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阿鼻叫喚

・意味・

非常に悲惨で惨たらしい様。

さぁて……、

席について教科書やノートを出していく。


今日もめんどくさい、勉強勉強な一日が始まるのだ。


「えー朝礼を始めるぞー」


先生が入ってくる。

今日は一限目から苦手な数学。最悪だ。


「えー……[l]では相田ー」

「はいっ」


先生が点呼を取っていくごとに、

生徒が次々と返事をしていく。


あ行なので、もうすぐわたしも呼ばれる。

「はいっ」といつも通りの返事をしてしまおう。

あぁ、眠い眠い。


「えー、次……いな



稲葉、と自分の苗字を呼ばれる前に

ふと教室の扉が開いた。


ん?なんだ?

先生も生徒もみんな扉の方を向く。


そこには、他学年の生徒が一人。

立っていた。ぽつんと。


「……。」


「ん?なんだ?」


先生が一旦名簿を置いて生徒の方へ駆け寄る。


なんなんだろう……?

遅刻した生徒?でも教室を間違うものなのか??


「……。」


「…………。」


「おい?聞こえてるのか?

おー
















ブシャッ












刹那、先生の声が途切れた。


それと同時に、先生と生徒の方向から

こちらに向けて何かが飛んでくる。


つば?水?

にしてもすげぇ飛んできたな・・・。



……あれ?赤い……


頬を飛んだ謎の水分を手で拭くと

そこには綺麗な赤色がこびりついていた。


ん?顔無意識に引っ掻いたか?

いやでも引っ掻いた覚えはない。


「が……」


先生がやっと声を出した。

が、何故か苦しそうな声を上げる。


先生が何故か喉を抑えている。

抑えている手から液体がドボドボと出てる。


わたしの手についているものと同じ、赤色。


「ぁ゛………………だ、ぅ゛げ………………ぇ゛」




グチャッ


先生が潰れた声でこちらに何か言ったかと思ったのと

同時に、今度は先生の頭がどこかへ消えた。


え?どこ?なにこれ?

そう思った矢先、教卓の上に何かがごしゃっ、と

音を立てて落ちてきた。


まるで、空気の抜けたバスケットボールのように。


教卓の上には、何故か入り口で立っているはずの

先生の「頭」があった。


そして、入口にいる先生の「胴体」は

頭があるはずの場所から綺麗な赤色を吹き出して

そのまま……赤い水溜まりを作ってそこに崩れた。



「…………………………ぃ、


いやああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああッ」



生徒が次々と悲鳴をあげ、

あるものは我先に逃げ、

あるものはその場で嘔吐し、

あるものは呆然とし、

あるものは号泣と失禁をしながら

椅子から崩れ落ちた。


「あ……ぁあ……」


何が起こってるの?

え?これなに?ドッキリ????


あ、はははは……冗談キツすぎるなぁ……。


…………[l]冗談だって言ってよ?ねぇ、嘘でしょ???


段々と自分の息が荒くなっていくのを感じる。


目の前で突然のB級ホラーのような惨劇。

そして未だに虚ろな目をした生徒。

逃げ惑うクラスメイトたち。


そのまま硬直していると、

件の生徒がこちらにやってくる。


ゆっくり、ゆっくり……。

その生徒の制服と顔には真っ赤な血が飛び散り、

手にはカッターナイフが握られている。


あ……どうしよう。

逃げないとヤバくないこれ……


そう思ってはいるが、

体が言うことを聞いてくれない。


おいおいおい……じっとしてる暇ないだろ

逃げろやカス。


生徒のカッターナイフが

振り上げられる。


動け。お願い動いて。

逃げたい。[l]逃げたい逃げたい逃げたい……!!!


「ああああああああああ!!!」



べしっ!と鈍い音が響く。

その音の後にカッターナイフが落ちる音と

血まみれ生徒がその場に倒れ込む。


「紗綺!!」


「こ、まきちゃ……」


我に返り、やっとのこと

自分の体を動かすことができた。


隣のクラスの小巻ちゃんが、

剣道部の竹刀を片手に駆けつけに来てくれた。


「なにしてんの!?逃げるよ!!!」


そう言って、小巻ちゃんは

そのままわたしの手を引いた。


**********************************


「小巻ちゃ……なんか……これ……」


「意味わかんないっての!

いきなり別のクラスのヤツが入ってきて、

何かと思えばいきなり刃物とか鈍器振り回して

大暴れ!生徒を襲い始めたの!!」


どうやら、小巻ちゃんのクラスでも

同じような惨状が起きたのだ。


「ど、どうしてこんなことが……」


「わかんない!でも今はとりあえず

学校から逃げるよ!!!!」


小巻ちゃんが頼もしく、そう叫ぶ。


2人で逃げてる間にも、

周囲からは悲鳴や断末魔が聞こえてくる。


吐きそうだ……とても気分が悪い。

一体みんなどうしてしまったと言うんだ……。


「くそっ!なんで鍵かかってんのよ!?」


やっとのこと昇降口へとやって来れたが、

何故か扉全てに鍵が掛かっている。


「くそっ!開け!ざけんなゴラ!!!」


イライラしてるのか、なんとか扉を叩いて

壊そうとする小巻ちゃん。


わたしはそんな中、周囲を見回す。


あのおかしな生徒は追って来てないか……??

