お互いを想い合う贈り物
「毎度ありがとうございました〜!!」
「ふうっ……。」
「「♪」」
商売上手な店員さんの誘導によって、ましろとよしののニットワンピースの他、何故か俺までペアルックのようなセーターを購入する事になり、俺はやれやれとため息をついたが、よしのもましろも気に入った服が買えてご機嫌のようだった。
店を出た後、二人の服が買えた事を母達に電話で報告するも……。
『お洋服買えたなら、よかったわ。ご苦労様!ごめんなさいね?遥香ちゃんともう1件バッグのお店見に行きたいから、どこかでもう少し時間潰しといてくれる?』
『はぁ……。分かったよ。終わったら、連絡くれ。』
どうやら、母さん達、思う存分買い物を満喫しているらしい。
よしのとましろに説明をすると、彼女達はかなり納得していた。
「お母様達、買い物熱盛り上がっちゃってましたもんね〜」
「ママ達のあの感じだと、そりゃ、1時間そこらじゃ、終わらないわよね〜」
「そ、そうなのか……?」
女子にはあるあるの感覚らしい。買い物は必要なものだけを時間をかけずに購入する俺には、ちょっと理解出来なかった。
「どうする?二人は、どこか回りたいところあるか?」
俺が聞くと、二人は顔を見合わせて、悩んでいた。
「う〜ん。そうねぇ……。でも、他の服屋を回るとしても、予算も残り僅かだし……。」
「そうですよねぇ……。私達の行きたいところばかり付き合って頂いているから、次はお兄様の行きたいところでいいですよ?」
「! それもそうね。義隆先輩がどんなところに好んで行くのか、私、興味あるわ!」
よしのの言葉にましろが同意し、二人が興味津々の目で見て来たので、俺は困って、頭に手をやった。
「いや、そう言われても、俺、今のところ、特に欲しいものないしな……。」
絶対に音漏れしない耳栓もこの間買ったばかりだし、生活上特に特に必要なものは……。
と考えたところで、俺はある事を思い付いた。
「あっ、じゃあ、上のフロアーで、雑貨のお店回ってみてもいいか?」
「…!✧✧ もちろんですっ♪」
「…!✧✧ いいわよっ♪」
二人にとっても、それは悪くない提案だったみたいで、二つ返事で了承してくれた。
✽
「わぁ〜。ネックレス可愛い〜♡あのチャーム、絶対に願いを叶えてくれる石が入ってるらしいですよ?」
「確かに可愛いけど、なんか、あんたが持つとまたとんでもない事になりそうだから、やめときなさい!」
「え〜、何でですかぁ……!」
女の子向けのファンシーな小物が置いてあるお店のアクセサリーコーナーで、よしのとましろがまたやり合っている中……。
「ほほぅ……?」
俺は店の奥に、興味を惹かれる商品が展示されてるのを見つけて声を上げた。
「お兄さん、それ、オプション+1000円で、動物のワンポイント図柄も入れられるよ?」
「へえ〜!それは、いいですね?」
店員の40代ぐらいのおばさんに、声をかけられ、動物の図柄刺繍の一覧を見せられ、俺がウンウン頷いていると……。
「えっ。お兄様、これが欲しいんてすか…?」
「義隆くん…?これ、フリルついてるけど……?」
よしのとましろが俺の気になっていた商品を見て、目を瞬かせた。
店の奥に展示されていたのは、シンプルながら、ところどころにフリルやリボンのついた可愛らしい女の子用のエプロンだったのだ。
「ああ。元々、試験勉強頑張ったご褒美に俺からも何かプレゼントしたいと思っていたんだ。よしのもましろもそれぞれの家で家事を手伝う機会があるから、こういうのあれば便利かと思って、気に入ったものがあれば、プレゼントしたいんだけど……。
これは、よしのの好きなウサギ、ましろの好きなペンギンの図柄も入れられるそうだけど、どうかな?」
「そりゃ、すっごく素敵で、刺繍のウサギさんもラブリーですし、プレゼントしてもらえるなら、嬉しいですけど……。」
「え、ええ……。とってもデザイン可愛いし、刺繍のペンギンさんも愛らしいし、プレゼントしてもらえるなら、最高だと思うけど……。」
俺の申し出に、エプロンと刺繍の図柄の表を見遣り、よしのとましろはパチパチと目を瞬かせて、戸惑ったように顔を見合わせた。
「じゃ、決まりだね?刺繍に少し時間かかるから、他の店を回ってもらってもいいけどお兄さん達どうする?」
「ああ、俺はこの近くにいるけど、ましろとよしのはどうする?」
お店の人に聞かれ、俺が答え、彼女達にも聞いてみると……。
「えーと……。」
「ましろさん、ゴニョゴニョ…。」
ましろが返事を躊躇っているところへ、よしのが何やらヒソヒソ話をして来て、彼女は目を見開いた。
「……!(べ、別にそんな事ないわよ。分かったわ。私も行くわよ!)よ、義隆先輩、私達、少しこの辺のお店回って来ていいかしら?」
「ああ。いいけど、喧嘩すんなよ?」
「はーい。お兄様、ありがとうございます! エプロンの仕上がり楽しみにしてます。」
「ええ。私も楽しみにしているわ。じゃ、また後で!」
??
