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俺らしい決断

『はっはっ。お前のおっぱい最高だぜっ!!』

『あっ、あんっ。あんっ。』


「うっ…。ううっ…。お兄様ぁっ…。」

「こんなもの、お前が目にしていいもんじゃないな…。」


 画面上で寝取拓郎が、ましろの《《豊満な胸》》を揉みしだいているところで、俺は苦笑いし、NTRビデオレターを一時停止にすると、俺の為に泣いくれている実の妹よしのの肩を抱き、ソファのテレビに背を向けるような位置に誘導した。


「ましろさんは、お兄様の事を心から好いていらっしゃるように見えましたのにっ…。」


「ああ…。俺もそう思っていたが、どうやら、自惚れだったようだな。」


 一時停止されたNTRビデオレターをチラリと目を遣り、俺は力なく笑った。


「今までお仕事一辺倒で、何回女生徒に告白されても、見向きもしなかったお兄様が、ましろさんとお付き合いされると聞いた時は驚きましたが、やっと自分の幸せに目を向けるようになられたのだと、嬉しくも思っていました。

 それなのに…残念です…。」


「ああ。今まで女子に興味のなかった俺が、ましろとは何故か昔からの身内のように気が合って、何でも話せるような気がしていた。

 

 だから、今「彼女を取られた」事より、「彼女に信頼を裏切られた」事の方がショックが大きいんだ。」


「お兄様、お辛いですね…。ましろさんがこんな風になるきっかけのような事はあったのですか?」


「ああ。確かに最近、忙しくて彼女に構えていなかったし、彼女もそれに不満を抱いているのは感じていたんだ。


 だから、今日の帰り、週末デートでもと誘ってみたんだが、断られてしまってな。


「私の思いの丈が詰まったビデオレターを送ったから見て」

と言われ、帰って来たら、郵便受けに彼女からのUSBメモリ入りの封筒が入っていたので、俺に対して恨み言を吐き出したいのだろうかと覚悟して視聴を始めたんだが、まさかこんな内容とは…。


 もう、とっくに彼女の心は離れていたらしい。」


「ううっ…。お兄様がお忙しいのは、皆の事を考えて精力的に働いていらっしゃったからなのにっ…。


 私の体調を崩した時に、心配するお兄様にましろさんとのデートをキャンセルさせてしまった事も悔やまれます。


 こんな事になるなら、あの時、無理にでもデートに送り出せばよかったですっ。」


 辛そうに顔を歪めるよしのに、俺は窘めるように言った。


「よしの。あれはお前のせいじゃないし、仕方ない事だったろう。それに、そんな一回だけの事で彼女の行動が変えられたとは思わない。

 どの道俺達はこうなっていたんだろうよ。」


「お兄様…。これから虎田さんとはどうするおつもりですか?」


「うん。こうなっては、無論別れるしかないだろうな。サレ男として学校中の笑い者になるだろうが、それもしばらく耐えればいいだけの事だ。」


「お、お兄様ぁっ。学校中が敵になったとしても、私はお兄様の味方ですからっ。いざとなったら、ましろさんへのふ、復讐の為、この手を汚す事だって厭いませんっ!!」


「よしの…!」


 俺の手をギュッと握り、震えながら涙覚悟を伝えてくる妹の姿に、俺は胸の奥が温かくなった。


「ありがとう。よしの。でも、無理をするな。優しいお前には復讐なんて、似合わない。


 恋人としてはこんなこんなビデオレターを送られるぐらい失格だった俺だが、お前の兄に恥じぬよう、《《自分らしく役割はきっちり果たすよ》》。」


「お兄様…!」


「ちょっと気になるところもあるんでな…。」



 よしのが少しだけ安心したような笑顔を浮かべるのを見届けると、俺はましろと寝取の絡み合う画像に、再度目を向け、為すべき計画を頭の中で組み立てていた。



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