負のリバイバル
あれから、もう二時間は経っている。
ワイデルはまだ帰ってきていない。
「姉さん遅いですね、チリト・レーファ」
「そうね、ビルトスがついているなら大丈夫そうだけど…」
「それより、外の世界の話は本当なのですか?」
この二時間の間、外の世界で何が起こっているか話していた。
まず、次元について、そしてEESについて…
「ええ、本当よ4年前のようにまた次元が歪んで大量に遺物が入り込んできた、本当はまた送り返すつもりだった、でもそれができなくなったの」
そう、あんなことが起こってしまったから。
「あら、何か来ますよ」そう言われて私は身構える、眼の前にできたのは見慣れた、ポータルだった。
「ただいま〜」「よう、俺だ」
「良かった、帰って来れたのですね」ビルトスが守ってくれたようだ。
「レーファ、ビルトスを貸してくれてありがとう」そう言って、ワイデルはビルトスを手渡してくれた。
「レーファ話さなければならないことがある」
…「なるほど、流石私の娘ですね、ほぼビルトスの助けなしに返り討ちにするとは」「スペルも秒で使いこなすし、びっくりしたぞ、だが不思議なことだ、こいつのネットワークはすべての次元に繋がっていた、もしかしたら俺のようにEESになれるかもしれん」いいや、それは彼がワイデルを認めてくれたらだろう。
「姉さんは、監禁されてる身です。EESにはなれませんよ」
「もうつかれたから、明日にしない?レーファは今日ここにいてくれない?
リバイバル次元の人間はいつ復活してもおかしくはないからさ」
仕方がない、これも監視役の仕事だろう。
「わかりました、おやすみなさいワイデルさん。
アルダーはどうするの?」
「私は姉さんの隣にいます」この機械は本当に妹のようだ。
「わかったわ、ビルトス、ちょっと仮眠をとりたい何か異常があったら、起こしてくれ」「了解」私は、男が監視できるところで眠りについた。
「おい、起きろ」「ビルトス、私は狩人なのか?」「何を言っている。
それより早く…」
ここは、たしか…ビルトスが私を起こしていると言う事は…
「ワイデルさん!」ホルダーから、スタンマグナムを取り出しワイデルの部屋に急ぐ。
「大丈夫ですか、ワイデルさん!」ドアを蹴り飛ばし、中に入る。
目に入った光景は、信じられないものだった。
ワイデルはいるが、一面水で濡れていて、アルダーの姿がない。
「アルダー…」とにかく安全な場所に連れてかなければ。
「ワイデルさん、良かった無事だったんですね」
「無事じゃない…アルダーが…アルダーが」ワイデルの手元をよく見ると、
基盤のような、回路があった。
「これは、アルダーの学習プログラム?」
「アルダーが…あの男に連れ込まれた」
「ああ、そのようだな、次元がこのあたりで歪んでいる」ワイデルさん…
「ビルトス、私をアルダーのところに連れて行って」
「それは、無理だ。次元の歪みが消えかけている。今入っても次元の狭間で永遠にさまよい続けることになる」そんな、じゃあアルダーはあの男を吸収して生き残るしか道がない。
「学習プログラムなんかなくても、私の妹ならきっと大丈夫だよね」
私達にはもう、祈ることしかできない。
「ここは、一面水ですね。よかった、私には防水機能がついていて」
きっといま、私がいるのは次元の狭間、もうすぐ姉さんが言っていたとおりに、狩り場に着くのでしょう。
「生きて帰ってきますよ、姉さん…」
そう誓って、眼の前に広がる光に手を突き出した。
「ここが、狩り場…」情報をセーブしようと思ってもできない、きっと学習プログラムが壊れているのだろう。
「ようこそ、我がリバイバル次元の狩り場へ」
この男はたしか、夕飯にされたはずじゃ?
「我は、脳が一部でも残っていれば何度でも生き返るぞ、ははは!」
「そうなのですね、では、脳ごと消し去ってあげます」
腕をチェーンソーに変形させる。
「おっと、我には物理攻撃は効かんぞ?」
そう言うと、男は緑っぽく輝く氷を手のひらに召喚しそれを片手で砕いた。
「ウォータースペル、ファンクション」男がそう唱えると、私の足場が水となり、重い私は沈んでしまう。
「このままでは、いけない」私は足をパージして、腕をチェーンソーから、イルカのような手に変える。
「ウォータースペル、シーチェーン」背後から声が聞こえる。
避けなければきっと来る。
そう思った頃にはもう遅かった。
「ああ、あっけなかったなワイデル・クルガー、ルッシュとの戦いで使い魔やスペルを使えるようになったのではないのか?」?私を姉さんと間違えている?