同じように逃げてる生徒はいないのか……??

………………なーちゃんは無事なのか???


「この……っ、待ってて紗綺!

絶対一緒に逃げようね!」


「う、うん……!」


「……でも、紗綺が無事でいてほんとよかっ



……え?

何が起こった?

いきなり、破裂したみたいな

音がしたんだけど???


小巻ちゃん?

小巻ちゃんの声が聞こえなくなった……。




え?小巻ちゃん?小巻ちゃん?

なんでいきなり黙ったりするの?

黙らないでよ???ねぇ????


気づけば、周囲には真っ赤な欠片が大量に散らかっていた。

なにこれ?こんなのさっきまでなかったよ?


小巻ちゃん?小巻ちゃんはどこ??


周囲を探してもいない……どこ???


キョロキョロしていると、

そばに小巻ちゃんはいなかった。

いなかった代わりに、別の誰かがいた。


真っ白い、セーラー服を着た白髪の美人。

その手からは煙が出ていた。


誰だろこの人?

そう思って下を向くと、見覚えのある欠片があった。


綺麗な茶色の毛束がいくつかあり、

その傍には丸い、綺麗な球体が一個落ちていた。


茶色……髪の毛か?

その髪色は、確かに彼女のものだった……。






……こまき、ちゃん……?????









「あ…………、


いやあぁああああああああああああ!!!!!」


やだっ!?嘘でしょ!?なんでなんで!?

小巻ちゃん!!!嫌ああああああああああっ


嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ!!!


「なんで!?なんで小巻ちゃん!?

冗談やめてってば!!!!うわあああああ!!!」


半狂乱になりながら、同じような言葉を叫ぶ。

目から涙が馬鹿みたいに出る。頭が痛い。


「……。」


白髪はそのままわたしの方にも

手を伸ばす。


「っひ」


本能が嫌がる。

その手から逃げようとしたがる。


「あ……あっち行け!人殺し!人殺しっ!!!」


「……。」


白髪は、ただわたしを見下ろすばかりで

言葉を発さない。

ただ、虚ろにこちらを見るだけ。


いや……意味わかんない……どうしよ……嫌……。


「た、たすけて……誰かぁ……!!!」


ガタガタと震えながら、後ろへ下がる。


腰が完全に抜けてしまった。


足が動いてくれない。


たすけて……たすけて……!!!




「紗綺!!!」


すると、そこへ聞き覚えのある声が聞こえてくる。

その声は走る音へと変わり、こちらに近づいてくる。


「紗綺!!!無事か!?」


「なーちゃん……っ」


なーちゃんは走ってくるなり、

わたしのことを白髪から守るように抱きしめる。


よかった……なーちゃん、生きてた……。


「てめぇ……!混乱の主はてめぇか!?」


なーちゃんは白髪を睨みつける。

睨みながらもわたしのことを

抱きしめたまま離さない。


「……お前ら、は」


白髪が何かを言う。


その声は、虚ろなトーンだが

何かを確かめたがるような声だった。


「……あ゛?何が言いてぇんだ?」


なーちゃんは白髪に掴みかからん勢いで

白髪に凄んだ。


やめて……なーちゃんまでグチャグチャになっちゃう……やだっ!!!


そのまま、白髪は私たちに向けて

手を伸ばし始めた。


「____っ!!!」


いやっ、死にたくない!!!!


そのままわたしはなーちゃんの腕の中で

目を硬く閉じた。












……あれ?

なんにもなんない……?


なーちゃんに抱きしめられたままの体勢が

10秒間以上続いた。


おかしい……白髪に触られそうになったはずなのに

なんにもなってない。


「……?」


「なーちゃん……、

なんで私たち外にいるの……???」


「わかんねぇ……けど、生きてはいるぞ。」


未だに涙が止まらない

パニック状態の私の頭を撫でてくるなーちゃん。


どうやら、

破裂して死んだり、暴走した生徒に殺されずには

済んだらしい……。


しかし、何故ここにいるんだろう?

なんで……


「ったく、なんだよ一体これは……

!!!紗綺伏せろ!!!!!」








なーちゃんが私を押し倒して

地面に伏せる。


潰されてぐぇ、となりながら

「何をするんだ」と怒鳴ろうとした瞬間、



目の前がピカリ、と光った。




そして次の瞬間には

校舎の無数の箇所から、爆音と火花が散らされた。


離れた箇所にも破片や火花が飛んでくる。

それらの塵が容赦なく、

伏せている私たちにも降りかかる。


「……うそ」



「私の……学校が……」


なーちゃんに押し倒された状態で

目に映ったものは、

炎が轟々と燃え盛る校舎の姿だった。

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