嫌な予感
嫌な動悸が鳴る中、俺はフェンスに近付き、恐る恐るその真下に目を向けるとその先には血だらけで手足の折れ曲がったましろの死体が……。
あるわけではなくただアスファルトの地面が見えるだけだった。
「ふぅーーーっ。」
「よ、よかった……!」
「うわ〜ん!もしもの事があったらどうしようと思っちゃったよ。空ぁ!」
「うわ〜ん!虎田さん、飛び降りてなくってよかったよ。海ぃ!」
俺が安堵のため息を漏らすと、その場にいた一同も同じようにホッとしており、風紀委員副委員長の荒木は胸を撫で下ろし、渥美兄妹は抱き合って泣いていた。
「どうやら、「屋上から飛び降りてやる」という発言は、俺達を撒く為の嘘だったみたいだな…。
ましろの奴、人を振り回しやがって…。」
最悪の事態は免れたのはよかったが、人の気持ちを弄ぶような画策をするましろに対する怒りが込み上げて来たところ、荒木が苦笑いをしていた。
「虎田さんには、すっかり踊らされてしまったね。もう校外に出てしまった可能性もあるけれど、皆で校内を手分けして探してみよう。」
「そうだな。すまないが、皆頼む。」
「了解!じゃあ、私達はこの階(三階)を探してみるよ。」
「じゃあ、私達は視聴覚室にいる人達の様子を見に行きつつ、二階を…!」
「では、俺は階段の途中でへばっているよしのを回収がてら一階を見回るよ。」
海&空→三階、風紀委員→二階、俺(&よしの)→一階を探す事にしたのだが…。
「んっ?よしのがいない…??」
階下に降りようとした時、先程よしのが座り込んでいた二階と三階の間の階段の踊り場のところに、彼女の姿がなかった。
「鷹宮さん、大分疲れていたようだし、保健室にでも行っているのかな?」
風紀委員を引き連れて一緒に移動していた荒木が心配そうに声をかけて来た。
「あ、ああ…。そこまで、具合が悪いようには思えなかったのだが……。」
よしのの体調も心配だが、俺は別の可能性にも思い至り、不安に胸がざわついていた。
「君達は、予定通り二階を探してくれ!ちょっと、俺は急いで一階を見てくる!」
「え、ちょっと、鷹宮くん!?」
言うなり血相を変えて階下に駆け出した俺の背後でに、荒木の驚いたような声が響いた。
違っていたらよいのだが…!
よしのは普段のんびりしているが、いざという時の勘がすごくよく当たるんだよな…。
途中でましろの嘘を見抜いて、彼女の場所を特定出来たとしたら…。
そして一人でましろに対峙し、トラブルになっていたとしたら…。
俺は生徒会長としてあるまじきスピードで階段を駆け下りて行った。