新しく芽生える気持ち《虎田ましろ視点》
下着を買う時には色々ショックな事もあったけれど、いっぱい試着して、(よしのさんのと色違いではあるけれど)義隆先輩に凄く可愛いと言ってもらえたワンピースを買って、最終的には納得のいく買い物が出来た。
それだけでも満足だったけれど、ママ達の買い物をしている間の時間、義隆先輩が家事をする私とよしのさんの為にエプロンをプレゼントしてくれると言った時には驚いた。
オプションで私の好きなペンギンの刺繍を入れてくれようとしていて、義隆先輩が大好きな妹、よしのさんのついでじゃなくって、私の事も考えてくれているのが分かって胸の奥が温かくなった。
義隆先輩に、刺繍が仕上がるのを待っている間、どうするか聞かれた時、よしのさんに、こそっと耳打ちされた。
「(ましろさん、この時間に私達もお兄様に何かプレゼントしませんか?)」
……!
目を見開く私に、よしのさんは私が乗り気でないと思ったのか、慌てたように付け足した。
「(あっ。気が進まなかったら、私だけ行って来ますけど……)」
「(べ、別にそんな事ないわよ。分かったわ。私も行くわよ!)」
急いでそう言うと、義隆先輩に他のお店を回らせてもらうようお願いして、よしのさんと共にそそくさとその場を後にした。
それから、よしのさんと雑貨屋や文具店を回っていいものがないか探したのだけど、これがなかなか難しかった。
ハンカチ……は、「縁を切る」事に繋がるし、靴下とかも「相手を踏みつける」意味があってよくないっていうわよね。
義隆先輩の欲しいものはなんだろう?この前は絶対に音の漏れない耳栓を買っていたから、アイマスクとか?
色々考えながら、長年、義隆先輩の側にいて、彼の好むものをよく知っているであろうよしのさんが何を選ぶのかと横目で伺っていると、彼女は、顎に指をかけ、何やらブツブツ呟き、悩んでいる様子だった。
「お兄様の筆記用具、そろそろボロボロになって来てましたよね……。これ、ここで名入れ出来るんですねぇ。ペンがよかったけど、予算が足りないです。シャーペンにしようかしら……」
「しょ、しょうがないわね!それなら、私が義隆先輩にペンの方を買ってあげるわよ!」
「ふえっ?!ましろさんっ??」
間髪入れずに彼女の悩みを瞬間解決するような申し出をすると、よしのさんは驚いて目を瞬かせた。
「そ、それは、シャーペンとペンのセットをプレゼントすれば、お兄様、更に喜ぶと思いますけど……。ましろさんはいいんですか?」
「べ、別に良いわよ。名入れのペンなんて、オリジナル感あっていいと思うし!(他に何も思いつかなかったとか言えない。)」
「それなら、よかった!お兄様の喜ぶ顔が楽しみですね!」
よしのさんは、まるで自分の物を買いに行くように嬉しそうな笑顔になった。
「え、ええ。そうね……。」
よしのさんにつられてする事になった義隆先輩へのプレゼントだけど、いいものが買えそうで、私も気分が高揚していた。
それから、すぐにそれぞれ、よしのさんは青色のシャーペン、私は赤色のペンを選んで注文しに行った。
✽
そして1時間後ー。
エプロンを買ったお店の前で待っていた義隆先輩によしのさんと私は駆けていってた。
「はい! お兄様これ、受け取って下さい。他の人の事ばっかり考えて、自分の事はいつも後回しのあなたにプレゼントです!」
「はい! 義隆先輩、これ、どうぞ。男の子にプレゼントなんてあげるのなんて、あなたが初めてなんだから、有り難く受け取る事ね?」
「へっ。」
早速名入れ仕立てのプレゼントの入った紙袋を差し出しすと、義隆先輩は目を丸くした。
「お兄様の名前入りのシャーペンです。名入れをその場でやってくれるところがありましたので……。お兄様、試験勉強に協力して下さったお礼です。」
「同じく、義隆先輩の名前入りのボールペンよ?ま、まぁ、何かと家ではフォローしてもらってるし、ちょっとお礼的な?」
「……!! ///」
よしのさんと共にちょっと照れ臭い気持ちでそう説明すると、義隆先輩は一瞬虚を突かれたような表情になり、それから頬を紅潮させて、プレゼントを受け取ってくれた。
「よしの、ましろ、ありがとう……! 俺もプレゼントもらえるとは思わなかったよ。」
……!///
その嬉しそうな素の笑顔を見て、私は思わずドキッとした。
一番最初に会った時も義隆先輩はこんな笑顔を浮かべていた事を思い出した。
その後、ペンギンさんの刺繍されたエプロンをもらって、優しい言葉をかけてもらえたのも嬉しかった。
でも、もっと、こんな表情の義隆先輩が見たい! そんな気持ちが私の中に芽生えて……。
ママ達と合流した後の食事会で、私にとって特別なイブの日に二家族合同のクリスマス会をやろうとしたり、よしのさんが強引にデートに持ち込もうとしたり、思うところはあったけれど、強い欲求の前に不満はひとまず飲み込む事にした。
「あの、ましろさんっ!」
「は、はいっ?」
「「「!」」」
突然私ががよしのさんに強い視線を向けて呼びかけると、彼女は当惑したように返事をした。
「あのっ。今度、私にお菓子の作り方を教えてもらえませんか?」
「へっ?!」
「「「?!」」」
私が思い切ってお願いをすると、よしのさんのみならず、義隆先輩、ママ達もどういう事かと首を傾げていた。
もう、何よ、皆! 私、そんなおかしな事を言ったかしら?
