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召喚の前に

真っ白な空間で目を覚ました。

「ようこそ異世界からの来訪者たちよ」

親しみやすそうな笑顔の女神様から歓迎のあいさつを受ける。

周囲を見回すと僕のほかに顔は見えないが3人、この空間にいるようだ。

自分がなぜここにいるのか、ほかの人は誰なのか、

状況が理解できないままだったが、女神様の話をぼんやりと聞き続けた。


僕の名前は星月ほしずき かなで

ある日、学校から家に帰ってくると同時にこれまでにない眠気に誘われた。

壁にぶつかりながらふらふらとした足取りでベットまでたどり着くと、

糸が切れたかのようにベットに倒れこんだ。

うん、思い出してもなぜここにいるのかわからない。

「それでは、今からあなたたちに能力をあたえましょう」

その女神様の言葉に僕の意識は現実に引き戻された。

えっ?能力もらえんの?ほんとに?

僕は先ほど考えていたことも忘れ、内心うきうきで女神様の話に聞き入った。

能力は個別に与えられるらしく、女神様の案内で周囲を見回すと人数分の扉が用意されていた。

扉を開け中に入ると、ほどなくして黒い翼の女神様が目の前に現れる。

「さて、それではあなたに能力を与えましょう」

やった!!と声を漏らしそうになったが、結果的に声は出なかった。というより出せなかった。

えっ、なんで?と困惑していると

「ここではあなたたちは声を出すことはできません。というか最初に言われていたはずですけどね」

正直能力の話以外ほとんど聞いていなかったため、笑ってごまかそうとしたが、

不意にかけられた言葉に表情が固まってしまった。

「あなた、かなりかわいい顔してるけど、本当に男性なの?」

確かに女の子っぽい顔もしているし、声も女の子っぽい声だけど僕は男です!

と思っていると

「いや、わかってはいるんだけどねぇ?それでもかわいすぎない?」

と言葉を返された。どうやら思考を読まれているらしい。

別に褒められるのはうれしいんだけど、どうせならかっこいいって言われたかったなぁ。

「そうねぇ。じゃああなたの能力はこれにしましょうか」

じゃあ?じゃあって何?まさか今のやり取りで能力が決まるの!?

「そうよ。っていうかこれも言ってたはずよ?ちなみにあなたの能力は『擬態』と『男の娘』ね」

あんまり強く聞こえないんだけど!?もうちょっと強そうなのがよかったんだけど!?

「そんなことないわよ?『擬態』は魔力量次第でいろいろできるのよ?」

じゃあ『男の娘』は?

「着る服次第で魔力量が上がるの」

素で上げるのはだめだったの?

「それじゃあおもしろくないでしょう?」

なんだこの女神・・・

「ちなみに女性服限定ね?」

・・・えっ?

「可愛かったり綺麗に見えると効果が上がるわよ」

・・・えっ?

「それじゃあ時間になったら呼ぶからそれまで能力の練習でもしててね」

そうして女神はこの部屋から消えた。

・・・えっ?


能力を使っていてわかったことがある。

『擬態』は今の僕の魔力量だと自分の姿を相手に誤認させるだけらしい

が、込める魔力を増やすと実体化するらしい。

この空間だと僕の持っている実際の魔力量より多くの魔力を使うことができるらしく、

様々な武器や服が置かれている。

そして常に自分のステータスが数値で見えている。

今の僕の姿は屈強そうな頭、骸骨のような胴体、タコのような触手の腕、

カラスのような足という異形の姿をしている。

次に『男の娘』、これは思っていたより効果があった。

近くにあった着ぐるみのような服を着てみると30だった魔力量が150にまで上がっていた。

この服は魔力を120上げるらしい。ほかの服も着てみたがこれが一番効果があった。

すべて試し終わったときには抵抗感もあまりなくなっていた。

そうこうしていると、

「送り出す準備できたから・・・って何その姿!?」

そう、今の姿は異形が着ぐるみのような服を着ているというなんとも形容しがたい姿をとっていた。

「せめて人として認識される姿をとってくれない?」

・・・とりあえず元の服に着替え、今の頭に合うような体に擬態する。

やっぱりかっこいいって憧れるよね。

「それでいくのね?じゃあ送り出す準備ができたから元の部屋に戻って」

僕は元の部屋に戻るため扉を開けるとほかの三人はすでにそろっていた。

しかし顔は見えないままだった。

「全員そろったわね。それじゃあそろそろ送り出すわよ」

最初に会った女神様にそう言われると足元に魔法陣が現れる。

やっとだ・・・やっと僕の第二の人生が始まるんだ。そうして僕の体は光に包まれた。

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