序幕 改め
これが走馬灯か…
私は今、自分の人生を目まぐるしい速度で俯瞰している。
私が『夏木華蓮』として生まれてからのダイジェストなストーリーを…
「いつも笑顔を絶やさないように!」両親から教わった一番印象深い言葉。
それがいったい何時だったかは覚えていない、ただ物心ついた時にはこの記憶は私の脳内に深く刻まれていた。
そしてこの教訓は私にとって良い結果につながる事が多かったのでいつもにこにこするように心がけている。
おかげで小学校、中学校は「周りを明るくする子です」という評価ばかりで良い友人や恩師に巡り合えた。
「かれんちゃん、かれんちゃん」いろんな人たちからそう呼ばれ親しまれてきた。
成績はすこぶるよく高校、大学受験も人並みの苦労で第一志望を通過。
身長はやや低めだが明るい性格と小柄な見かけは人受けが良く異性に好かれる事も多かった。
「愛嬌がある」とか言われるのが一番うれしい、そう言われると笑顔の甲斐もある。
他は在学中、読書に夢中になり歴史中毒者のように資料を読み漁った事を除けばいたって普通の学生時代を過ごしたと思う。
就職も大手の企業に内定をもらい「さあ人生これからだ」という時にこの始末。
てっきり自分は順風満帆な人生を歩んでいくかに思えた…
だが、現在の私は『死』の寸前だ。
目の前から迫ってくる巨大なトラック、運転手の顔もはっきりと見える。
『神』がいるのなら問いたい、「なぜ?」と。
最後の最後になってこの状況がどうにかなるものではない事はわかっている。
ただもう少し生きたかったな、ダメだとは思っているけどお願いしてみよう。
「神様、私が本来生きるはずだった時間をせめて半分だけでも返してください、それさえ叶えていただけるのならば他はどうでも構いません、お願いします。」
それだけを強く願った。
聞いた話だと、痛みを伴う『死』は脳が痛みに耐えきれないと判断すると意識を切り離すらしい、気を失うという現象だ。
それこそブレーカーを落とすような感じで「ブツリ」と意識が途切れるという。
ちょうどこんな感じに…
「ブツリ」-------