第六章 記憶と人生のアンティーク
「起きて、ワイデル…あなたは生きなければならない」
私なんか生きてどうなる。
「あなたは嫌われてなんかいない、目覚めなければ魔女に飲み込まれるだけ
だから起きるの、あなたの愛を見せてみなさい」
日が眩しい、ここは外?
「ワイデル・クルガーの起床を確認、ようやっと起きたか」
これは、レーファが持っていたネックレス?
「一旦状況を説明しよう。俺は戦闘ナビゲートAIのビルトスだ、普段はレーファの声を借りて生活している。
それは、そうと大変なことになった、あのアンティーク魔女がお前を吸収するために自分の狩り場に持って来たんだ」あの女のことね
「だが、安心しろまだ対抗策はある」
「対抗策?私が戦うの?」
「実際戦うのは、お前ではない…お前の感情と記憶が無意識に生み出す使い魔が戦うんだ」
私にそんな力が?
「負けたら、その使い魔が殺されたらどうなるの?」
「使い魔はお前の記憶であり感情だ、殺されたらお前からその記憶と感情が消える。だが、安心しろ完全に消えることはない、正しく言えば吸収されるんだ。」
「つまり、吸収した相手の使い魔を吸収すれば戻って来るのね」
なんだ、簡単じゃないか
「ただし、お前の自身が諦めたり吸収されたりすればもうどうすることもできない、覚悟しておけよ」
「そうなのね、説明ありがとう…じゃあ行こうか」
鳥の声のする方に、木で覆い尽くされた家がある。
きっとあそこで古代の魔女が持っているのだろう。
私は、アンティークマジック次元に足を踏み入れた。
「ここに、魔女がいるのね」
「気を付けろよ、ここはやつの狩り場だどこに使い魔がいるかわからん」
ビルトスの声を聞きながらも家のドアを開ける。
中には、水色のモヤが飛んでいる。
「あれは、ここの虫みたいなものだ気にしなくていい」
「あら、そうなのね」
さらに、奥に進んでいく
「待て、階段があるなこの先に生態反応ありだ」
「いよいよね、彼女を吸収すれば元の世界に戻れる」
階段の先には、ドアがあった。
「行くわよ、ビルトス…」「ああ、開けろ」
ドアの軋む音がする。
「あら、ノックもなしとわね…ようこそ、うちの狩り場へ遅かったじゃないの」
「どうして、私をここに?」
戦闘を仕掛ける前に、情報を集めておいた方がいいだろう。
「その雰囲気、オッドヴァンプ次元の人間だからね、お嬢さんを吸収できればうちはあんたの記憶が奪えるってわけよ、さて話はこれくらいにして始めましょうか」
来るのか、態勢を整え、身構える。
「あら、戦う気なのね…気に入った、本気で戦って上げる。
おいで!我が下僕アンティークワーム!」
彼女は羽織っていたマントから、機械の虫のような使い魔を召喚した。
「おい、何をやってる。早くお前も使い魔を召喚しろ」
「そんなこと、言われたってどうすればいいの?」
「強く過去の記憶を想うんだ」
過去の記憶…
「無駄よ、記憶で言ったら私の方が上、七歳ぐらいのお嬢さんに何が召喚できるっていうの?かわいいおもちゃぐらい?アッハハハ!」
過去の記憶?「お父さん…」「時間の無駄ね、さあ、アンティークワーム!やりなさい!」ワイデル…合言葉は想像だ。
「…!」お父さんが残したものそれは想像
「避けろ!」「そうだよね、私は私らしくね!」
視界が暗くなる。
「ここは?」少し歩くと見覚えのある景色が広がっている。
「花畑だ!」楽しそうな親子の声がする。
「あれは、お父さんと…私?」たしかこのとき私は、ラベンダーがきれいだって、お父さんに言った。
「ねえ、見て!このお花すごくきれいだよ!」
「そうだね、きっといっぱいお日様の愛をもらって、育ったんだろうね」
でも、愛の意味がわからなくて…
「じゃあ、愛を作ってみよう、ワイデル!合言葉は想像だ!」
この後私は家に帰ってお父さんと一緒にラベンダーを植えた。
