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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

人民革命令嬢-婚約破棄された真っ赤な悪役令嬢の民主化闘争-

作者: 神奈いです

・小説を書くのに疲れたので、休憩のために小説を書きました。

王国の主要な貴族、令息令嬢が集まったその大事なパーティで、突然それは起きた。


「マッカナ=サヨーク公爵令嬢!君との婚約は破棄させてもらう!!」



目の前にいるのはマッカナの婚約者様。


このオーコック王国の皇太子、ハンサム=ド=オーコック様だ。

煌めく金の髪に碧色の瞳。年頃の女性が百人いれは百人が見惚れるほど整ったその顔は敵対心に満ちていた。マッカナもその一人だ。婚約できた時は嬉しくて死ぬかと思った。


それなのに、破棄?



「これまでヒーメ=カヨーワイ男爵令嬢に行ってきた、数々の嫌がらせ、虐待に加えて、先の暗殺未遂は、たとえ君が公爵令嬢としてももはや絶対に許されぬ!犯人は君だろう!」

「はい」


「いくらシラを切ろうと証拠は……」

「いえ、ですからやったのは私と私の手の者です」


「………」

「ハンサム殿下!ついに認めました!逮捕、すぐに逮捕してください!」

黒髪黒目のか弱そうな娘が王太子にしなだれかかる。



私は改めて怒りを感じた。

「王子、あなたが似合うのは私しかありません!王国一の良家の貴族の私しか!そのような元平民の娘に騙されないでください!」


「もう騙されないぞ!私が結婚するのはヒーメだ」

「だましているのはその元平民の娘です!どうか目をお覚ましてください!」

「さっさと逮捕せよ、衛兵!」



王子の声とともに、衛兵たちが迫ってくる。



やはり罠でしたか……私は手早く胸元から取り出した保護メガネをかけると、手元の起爆装置をひねって通電させ。




ドカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンンッ!!!!



パーティ会場を煙と閃光で満たした。






「目がっ!?目がああああ?!」

「耳!?耳が聞こえない!?なんで聞こえないんだ?!」



そして、私は巻き付けてあったスカートを外すと、ズボン姿になってベランダに設置してあったロープを伝って脱出しました。




ロープの先にはオーコック革命党の同志たちが待っています。



「……サヨーク書記長閣下、お迎えに上がりました」

「行きましょう」




私は同志の用意した自動車に乗り込み、王都からの脱出を図りました。



「残念ですが、すべての策は尽きました。最後の作戦を発動します」

「おお、ではついに!」

「ええ、革命です」


 ― ― ― ― ―


ハンサム王太子による突然の婚約破棄と、ヒーメ男爵令嬢との婚約宣言は、貴族議会で大混乱を巻き起こした。


保守的な貴族たちの間で革命かぶれのサヨーク公爵令嬢の人気は無かった。サヨーク公爵家は令嬢の暴走により農地や財宝などのほとんどの財産を領民に配ってしまい、農奴も全員解放するなどして、公爵領を実質的に解散。唯一残ったいくつかの工場と、血筋と教養以外で貴族と呼べるものは残っていない。あんなものを貴族と呼べるか、と保守的な貴族たちは思っていたが、だからといって男爵令嬢と結婚していいわけではない。

適齢の侯爵令嬢や伯爵令嬢などいくらでも選べるのに!できれば俺の身内から!


喧々囂々の貴族議会の反対に対し、王太子は病床にある国王が認めたと言い張って婚姻を強硬可決してしまう。

これにより、王太子は貴族たち率いる保守勢力の支持を失ってしまった。


マッカナは悲しそうに呟いた。

「……この程度のことはわかってるはずなのに、全部あの小娘のせいね」

「いや、ハンサム王太子がアホなのでは……?」


党員のツッコミを無視して、マッカナ=サヨーク公爵令嬢、あらためマッカナ革命党書記長は労組による全国一斉ストライキ、ゼネストの用意を指示した。




 ― ― ― ― ―


「おのれ、下衆な民衆どもが!!」



ハンサム王太子とヒーメ男爵令嬢の結婚式の準備が進む日、全国の民主派8政党が合同して国王独裁の中止と、国政への平民の参加、国政選挙の導入などの民主化要求を掲げて一斉にストライキ、デモを展開した。


