼりしていた私だけれど……。
義隆先輩も体調が悪いからと一緒に学校を休む事になり、卵粥を作ってくれ、あ〜んで食べさせてくれたりと、世話を焼いてくれた。
(元気そうに見えたけど、本当に体調が悪いのかしら?)
いつもより優しい義隆先輩に、私がいつも思って言えない事「私に、よしのさんを重ねて優しくしてくれるだけ」だと漏らしてしまうと……。
義隆先輩は、今の私はよしのさんでもなく、NTRビデオレターを送り付けた元カノでもなく「ツンデレな性格のよしのさんの双子の妹」みたいだと思いがけない事を言われてしまった。
私をよしのさんとは別人と認識していて、嫌わないでいてくれるのは嬉しいけど、私も妹みたいって言われて、どう受け止めればいいのかと、私は複雑だった。
でも……。
「まぁ、お前はビデオレターを送り付けて来る最悪の元カノだったけど、素直な時もあるし、意外と頑張り屋だし、妹としては悪くないって話だ。だから、無理に優しくしてるわけじゃない。桃缶あ〜んもしてやるから、今はゆっくり休め」
義隆先輩に、優しい言葉をかけられると、胸がいっぱいになっちゃって、私は小さく頷く事しか出来なかった。
その後はずっと彼に甘えるままになってしまった。
体調が悪い時に、好きな人に側にいてもらえるのってこんなにホッとするものなんだなぁ……。
以前、義隆くんがデートをキャンセルして体調を崩したよしのさんの看病をした事に散々文句を言ったけれど、悪い事したかなぁ……。
熱でボーっとする頭でそんな事を考えながら、私はいつの間にか眠ってしまい、次に目覚めたのは、夕方頃だった。
大分体が楽になった私に、義隆先輩は、生徒会メンバーからスマホに届いた動画つきメッセージを私に見せてくれた。
『うわぁん!天使なましろちゃんがいなくて、今日は寂しかったよぉ!
体調は大丈夫?元気になったら、お弁当交換こしたり、恋バナしたりしようね?ぶえ〜ん!』
「渥美先輩(妹)……。」
私の為に泣きじゃくる渥美先輩に、胸が温まるような気持ちになっていると、スマホの画面では、双子の兄の方の渥美先輩が、海の肩をポンポンと叩いた。
『海、泣き過ぎ!鷹宮くんがいるから心配ないとは思うけど、虎田さん今は無理しないでゆっくり休んでね?
風邪が早く治るよう今、学校の皆に協力してもらって千羽鶴折ってもらったんだ。これ、僕が折った996羽目!』
『私が折った997羽目!』
画面の中の渥美先輩(兄)(妹)はそう言い、手に取った折り鶴を顔の前に翳したので、私は目を剥いた。
「いや、千羽鶴って、どんだけの重病人だと思ってるのよ! しかも、もうほぼ集まってる?!」
「ハハッ。あいつら、影響力あるからな。ほぼ全校生徒(約1000人)に折らせているんじゃないか?」
「全校生徒?!恥ずかしくて、治っても登校しにくいじゃないっ!///」
義隆先輩の言葉に驚き、私が喚いていると、渥美先輩達が画面から消え、代わりにやはり折り鶴を手にした怜悧な瞳の男子生徒が現れた。
『これ、僕が折った998羽目です。虎田さん、大丈夫ですか?入れ替わりで色々気疲れもあったでしょうから、こういう時ぐらいゆっくり休んで下さいね?』
「腹黒参謀……」
副部長の黒崎直也に、優しい言葉をかけられるも、私は複雑な表情になった。
入れ替わり解消に向けて色々力になってくれてるけど、彼に審問会で死ぬ程追い詰められた事は忘れてない。
つい、言葉の裏に何かあるのではないかと疑ってしまう私だったけど、画面の中の彼は柔和な笑みを浮かべていた。
『クリスマス交流会まではまだ日にちがありますから、焦らないで大丈夫ですよ?今日、鷹宮さんと話し合ったんですけどね?今のところ、三人で出来るマジックなんかどうか、どうかって言ってたんですよ。』
「え。マジック?」
黒崎直也の言葉に、私は目を見開いた。
羽ばたく気持ち《虎田ましろ視点》
実は、私が考えた出し物の案の一つにマジックがあり、図書室で本まで借りて来ていたのだった。
『実は僕、幽霊部員ながら、マジック研究会にも入っていて、部長に言えば、衣装とか、結構大掛かりな仕掛けの道具とか、借りて来られそうなんですよね。』
「そうそう。文化祭でマジック研究会に寄らせてもらったけど、黒埼、かなり本格的なマジック見せてくれて、凄かったぞ?」
「ふ、ふ〜ん。そ?」
義隆先輩は、黒埼直也の言葉を補足説明してくれて、私は気のないような返事をしながらも、内心とても興味を引かれていた。
『まぁ、まだ、本決まりじゃないんで、他にやりたい事あったら、言って下さいね。じゃっ。』
そう言うと、黒崎直也は画面から消え、次に折り鶴を持った笑顔の私が画面に現れた。
『これ、私が折った999羽目ですぅ。ましろさん、体調大丈夫ですか?
