妹(ましろ)への愛
「ハアハアッ。義隆先輩、もっと右! ああん。そこ! しっとり濡れて気持ちいい!」
「いや、変な声出すなって。冷◯ピタ貼るだけだろ!」
ベッドの上で悩ましげに喘ぐましろに、俺は、例によって突っ込んだ。
ピトッ。
「ひゃうんっ……!///」
おでこに冷却シートを貼ってやると、ましろは気持ち良さそうな声を上げて体をビクンッと跳ねさせた。
忘年会の翌日の今日――。
発熱をしてしまったましろを心配して、俺は家にお見舞いに来ていたのだ。
「ふうふうっ……。明後日には皆で初詣に行く約束してたのに、また熱出して、心配かけちゃってごめんなさいね?
明後日までには必ず治すから!」
ベッドに横たわり、浅い息で拳を握り、気合いを入れるましろの傍らに座り、俺は苦笑いした。
「ハハッ……。そんな事気にしてないでゆっくり休めって。今まで本当に色々あったから、疲れが溜まっていたんだろ?
初詣は、延期して構わないから、ましろが元気になってから家族全員で行こうな?
それまで、俺が毎日看病してやるから!」
「義隆先輩っ……」
俺の申し出にましろは、瞳をうるっとさせ、遠慮がちに聞いてきた。
「で、でも、よしのが寂しがるんじゃない? 「せっかく元に戻れたのにお兄様に構ってもらえませぇん!」とか言って泣きそうじゃない?
ま、それはそれで面白そうだけどね?」
「いや、よしのは寧ろ俺に行くのを勧めて来たぞ?」
「ええ?」
俺の話を聞いてましろは目を剥いた。
「「本当は私も行きたいけれど、ましろはお兄様と二人きりの方が喜ぶだろうから、私の分までましろを看病してあげて下さぁい!」って送り出されてな」
「へ、へえ〜? 昨日、あれだけ私と義隆先輩を取り合っていたのに、よしの、随分余裕じゃない! あなた達、何かあったの?」
「ギクリ! い、いや、何もない……ぞ?//」
ましろに問い糾され、昨日ベランダでよしのにキスして将来を約束した事を思い出し、狼狽えながら否定していると、ましろの目は鋭く細められた。
「怪しいわね……。確認してみるわ」
「え! おい、ましろっ?」
ましろは枕元にあったスマホを手に取ると、ビデオ通話の状態で、よしのに電話をかけ始めた。
『はい。ましろですか? 体調はどうですか?お兄様はそちらにいらっしゃいますか?』
スマホの画面には心配そうなよしのの顔が映っている。
「ふうふうっ。ええ。よしの。熱はあるけど、割と元気よ? 義隆先輩も優しくしてくれるしね?」
『それはよかったです』
ハラハラする中、ましろはよしのと当たり障りのないやり取りをした後……。
「義隆先輩を送り出してくれた事は有難いけど、急にどうして譲ってくれる気になったの? もしかして、昨日、義隆先輩と一線越えたんじゃないでしょうね?」
「ぶふぅっ! 何言ってんだ、お前は!!//」
『ぶふぅっ! 何言っているんですか?ましろ!!』
とんでもない質問をされ、俺もよしのも大声を上げた。
『私はお兄様と一線なんて越えてません! ただ、キスをして、18になったら恋人になる予約をしてもらっただけですぅっ!!』
「……!!」
「よしのぉっ!!///」
『ハッ!///』
つるっと全て話してしまったよしのは息を呑むも時既に遅し……。
「へえ〜。18になったら二人は恋人になるんだ〜。そう言えば入れ替わり直前にもそんな事言ってたわよね?」
「ま、ましろっ……」
こちらを不機嫌そうに見遣ってくるましろに、戦々恐々としていると……。
ガシッ!
「って事は、それよりも前だったら義隆先輩をNTRするチャンスがあるっていう事ね?」
「へっ。ましろ?うわっ、何するんだましろ!!わあぁっ……!」
ズルズルッ! ドサッ!!
ましろに手を取られ、ベッドに引きずり込まれ、俺は悲鳴を上げた。
「ましろ! お兄様に何をするんですかっっ!?」
ましろは金切り声を上げるよしのが映っているスマホを俺達が見える位置に掲げ、高笑いをした。
「アッハッハッ! お見舞いに義隆先輩を一人で行かせた事を後悔するのねっ!!
今から、義隆先輩の童貞を奪う実況中継してあげるわっ!!」
「何言ってんだ!お前はっ!?///」
「いやぁぁっ!!お兄様が妹に犯されるNTRビデオレターを今から実況中継されてしまうっ!!ブフーッ!」
スマホの画面に映るよしのは、泣き叫びながら、何故か鼻を押さえ血までたらしていた……。
✽
それから五分後―。
「ゼェゼェ、ハアハアッ。 さっきので一気に悪化したわっ!」
「当たり前だろう! 病人なんだから、悪させず大人しくしてろよ!」
息荒く辛そうにしているましろの額を俺は小突いた。
あれから、ましろからスマホを奪い取り、ベッドから脱出したものの、よしのの鼻血がなかなか止まらずそっちも大変だった。
「ゼェゼェッ。兄を寝取られそうになって鼻血吹くなんて、よしの、やっぱり変態なんじゃないの? 義隆先輩、あんなんで本当にいいの?」
顔を顰めて、そんな事を言ってくるましろに俺は言ってやった。
「よしのをどうこう言う前に、隙あらばNTRビデオレターを撮ろうとするお前の趣向をなんとかしろよ!」
「何よぅ。私まで変態みたいに言って……」
ましろは唇を尖らせ……、こちらをチラリと窺い見て来た。
「ねぇ……。18になっても、私は義隆先輩の側にいられるかな?」
「んん? そうだなぁ……」
不安そうに瞳を揺らしているましろに俺はちょっと考え……。
「ましろが離れたいと思わない限り、俺はお前の側にいるよ? いくつになっても俺達が兄妹だって事に変わりはないんだからな」
「……! そ、そっかぁ……」
そう答えると、ましろはホッとしたように脱力し、布団を被った。
「(切ないけど、お兄さんでいい事もあるのね……)」
モショモショとましろが何か呟いたようなような気がして、聞き返そうかと思った時……。
大きな天蓋付きベッドの傍らにペンギンのぬいぐるみが二つ並んでいるのに、気付いた。
「ペンギン、もう一匹増えたんだな?」
「ええ。ぺんぺんのお友達、ぺん美ちゃん、サンタさんがプレゼントしてくれたの。
二匹は仲良しでずうっと一緒なのよ……? まるで、私達……みたいに……すうっ……」
「満足そうな顔して……。よかったな。ましろ……」
ましろは、布団から顔を出して嬉しそうにそう言うと、すぐに寝入ってしまい、俺はその頭を撫でてやったのだった……。
✽あとがき✽
ここまで読んで下さりありがとうございました!✧(;_;)✧
次回は本編最終話。 最後までワチャワチャな三人を見守って下さると嬉しいです。来週もよろしくお願い致します。m(_ _)m