王太子はさっそく、軍隊にデモの鎮圧を命じたが、保守派が支配的な軍部はこれに反発。警備は強化したもののデモ隊とは戦わずに放置。


ヒーメ男爵令嬢は悲しそうにハンサム王太子によりかかって頼み込んだ。「これはサヨーク公爵令嬢の策略です。近衛兵をだして反乱者をやっつけてください」と。


ハンサム王太子が近衛兵に出撃命令を出すまで、そう長くはかからなかった。



 ― ― ― ― ―



王太子の強硬策は裏目に出た。

近衛兵が民衆に発砲を開始したことに、デモ隊は激高。数の少ない近衛兵に逆に襲い掛かって撃退してしまった。


その勢いでもともと平民の強い工業都市は民主派政党と労働組合による人民議会が掌握し、民主オーコック臨時政府の樹立を宣言。王太子率いる国王政府に和解を呼び掛けた。実質的な降伏要求である。


「王太子殿下……平民たちは私を殺すって……」

「ヒーメを触らせるものか!貴族たちをまとめ上げて反撃する!」


王太子は残り少なくなった近衛兵を率いて、組合と民主政党に支配された王都を脱出。保守派の多い地方に脱出し

た。


王太子は「貴族諸賢よ、名誉ある軍の将軍たちよ。いまこそ不埒な反乱を行った平民どもを討伐せよ!」と貴族議会と軍に協力を要請したが。


貴族議会はこれを拒否。軍も自国民を攻撃できないとし、あくまで平和的解決を要請した。




「サヨーク書記長閣下、保守貴族党から、王権に制限をかけるなら、限定的な民主化を認めてもよいと回答が」

「貴族は王太子を見捨てたわね。これで詰んだはず……、お願いだから最悪の手だけは打たないで、王子……」


マッカナ=サヨーク書記長は民主派政党をまとめ上げ、保守貴族党と取引を成立させていた。評判は腐り果ててはいたが公爵令嬢であるので貴族たちが求めるのが自分たちより偉い王権の制限であることはわかっていた。逆に平民は心から見下しているので政治ができるなど最初から思ってすらいない。なので貴族に名誉職を残しつつ選挙をなんとか認めさせる取引を行えたのだ。


しかし、王太子は最悪の手を打ってしまった。


 ― ― ― ― ―



「サヨーク書記長閣下!!お、王太子が……国王政府がオソローシャ共産主義連邦と軍事同盟を締結!!仲介したのはヒーメ男爵令嬢だとか……」

「あああああああ、よりによってえええええ?!!!」



マッカナは知っていた。元平民のヒーメがじつはオソローシャ共産主義連邦から送り込まれたスパイであることを。


オソローシャ連邦が民主化の遅れたオーコック王国の民衆を扇動して共産革命を引き起こし、連邦に組み込む策動はもう十年も前から続いていた。だからマッカナは民衆の人気を得るために公爵領を解散。オーコック革命党を結成して、オソローシャの傀儡であるオーコック共産党を攻撃し続けていたのだ。


ゲバルト棒をもってつねに武力闘争の正面にたつ公爵令嬢の姿は次第に民衆の人気を得ていき、逆にオーコック共産党の人気は低迷。これでオーコック王国での共産革命の芽はつぶしたと思っていたところ、内通者からヒーメがスパイだという情報がもたらされた。