負けヒロイン復活戦は一時休戦としますので、ゆっくり休んで下さいねっ?』
いや、だからそんな戦いには参加してないって言ってるのに、全くよしのさんは……!
「負けヒロイン復活戦……??」
「な、何でもないの!よしのさんが勝手に言ってるだけ!」
不思議そうに首を傾げている、義隆先輩に私は慌てて誤魔化した。
『私が体調悪い時には、お兄様とましろさんの時間を減らしてしまって、申し訳なく思っていたので、今回はそれを取り返す位お兄様に甘えて下さいね?』
「よしのさん……。」
「よしの……。」
『元気になったら、一緒にクリスマス交流会の準備頑張りましょうね? イベントが終わった後のご褒美も楽しみですし!』
「ご褒美?」
ニンマリ笑顔のよしのさんの発言に私が怪訝な顔をすると、義隆先輩が、ゴホッと咳払いをした。
「い、いや、よしのから頼まれたんだ。クリスマスイブの日中の時間を分けて、ましろとも過ごす時間を作ったらどうかって……。ホラ、その日、ましろも誕生日なんだろ?」
「!!義隆くん達、知ってたんだ……!《《も》》って事はよしのさんも、もしかして、同じ誕生日っっ!?」
気まずそうに伝えて来る義隆先輩に私は驚き過ぎて大声を上げてしまった。
「あ、ああ。俺だけでも二人の誕生日をお祝いする時間を作れたらと思って。もちろん、ましろが嫌だったら断ってくれて構わないんだが……」
「!!い、嫌じゃないっ!!」
私はぶんぶんと大きく首を振った。
「わ、私、クリスマス交流会の準備頑張るっ。だから、ご褒美に私の誕生日祝って欲しい!」
「そ、そうか……。//分かった。それじゃ、その前に早く風邪を治さなくちゃな?これ、俺が折った1000羽目だ!」
『『『『ましろさん(ちゃん)(虎田さん)、早く元気になって(下さい)ね?
』』』』
「!!//」
義隆先輩に小さな折り鶴を差し出され、
スマホの画面には、生徒会メンバー全員が顔を映り、最後のメッセージを伝えてくれる中、私の気持ちは鳥のように大きく羽ばたいたのだった……。
✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽
入れ替わり満足度 (ましろの場合)
80%
・風邪を引いてしまったけれど、義隆先輩が(多分)仮病を使ってまで看病してくれた。お粥や桃缶をあ〜んしてくれて、寝るまで側についててくれて、とても嬉しかったし、安心した。
義隆先輩に望む事
→クリスマス交流会のイベントを成功させるのは引き続き目標だけれど、他の生徒会メンバーとも協力してやり遂げた喜びを義隆先輩とも分かち合いたい。
ご褒美にクリスマスにデートをして義隆先輩に誕生日を祝ってもらえるって聞いて、ますますヤル気が湧いてきた。
それにしても、よしのさんも私と誕生日だなんて、驚いた。私にもクリスマスデートするように提案するなんて、敵に塩を送るような事をして、よしのさんは何を考えているんだろう?風邪が治ったら、彼女の真意を探ってみよう。