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入れ替わり満足度 (ましろの場合)
60%
・義隆先輩に新しい服を着たところを可愛いと褒めてもらえた。(よしのさんもだけど、)義隆先輩とペアルックの服を買えて嬉しい。
・義隆先輩とプレゼントを贈り合えた。ペンギンさんの刺繍の入ったエプロンを貰えて嬉しいし、私が送った名入れのペンを義隆くんは嬉しそうに受け取ってくれて何だかとっても満たされた。
義隆先輩に望む事
→手作りのお菓子を渡して、美味しいと言ってもらいたい。
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入れ替わり満足度 (よしのの場合)
70%
・お兄様に新しい服を着たところを可愛いと褒めてもらえました。しかも、(ましろさんもですけど、)お兄様とペアルックの服を買えて嬉しいです。
・お兄様とプレゼントを贈り合えました。うさぎさんの刺繍の入ったエプロンを貰えて嬉しいですし、私が送った名入れのシャーペンをお兄様は嬉しそうに受け取って下さって、とっても満たされました。
お兄様に望む事
→彼女として手作りのお菓子を渡して美味しいと言って貰いたいです。
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*おまけ話* 二人の特別な日
《鷹宮よしの視点》
「ふう〜。ましろさんと喧嘩もしましたが、お兄様といっぱい過ごせて今日は楽しかったです。入れ替わり満足度も、もう70%になっちゃいましたね……。」
私が入れ替わり満足度ノートを眺めて、感慨深く物思いに耽っていると……。
「ましろちゃん、ちょっといいかしら?」
部屋のドアがノックされ、ましろさんのお母様の声が響きました。
「は、はい。ママ、どうしたの?」
ガチャッ。
すぐに自分をましろさんバージョンにカスタマイズして、ドアを開けるとましろさんのお母様は少し気まずそうな顔をしていました。
「あ、あのね?その、クリスマス会の事なんだけどね?ましろちゃんの大事な日だって事は分かっているのよ?だけど、その、ホラ、色々サプライズ的な事情があるから……。ねっ。分かるでしょ?」
「???」
ましろさんのお母様に、両手をモジョモジョさせながら言い訳のようにそんな事を言い出され、全くワケが分からなくて頭に疑問符がいっぱい浮かんでいると……。
「と、とにかく、忘れているワケじゃないって事よ。それじゃあねっ!」
「あっ、ママ??」
ましろさんのママは言いたい事だけ言うと、ターッと走り去って行ってしまいました。
「一体何だったんでしょう??」
私は首を傾げ、ましろさんのお母様の不可解な言動について考えました。
クリスマス会の日ー。
ましろちゃんの大切な日ー。
サプライズ的な事情ー。
う〜ん、さっぱりです。クリスマス会の日12月24日に何があるんでしょうか?
悩みながら、ふとカレンダーに目を遣り……。
!!
私は衝撃の事実に気が付きました。
クリスマス会の日、12月24日の日付には……。
『私の誕生日✧✧』
と書かれていたのです。
「ましろさんもこの日が誕生日だったんですね……!」
私は呆然と呟き……、更によく見ると、日付の下の方に小さく、『義隆先輩とデート??』と書かれているのに気付き、小さく胸が痛みました……。




