独白-1
狭い鳥かご。
それが生まれてすぐに私が見た世界だった。
他に助けを求めても、誰も救ってはくれない。
鈍い音、痛み、真っ赤な水。
それらは鳥かごの外で言う「暴力」であることをまだ知らなかった。
辛くは無かった。
でも意味が分からなくて、何処か気持ちが切なくなった。
周りの人間はいない。
言っても誰も救っちゃくれないから。
私は毎日耐えた。
耐え続けた。
そんな、ある日だったでしょうか?
________ぐしゃり。
その瞬間に、私に振る暴力の雨はピタリと止んだ。
そして、その時始めて私を殴っていた存在が
私の「おとうさん」であることを知った。
不思議と、悲しさはありませんでした。
私がおかしいのか、周囲が異常なせいだったのか。
もうとっくに壊れた私に分かる訳ありませんでした。
「さぁ、おいで」
その子は私よりも一回り小さい男の子でした。
何でこんな所に子どもがいるのだろう?
少し違和感を感じましたが、その時の私はそんなこと気にもせず、
その子の手を取って歩き出した。
歩いている最中、足の裏に生暖かく、しかし冷たいものがベタベタとくっついたが、
私も男の子もただ前へと進んでいった。
「大丈夫だよ、信じて」
男の子は私に優しく声を掛ける。
その声は本当に気持ちが落ち着くような声だった。
私は、彼のこの声が最後まで好きだったのかも知れない。
いや、好きだったのだ。
だから、彼を信用してしまった。
彼に、心を許してしまった。
散々歩いた末に、ようやくたどり着いた先にある
大きな扉を開けると、光が見えた。
本の中でしか見たことが無い、輝かしい光。
きっと、きっと私は
生まれてくるんじゃなかった存在だったのかもしれない。
実の親にもゴミ以下の扱いを受けていたんだもの。
だけど、
彼は私に「どんな風でも生きて」と言ってくれた。
____________________私はこの日から、
「人」として「生きていた」のでした_____。