「まあ、いい、死に方ぐらいは選ばせてやる」このままでは、まずいだが鎖のせいで体が動かない。
「動いても無駄だ、おっと我の使い魔がお前を食いたがっている
いいよな?さあ、来い!シーワーム!」男の腹から出てきたのは巨大な寄生虫だった。
「ルッシュの恐怖をしれ、やれシーワーム!」ああ、もうだめなのか…姉さんごめんなさい…
「記憶を強く想ったら、ラベンダーの使い魔が出てきたの…」姉さん!?
「姉さんはなぜ、私を作ってくれたのです?」
「それはね、お父さんが私を作ってくれたから、私はあなたを作ったの」
そうだったのですね、そういえばこのとき姉さんは不思議なことを言っていた。
「あとね、私は愛を知るためにあなたを作ったのよ、だからあなたは愛の結晶ね」姉さん、意味がわからないよ…
「愛って、なんだい?姉さん?」
「心があるものに満ちた、不思議な成分のことね」
心…愛…
知らないことばかりだ面白い。
「あなたにも、心はあるわよ、今面白いとおもったでしょ?」
確かに思った、それが心?
いきなり、辺りが明るくなった。
自分の影が大きく育つ。
「姉さんと一緒にいたいなら、今ここで諦めてはいけない」
誰の声?
「私はあなたを満たす不思議な成分…私と一緒に探しましょう?我が名を呼んで、生き残りましょう?」
「まだ、諦めてはいけない…」
「ルッシュの恐怖をしれ、やれシーワーム!」
私は、まだ生きたい。
「来てください、もう一人の私、感染型電脳ウイルス シャートゥーン」
「はははははは!これでようやっと本当の力が出せる。さあ、これをあなたに差し上げましょう」これは、姉さんが言っていた…スペル?
「唱えてあげなさいきっとあるのは、明るい未来」
「やるしかない」私は頭の中にある知らない言葉を唱えた。
「ウイルススペル、ウィルト!」そう唱えると、私の鎖は外れていて代わりに、あの男の使い魔が捕まっていた。
「なに!なぜシーワームが囚われている!?」「それだけじゃないわ、あんたのかわいい使い魔ちゃんの様子を見てご覧なさい?」
「…!」拡大して、見てみるとシーワームは細かい粒子のようなものを放っていた。
「これは?」「見て分からないの?電脳化してるのよ、あとはあなたの得意分野よ」ああ、そういうことか。
「ええ、そうですね。ハックスケールをセッティング、対象シーワームLV0
コントロールを奪います」暴れていた、シーワームは急に静になる。
「何がおこっているんだ?」シーワームは主人の方に向き直る。
「どうやら、お腹が空いてるご様子で」こういうときには、このスペルで
「サポートスペル、リフレクト!」シーワームの周りが光り始め、鎖がとびちり今度はあの男を囚えた。
「さあ、自分の使い魔に食われなさい?たしかリバイバル次元だっけ?
脳を食われないように頑張ってね〜?」
「チェックメイト、シーワーム、主人がご馳走してくれますよ」
そう宣言すると、シーワームは男に近づき腹から、入っていく。
「あら、内臓がお好きなようで…これじゃあずっと脳食われて死ねないね?」「やめろ!シーワーム、我を裏切ったのか!?」もう可愛そうだ、楽にしてあげよう。
「あら、もう殺っちゃうのつまらない子」
私は腕を寄生虫の口のような形に変えながら、男に近づく。
「死ねないのなら、私の影の一部になりなさい?」
私なりに笑いながら、男の顔にめがけて腕を伸ばし、脳まで食らいつく。
「美味しかったですか?」「水っぽかったわね」
もう、再生できなくなった体からシーワームが出てくる。
「ごめんなさい…私の記憶の一部になってください」
電脳化しているから、吸収はすぐに終わった。
「あなたが水の力を持つと不自然ね?」
「でも、結構便利ですよ?ほら、足が変幻自在になってはえてきた」
「ふふ、面白い子ね、じゃあまた今度、これからもよろしく」
そう言い残すと、シャートゥーンは普通の影に戻ってしまった。
「あそこに、ポータルがある。帰りましょう姉さんのもとに」
アルダーも能力者なんです。
すごいでしょ?