泣かせる手作りお菓子
ましろがよしのにお菓子作りを教わる約束をしていた日曜日。
家のリビングにてー。「ましろちゃん、こっちに着いてるわよ〜?。ええ。こちらこそ、よろしくね〜。遥香ちゃん家のお菓子のレシピ教えてくれるんですって?有難いわ〜。」
母さんが、リビングの奥で、ましろの母親に電話で連絡を取る中、よしのとましろはエプロンと柄入りのバンダナを身に着け、お菓子作りの準備をしていた。
「(お兄様、変じゃないですか?)」
「(義隆先輩、どうかしら?)」
小声でこちらに伺ってくるよしのとましろは、この間俺がプレゼントしたそれそれうさぎ刺繍入り、ペンギン刺繍入りのエプロンを早速身に着けてくれていて、嬉しく思った俺は親指を立てた。
「ああ。よしのもましろも、そのエプロン、とても似合ってるぞ!」
「「よかった〜!」」
それを聞いて、よしのとましろも笑顔になり、互いに向き合った。
「(じゃあ、よしのさん、今日はお菓子作り教えて下さい。)」
「(了解です!今日はましろさんのお母様のレシピも含め、いっぱいお菓子作りましょうね?)」
ほほう…?
互いに拳を握り合う二人は、共通の目的の為に協力体制にあり、普通に仲のよい友達同士に見えた。
二人だけでお菓子作りをすると聞いた時には、喧嘩をしやないかと心配したものだったが、杞憂だったか?
「今日は、沢山作るので材料は大体測って来ましたよ?後は、お菓子作りの道具を出して行きましょうね?ボールに泡だて器、木杓子、あれ?」
キッチンの収納からテキパキと道具を取り出していくよしのだったが、突然不思議そうな声を上げた。
「あのぅ……。お兄様、包丁が見当たらないのですがどこへ……?」
「ああ。ましろが逆上した時危ないかと思って、今、刃物類は別の場所に置いている。」
「人をなんだと思っているのよ!」
俺が答えると、ましろに目を吊り上げて怒られてしまった。
「ア、アハハ……。アイスボックスクッキーを作るのに、使おうと思っていたのですが、こっちで代用しましょうかね。」
よしのは、子供用の包丁(※手が切れない)を取り出して、苦笑いした。
「それじゃあ、お兄様?お菓子が出来たらお呼びしますので、向こうでしばらくお待ちくださいねっ?」
「お、おおっ。分かった。よしの、危害を加えられないまでも、基本、コンロや電気器具の操作はましろにさせないようにした方がよいぞ?火災や爆発事故が起こりそうな場合は、すぐに俺を呼んでくれ!」
キッチンから追いやられながら、まだ心配な俺はよしのにそう言い置くと、彼女は笑顔で頷いた。
「ふふっ。分かりましたけど、多分大丈夫ですよ?」
「全く、どんな状況を想定しているのかしらっ!失礼ねっ。
ふふんっ。義隆先輩、後でお菓子のあまりの美味しさに感動の涙を流す事になると思うけど、覚悟しといてねっ。」
「ましろ、お前教えてもらう立場で、よくそこまで自信持って言えるな……。」
自信満々なましろにちょっと呆れながら、俺はアコーディオンカーテンで仕切られたリビングに移動し、お菓子の仕上がりを待つ事になった。
✽
『それでは、そのボールにひとつまみのお塩をお願いします!』
『分かったわ!✧✧』
ドサドサッ!
『キャーッ!それは、一つまみじゃなくて、一掴みっ!!腎臓病になってしまいますっ!』
『あれ?そうなの?加減が難しいわねぇ……。』
『で、では、カップケーキ用の卵を割って下さい。』
『分かったわ!』
グシャッ!!パラパラッ!
『ああぁっ……!!殻が全入りにぃっっ……。』
『カルシウム取れそうね?健康にはいいんじゃないかしら?』
「ほ、本当に大丈夫なんだろうか……?」
お菓子作りの過程で頻繁に漏れ聞こえてくるよしのの悲鳴(声はましろ)に、俺がハラハラしていると、ましろの母親との電話を終え、共にリビングで待機していた母さんがクスクス笑っていた。
「まぁ、楽しくやってるみたいだから、いいじゃない。可愛い彼女と可愛い妹の作ってくれるお菓子なんだから、多少しょっぱかろうと、卵の殻が入っていようと美味しいって言ってあげなさいな?」
「ま、まぁ、二人が仲良くやってさえくれるなら、多少の我慢はするけどさ……」
「反抗期のよしのも楽しそうだし、本当にましろちゃんが義隆の彼女でいてくれてよかったわ〜。家族ぐるみで仲良くしてくれる彼女なんて、なかなかいないわよ〜?義隆、彼女の事、大事にしなさいね?」
「母さん……」
俺はニコニコ顔の母さんになんと言っていいか分からなかった。
本当の事なんて、とても言えない。
母さんが、気に入っている彼氏の家族とも仲良くできる素敵な彼女の中身はよしのなんだ。
本当のましろは、俺にNTRビデオレターを送り付けて来て、別れた元カノで、今は妹のよしのとしてやむを得ず一緒に暮らしているが、入れ替わりが解消したら、彼女とは……。
そこまで考えて胸が痛み、母さんにも申し訳ない気持ちになった。
✽
数時間後ー。
シャッ!
キッチンとリビングを遮るアコーディオンカーテンが開かれ……。
「全部、完成したわぁっ!!」
「ふうっ。何とか出来ました〜。」
喜びのお雄叫びを上げるましろとヘロヘロになったよしのが、お菓子のお皿を運びに来た。
「わぁっ。美味しそうね〜!」
「おおっ。こんなに、凄いなっ…!」
リビングテーブルに並べられたクッキー、アップルパイ、カップケーキ、プリンなど、リビングテーブルに並べられたお菓子を見渡し、母さんと俺は歓声を上げた。
「お、お兄様っ!クッキーは特に頑張ったんですよ。食べて下さいっ!」
「お、おうっ。そうか、よしの……。」
外見からは、どれも美味しそうなお菓子にしか見えないが、味はどうだろうか?
ましろに、クッキーの皿を差し出され、ちょっと不安を覚えながら、隣のよしのを見ると……。
「(お兄様、大丈夫ですよ〜?)」
よしのは口パクでそう言い、手でオッケーサインを出してくれた。
「じゃ、じゃあ、頂くよ。」
少しホッとしてよしのに頷くと、俺は1枚を手に取り、口に放り込んだ。
「もぐもぐ……。んん!」
途端に、バターの風味が濃厚な、甘くてサクサクのクッキーの味が口の中いっぱいに広がった。
「うん!すっごく美味しいぞ?作ってくれてありがとうな?」
思いがけない美味しさに、さっきのましろの言葉ではないが、本当に泣かんばかりに感動して、ましろに親指を立てて、礼を言うと……。
「…!!//// よ、よかったぁっ……!ふぇ〜んっ!わあぁ〜んっ!」
「え、まし、よしのっ…?おい、どうした?」
いや、お前が泣くのかよっ?!
俺はその場に崩れ落ちて、大泣きするましろを前に、どうしたらよいか分からず戸惑うばかりだった。
✽あとがき✽
読んで下さり、ありがとうございます!
この話で、カクヨムサイトの投稿に追いついてしまいまして、今後は毎日投稿ではなく、水、木、金の週三投稿にさせて頂きたいと思います。
次話の投稿は、3/12(水)12:00になります。
ご迷惑をおかけしますが、よければ今後ともどうかよろしくお願いしますm(_ _)m




