屋上での衝撃
「ましろっ!」
「ましろさんっ!」
「そんな…!飛び降りるなんて…!!」
「急いで追いかけよう…!!」
「「「「「私達も行きます!」」」」」
弾丸の如く、廊下へ飛び出してしまったましろを俺とよしの、風紀委員、渥美兄妹が追いかけようとしたところ…。
ガタンッ!!ガシャーンッ!!
「うがぁっ!!」
「「「!?」」」
教室前方から大きな音と悲鳴がして、振り向くと、黒崎が寝取にタックルをかましたらしく、二人は横倒しになっていた。
「やると思ってましたよ。とことん下衆ですね!寝取先輩!」
「ぐわぁっ。」
カシャーン!
黒崎が後ろから締め上げると、寝取は苦しさにUSBメモリを取り落とした。
どうやら、この混乱に紛れてNTRビデオレターを取り返そうとしたらしい。
全く卑怯な事を考えるものだ。
「くそっ。離せぇっ!」
「くぅっ。」
頼れる参謀ではあるが肉体派ではない黒崎が、寝取の抵抗に苦戦しているのに、加勢に入るべきか一瞬迷いが生じた俺に、黒崎は叫んだ。
「会長!ここは俺に任せて、行ってください。暴走した虎田さんを止められるのは、あなたしかいません。」
「俺も黒崎に加勢する!こちらの事は心配するな!」
「…!わ、分かった。黒崎、上原、寝取の確保は頼む。」
「「了解!」」
「ぎゃああ…!」
黒崎に筋骨隆々の風紀委員長、上原の助けが入った事に安堵し、背に寝取の悲鳴を聞きながら、俺達はましろの後を急いで追った。
飛び降り自殺をすると宣言したましろの行き先は、屋上だろう。
風紀委員、空&海 俺、ましろは視聴覚室に一番近い屋上へ続く階段を急ぎ登って行った。
「ふぅっ…。ふぅっ…。きゃっ!」
「よしのっ!」
途中、隣のよしのが階段を踏み外し、床に尻餅をついた。
俺が手を差し伸べると、息を切らしたよしのはふるふると首を振る。
「だ、大丈夫、です!お、お兄様…。私、体力がなくて、遅いので、先に、行って下さい。」
「わ、分かった。すまん。お前はゆっくり来い!」
妹にそう告げて、俺は屋上前の階段まで来ると…。
「こ、これ…。」
「と、虎田さんの…。」
屋上への扉の前で、風紀委員、海&空皆に動揺が走っていた。
「どうした!?」
「「会長…!」」
「鷹宮くん…!扉の前にこれが落ちてたんだけど…。」
俺が声をかけると、海と空は半泣きになり、副委員長の荒木さんが神妙な表情でハンカチを俺に渡した。
「…!」
その白いレースのハンカチには虎田ましろと名前が書いてあった。
どうやらここに来た事は間違いがないらしい。
バァンッ!!
「ましろ!!」
「「「「「「「「虎田さん!!」」」」」」」」
俺が屋上の扉を勢いよく開けると…。
「「「「「「…!!!||||||||」」」」」」
そこには誰もいなかった…。
「ま、ましろ…。」
「と、虎田さん…。」
「ま、まさか、もう…。」
屋上には見渡す限り人の気配がなく、成人男性の人の背丈より少し高いぐらいのフェンスの辺りを見詰め、俺達は息を飲んだ。
「ましろ…。」
俺は嫌な動悸が鳴る中、フェンスに近付き、恐る恐るその真下に目を向けると…。