ヒーメ男爵令嬢は完璧なスリーパー、埋伏の毒であり、直接的な証拠は一切残さなかった。

しかしマッカナは状況証拠のみから彼女を黒と断定したのだ。


これは革命党内からも異論がでた。表面上はただの男爵令嬢なのだ。


しかし、ついにヒーメは正体を現した。

すでにオソローシャ赤軍が続々とオーコック領内に進軍を開始しているらしい。


革命党員は恐る恐るマッカナに問いかけた。

「閣下、なぜヒーメが黒だと知っていたのですか」

「乙女の勘よ」


 ― ― ― ― ―


オソローシャ赤軍は地を埋め尽くさんばかりの大軍で、次々とオーコックの主要部を占領していく。

国際的に認められた国王政府の外交結果であり、国際連盟も制裁できず、「平和的解決」を呼び掛けるだけであった。




「立て、オーコックの子らよ!」

「立て、オーコックの労農人民よ!」

「立て、オーコックの名誉ある貴族たちよ!」

「立て、オーコックの戦友たちよ!」


亡国の危機に、ついに王太子の国王政府を除く、貴族、軍、民主政党、労働組合は反オソローシャの連合を結成することに同意。


オーコック祖国解放統一戦線が結成された。


長く厳しい戦いが続いたが、オソローシャ赤軍はオーコック国内で民衆の支援を得られなかった。民衆の人気がどん底の王太子と組んだからである。


巨大な国力をもつオソローシャとはいえ、民衆の支援のない遠征でだんだんと補給に苦しんでいくことになる。



それをみたマッカナはわざと補給物資を前線の都市に集中し、その情報を王太子に流した。

王太子から補給物資の情報を得たオソローシャ赤軍が、その都市に殺到したとき。


オーコック祖国解放統一戦線の包囲が完成した。



数日の戦いで、オソローシャ軍は戦死数万、捕虜十万以上を出し、多数の戦車、大砲を遺棄することになった。

それらの兵器を手に入れたオーコック祖国解放統一戦線は一気に攻勢にでて、ついに国境からオソローシャ軍をたたき出した。


そして、国連代表団を呼び出し、なんとか講和にこぎつけたのだ。


ハンサム王太子、ヒーメ男爵令嬢は混乱に巻き込まれ戦死したと伝えられた。


オーコック祖国解放統一戦線はオーコック民主政府を樹立。貴族と平民が参加するオーコック共和国を結成した。


しかし、そこにマッカナ書記長は居なかった……。




 ― ― ― ― ―




オーコック共和国国内。マッカナの隠し拠点の一つ。


誰も近寄らない地下室で、ヒーメ男爵令嬢の叫び声が響いた。


「なんで、なんで、なんで、なんで。なんで貴方はそこまで私の邪魔をし続けたの!証拠なんて無かったはずよ!」

「……証拠?証拠はあったじゃない」


「どこ?!どこにあったの?!絶対に何もばれてなかったはずよ?」


泣きながらのヒーメの問いかけに、マッカナは拳銃に弾を込めて、あっさりと言った。

「だって、私の王子様に近寄るメスブタなんですもの。黒でしょ」


タンタンタン……


ヒーメだったものが、赤い血の海に沈む。



そして、それを見たハンサム王太子が叫んだ。


「ひいいいいい?!マッカナ!僕が、僕が悪かった!いや、ヒーメが悪いんだ!そいつが騙していたんだ」

「私は最初からそう申し上げていました」


マッカナはまるで豚を屠畜しただけと言いたげに淡々と拳銃に弾を込めなおす。


「……信じなくて悪かった、すまない!だから命だけは……」

涙やいろんなものを垂れ流しながら王太子が懇願する。


「でも、戦争になって大勢が死にましたよ」

「償う!何でもして償うから、頼む!許してくれ!!」


「そうですね。償いと、ここまで頑張った私にご褒美が必要だと思います」


タンタンタン……

「ぎゃあああああ!?」


そして、地下室に再び銃声と叫び声が響いた。



 ― ― ― ― ―




オーコック共和国のとある農村。


今日もオーコック共和国は平和だった。オソローシャの大軍を跳ね返した国民の戦意と愛国心に、他の国は火傷を恐れて手出しをしてこなくなった。


議会では貴族党と平民党がいつものグダグダした討論を続けているが、選挙でケリがつくだけ戦争やテロよりはましである。


「ふう、たくさんトマトが取れたわね」

マッカナは農地で気持ちのいい汗を流していた。


晴れている日は農作業、雨の日は家で読書。そんな悠々自適な生活をしている。

そして、周りの村人はあまり近寄ってこない。


なぜならば。




「あら、私の王子様♪逃げ出しちゃダメよー?」


家のドアから這って逃げ出そうとしたハンサムをマッカナが掴み上げて、ベッドに叩き込む。


「それとも私の顔を見に来てくれたのかしら?」

こくこくこく……ハンサムが必死でマッカナに頷く。


「嬉しい……、ごめんなさいね。だって王子様を食べさせるためには農場に行かないとダメなの……寂しいけど我慢してね?」


マッカナはハンサムを優しくなでた。


「王子様、幸せ?私は幸せよ?だって、最初からあなたの外見が大好きなんだもの」



ハンサムは罰を受け、マッカナはご褒美を手に入れた。


そして周りの村人はあまり近寄ってこないので、

二人は二人だけでずっと農村で暮らしました。


怖いので。


・連載中の「董卓の娘」もよろしくお願いします。バナーからどうぞ!

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― 新着の感想 ―
[一言] んーっ、微妙。最後は怖いけど、共産革命よりはマシかなぁ。ユーゴスラビアのチトー革命がベースなのかな。
[良い点] まさに残念埋伏の計....
[良い点] 面白いのに誰も感想を書いていなかった。どこにでもスパイがいるのが流石おそロシア。
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