二人共何か様子がおかしいな。母達みたいによからぬ事画策してなきゃいいが……。
目配せし合いながら、そそくさと店を出て行く二人を不審に思い、俺は首を傾げていた。
そして1時間後ー。
「あいよ。お兄さん、刺繍入り、エプロン2点で7960円!こっちのミトン一つずつ、おまけに付けとくよ?」
「ありがとうございます!」
刺繍が仕上がり、エプロンの支払いを済ませた後、店の前で待っていると、5分ほどして、よしのとましろが二人、パタパタこちらに駆けて来た。
「お兄様〜!」
「義隆先輩〜!」
「ああ、刺繍仕上がったぞ?何か、買い物したのか?」
二人がそれぞれ手におしゃれな紙袋を下げているのを見て、俺が聞くと、彼女達は嬉しそうに笑った。
「はい! お兄様これ、受け取って下さい。他の人の事ばっかり考えて、自分の事はいつも後回しのあなたにプレゼントです!」
「はい! 義隆先輩、これ、どうぞ。男の子にプレゼントなんてあげるのなんて、あなたが初めてなんだから、有り難く受け取る事ね?」
「へっ。」
よしのとましろにおしゃれな気なそれぞれの紙袋を差し出され、俺は目を丸くした。
「お兄様の名前入りのシャーペンです。名入れをその場でやってくれるところがありましたので……。お兄様、試験勉強に協力して下さったお礼です。」
「同じく、義隆先輩の名前入りのボールペンよ?ま、まぁ、何かと家ではフォローしてもらってるし、ちょっとお礼的な?」
「……!! ///」
よしのの素直な優しい笑顔、ましろのぎこちなくも恥ずかしそうな笑顔を前にして、胸が熱くなりながら、俺は二人のプレゼントを受け取った。
「よしの、ましろ、ありがとう。俺もプレゼントもらえるとは思わなかったよ。」
俺は、二人にも先程買ったエプロンの包みを差し出した。
「よしの、一人でましろの家族とうまくやってくれていて、試験勉強にも懸命に取り組んでいたな。頑張ったよしのに俺からのプレゼントだ。」
「お兄様……!////ありがとうございます!」
「ましろ、慣れない家事にも励んで、家の環境に馴染もうと努力してくれていて、試験勉強では、自分の事以上によしのの勉強を気にかけてくれていたな。頑張り屋のましろに、俺からのプレゼントだ。」
「義隆先輩……!////あ、ありがとう……」
よしのとましろにプレゼントを手渡すと、俺は自分にも言い聞かせるように強く二人に呼びかけた。
「二人も不安だろうが、今の困った状況は、いつか絶対解消されるからな。それまで、三人で協力して支え合って行こうな?」
「はいっ。もちろんです」
「え、ええ。分かってるわ」
二人は目を潤ませて、頷いてくれたところへ……。
「あっ。いた〜!皆、買い物長引いちゃってごめんなさいね?」
「調子に乗って、つい、買い過ぎちゃったわ。ごめんなさい、お腹空いたわよね?すぐご飯食べに行きましょう〜!」
エスカレーターの上がり口からこの階に登ってきた、母さんとましろの母親が大きな紙袋を沢山下げて、済まなそうな顔で、こちらに手を振って来た。
「お母様……。あんなに何買ったんでしょう?」
「ママ……。大人買い半端ないわね?」
「俺、多分あれらの荷持持たされるんだよな……。」
俺達は、それぞれ買い物を終えた母親達の満足仕切った様子に、苦笑いしたのだった……。