周りの景色が家の庭に変わった。
「私の愛あっているかな?」「自分が正しいと思いなさい」
時が、急に進む、ラベンダーは段々と大きくなり私の身長を超えた。
「ああ、これが私の愛の正体なのね…きれいだわ」
「我が出よう、助けが必要なのだろう?生きたいのなら我が名を呼ぶがいい」
「あなたの名前は、捕食型ラベンダー、ラビス!」
気がつくとそこは、魔女の部屋だった。
「避けろ!」「避ける必要なんてない、おいで、ラビス!」
地面が割れ、出てきたのはさっき見た巨大なラベンダーだった。
「まさか、使い魔をだせるとわね、いいわ行きなさい!アンティークワーム!」「ラビス…食べていいわよ」ラビスはそう言われると、襲いかかって来た虫を丸呑みした。
「なっ!」食事完了と言うように、ラビスが再び口を開くと頭の中で記憶が弾けた。
「この記憶は私のじゃない…あなたの?」
頭の中に謎の呪文が流れ始める。
「あんたなんかじゃ、私の呪文を使いこなせる訳がない」
呪文を読み進めているうちに、規則性に気づいた。
「これなら、使える」手を広げ意識を集中させる。
「まさか、お前…スペルを?」「ショータイム」
目を開けると、手のひらには青白く輝くチェス駒があった。
「ええい!そんなのうちの記憶の一部でしかないわ!マジックスペル、千本レイピア!!」呪文を唱えると魔女の後ろにはレイピアが大量にあった。
「消えなさい」魔女が手を振りかざすと一気にレイピアが飛んできた。
「避けろ!いやこの数じゃ…」ホーリースペル「ミスト」私は、無意識のうちにそう唱えていた。
「馬鹿な!」魔女は驚いているが、私には何が起こったのかわからなかった。
「おいおい、スペルの解読は俺でさえ1年必要だったぞ、それを数秒で?」
後ろには大量のレイピアが刺さっている、どうやら私の体とラビスの体が透けてよけれたようだ。
「あんなスペルはうちの記憶にはないはず、じゃあコピーしたのではなく…」「こいつが、完全に基礎からスペルを理解したようだ」
この二人は一体何を言っているのだろう。
「このくらいの呪文、解読できて当然でしょう?」
「…化け物め、さあ、終わりにしようか、ここからは俺も協力しよう」
胸元に赤い光が灯る。「ストーンスペル、レッドカーペット」
ビルトスがそう唱えると、ラビスが謎の歪みに包まれていく。
「ちょっと、何やってるの?」「まあ、見てな…ネットワークを構築、コード、ラビス…アンティークマジックに接続、オールオッケー…GO!エンゲージ」
歪みが完全に消える。
「ちょっと!消えちゃったじゃないか」「いいや、しっかりいるぞ」
地面から、音が聞こえる…先より音が冷たい、ああ、そういうことね。
「さあ、おいで!アンティーク・ラビス!」名を呼ぶとすぐに機械仕掛けのラベンダーが出てきた。
「なっ、それはうちの次元の使い魔のはず、どうしてあんたが?」
「あんたの記憶を使って、こいつの別次元の使い魔を召喚したのさ」
なるほど、つまりこの使い魔はアンティークマジック次元の私の使い魔か
「ありえない、まさかそのネックレスくん…あんた」
「ああ、そうさエンゲージネットワークサポーターだ、お前らはEESの方が聞き覚えがあるかな?」何を言っているのか一切わからない、もう終わらせよう。
「自分の次元の使い魔に食われるといいわ、さあ終わりのときよ」私が吸収を命じると、ラビスは地面の中に入り込んで行った。
「まって!うちはまだ生きたいの!」「あきらめなければ、いいじゃない、まあ無理だろうけど」魔女の後ろに穴が開く。
「チェックメイト」「イヤあああああぁ!!」
ああ、なんと美しい私の使い魔よ。
「食事が終わったようだな、ネットワークを切断する」
「おかえり、ラビス…これからもよろしくね」
ワイデルたちのバトルシーンでした!
スペルは魔法とでも、思ってくださればいいです!