元カノ(?)との復縁と生徒会長の土下座
ガラッ!
「皆、心配かけてすまなかったな…。」
「お、お騒がせしました…。」
「…………。||||||||」
「「「会長…!」」」
「「「「「「「虎田さん…!鷹宮さん…!」」」」」」」
あれからすぐに風紀委員と空に連絡をして、ましろが見つかった旨を報告し、再び視聴覚室へ戻った、俺、ましろ、よしのを見て、他の生徒会メンバーも、風紀委員メンバーは、俺達に駆け寄って来た。
「うん。皆無事、戻って来てくれてよかった!」
「ううん…。」
風紀委員長の上原は、昏倒して呻いている寝取の近くで俺達に親指を立てた。
ホッとした空気になっている一同の前で、覚悟を決めたツインテールのよしのと目を見交わすと、真剣な表情で語りかけた。
「皆、聞いて欲しい事があるんだ!俺はましろとやり直す事にしたんだ!!」
「「「会長!?」」」
「「鷹宮 (くん)!?」」
「「「「!?」」」」
突然の宣言に、黒崎、渥美兄弟、風紀委員長、副委員長、その他の風紀委員が目を見張る中、俺はよしのの肩を抱き、皆に語りかけた。
「飛び降りるのはフェイクだったものの、ましろは本当に自殺しようかと思う程思い詰めていたみたいなんだ。なぁっ?よしの?」
「え、ええ…!お、おに…、お兄様…。わ、私がそんな、ま、ましろさん…を止めているところにお兄様…が間に合って…。」
「……。」
俺が横目で薄青の髪の少女を睨むように見遣ると、ましろはカミカミでコクコクと頷き、状況を報告し、よしのは俯いた。
「「「「「「「……!!||||||||」」」」」」」
ちょっと不自然なましろの態度は、よしのが普段から控えめな性格である事も相まって、この非常時により言葉の信憑性を引き立てて、皆にショックを与えたようだった。
「話し合ってみたら、俺達の間には行き違いがあって、ましろがNTRビデオレターを送り付けて来た背景には、彼女だけでなく、俺にも悪いところがあるってよく分かったんだ。
ま、ましろが許されない事をしたのは、分かっているっ。生徒会メンバー、風紀委員メンバーの君達に、NTRビデオレターの件でここまで巻き込んでしまって、大変申し訳ないと思っている。だがっ…。」
ガバッ!!
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」
俺は皆が驚く中、その場に土下座をした。
「NTRビデオレターの件、俺の顔に免じてなかった事にしてやってくれないだろうかっ。ましろには二度とこんな事をさせないようにするっ。だから、一度だけ許してやってくれっ!彼女に万一の事があったら、俺はもう生きていけないっっ。ううっ。頼むぅっ!!」
「「鷹宮 (くん)っ……。」」」」」
「「「会長っ…。」」」
涙を流して額を床に擦り付け、頼み込む俺のなりふり構わない有様に、風紀委員メンバーも黒崎、渥美兄弟も呆気に取られていた。
そう。よしのの提案とは、ましろが自殺しようとした事にショックを受けた俺が、彼女への強い想いに気付いて、復縁後、その罪を免除してもらうよう皆に懇願するというものだった。
切羽詰まっていた俺はよしのの提案を受け入れ、自分の体に戻れば、断罪される運命にあるましろは、戸惑いながらもその茶番に協力する事を選んだ。
「「「「「「「「「……」」」」」」」」」
皆は戸惑ったように、お互いに顔を見合わせ、しばらく沈黙がその場を支配したが…。
ポン!
「鷹宮…。顔を上げてくれ?」
「…!」
やがて、誰かに肩を叩かれ顔を上げると、そこには風紀委員長の上原が、俺の近くに屈み込み、目を潤ませていた。
「お前はクールな奴だと思っていたが、やらかした彼女の為に土下座までするとは…。俺は感動したよ…!」
「ええ。そのセリフどこかで聞いたような気がするけれど、私も虎田さんを想う鷹宮くんの姿にウルッと来ちゃった…。ぐすっ。」
風紀委員副委員長の荒木も頷き、目の端の涙を指で拭った。
「寝取と虎田のした事は、本来許されることではないが、お前の熱い心根に免じて、今回のNTRビデオレターの件は見なかった事にしよう。」
「ええ。そうね。本来、鷹宮くんから話を聞かなければ分からなかった案件でもあるし、二度としないというなら、今回だけは見逃しましょう。皆もいい?」
「「「「はい…!」」」」
上原くん、荒木さんが許しの言葉をくれ、他の風紀委員もそれに同意してくれた。
「上原くん…。荒木さん…。風紀委員の皆…。ありがとうっ。」
「俺も会長がそれでいいのなら、この件について蒸し返したりしませんし、口外しませんよ?」
「「私(僕)もっ!」」
生徒会メンバーも、にこやかに頷いてそう言ってくれた。
「黒崎、空、海、ありがとうっ。」
俺は、風紀委員と生徒会のメンバーに申し訳ない気持ちになりながらも、心からのお礼を言った。
「風紀委員の皆さん、生徒会の皆さん、こんな私に温情をかけて下さってありがとうございますっ。私が心ないNTRビデオレターをおに…よ、義隆先輩…に送り付けてしまったばかりに、皆さんにご迷惑をおかけしてしまってすみませんでしたっ!!
もう、二度とこんな事はしないと誓いますっ!!」
よしのも、粛々と皆の言葉を受け止め、頭を下げると涙を落とした。
「これからは、おに…、義隆先輩とゼロから信頼と愛情を育てていきます…。////」
「ましろ……。////」
よしのと見詰め合い、柔らかい小さな手を握ると、何故か急に顔が熱くなり、鼓動が高まった。
俺、どうしたんだ…?これはよしのの提案で演じている茶番なのに…。
ましろはぎこちなく見つめ合う俺達から気まずそうに目を逸らしていた…。