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将来の夢  作者: 山内海
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1-2 「マインクラフト」

 

 私が試験と思う、一連の夢について記する前に、夢という物に関する認識に、ゲーム、と云うかコンピュータープログラムを引き合いに出す理由について語っておきます。


 夢を見ると言う場合、『見て』いるのは、何が、どのような器官が『見て』いるのでしょうか?

 脳の内部に眼のような物があって、像が浮かぶのでしょうか?  

 例えば『ドラえもん』を皆さんが思い浮かべるとき、それは『見え』ますか?

 自分の視界に二重写しで見えますか?

 多分そうではなくて、思い浮かべるときには、頭の中の『画像フォルダー』から『ドラえもん』を引っ張り出してきているのではないかと思います。

 思い浮かべていても、『見えて』はいないのでは無いでしょうか?


 様々な人が、それぞれ同じドラえもんを、各々の目で見たのであれば、光の加減、見た人の視力等で、多少の差異こそあれ、似たような像が実を結ぶのでしょう。

 

 それと同じ信頼性を、思い浮かべた場合にも求めてよいものなのでしょうか?


 あなたの『見えた』ドラえもんは、最近の劇場版の輪郭がフニャフニャした奴ですか?

 テレビ版の馴染みの奴ですか?

 漫画版の縦縞模様?  

 連載初回の頭がやや小さい奴?

 日テレ時代、黒歴史の奴ですか?


 それぞれの方の頭の中に画像フォルダーがあるとして、その中に収まっているドラえもんは多分違います。


 もしも、頭の中の像を、皆が正確に描くことが出来たとして、それぞれ描いたドラえもんを見せ合ったら、そこには千差万別のドラえもんが描かれていることでしょう。


 ドラえもんなどを引き合いに出さなくても、例えば、『先生』とか、『嫌な上司』とかを思い浮かべたとして、それらは皆さん違うのは当たり前で、同じ人が思い浮かべるときでさえ、その時その時で違うでしょう。


 仮に、こんな夢を見たとします。

 

 札幌在住の私が、

 『創成川』を渡って、

 『札幌テレビ塔』に登り、

 『会社の社長』の話を聞く夢。


 東京在住の学生が、

 『隅田川』を渡って、

 『東京スカイツリー』に登り、

 『校長先生』の話を聞く夢。


 大阪在住の子供が、

 『道頓堀川』を渡って、

 『通天閣』に登り、

 『おじいちゃん』の話を聞く夢。


 それぞれの人が、

「どんな夢を見ましたか? 」

 と、訊かれて、私は、

「社長に説教された夢」

 と、答え、

 東京の学生は、

「スカイツリーに登る夢」

 と、答え、

 大阪の子供は、

「道頓堀を渡った夢」

 と、答える。


 もしも、夢の中の映像が、網膜に映った対象を見るのとは違い、それぞれの脳内にある画像フォルダーにある像を、それぞれの役目に応じて配役させていたら。


 私にとっての『塔』は、札幌テレビ塔で、テレビ塔の近くにある川は『創成川』で、威厳のある人は『社長』だったので、その役割に応じて脳内が勝手に割り振り、夢として編集しているのではないか?

 さらに、夢を記憶する場合、何を覚えているのか、何が記憶に結び付くのか個人差があり、仮にすべての人が同一の体験をしていたとしても、どのようにその体験を記憶するのかは、それぞれ個人によって違ってくるのではないかというのが私の考えです。

 

 実は私も、東京の学生も、大阪の子供も、

 『川』を越えて、

 『高い塔』に登り、

 『威厳のある人』の話を聞く。

 という同じ夢を見ていたとしたら……。


 

 ここで突然ですが、『マインクラフト』というゲームを用い、夢の構造の仮説を述べたいと思います。

 マインクラフト、皆さんご存じでしょうか?


 PC、スマホ、コンシュマー機など、様々なプラットフォームでリリースされた人気作なので、プレイされた方も多いと思います。

 

 未プレイのお方のために簡単に説明させていただくと、マインクラフトというゲームは、箱庭のような世界で、樹を伐ったり土を掘ったり家を建てたり道具を作ったりして、ゾンビと戦ったり畑を耕したりするゲームです。

 


 デフォルトの操作キャラは青いシャツを着て、無精ひげを生やしたオッサンです。

 とてもじゃないが思い入れ出来るようなルックスではないが、ご安心ください。

 課金すれば可愛いキャラにすることも出来ます。

 操作キャラは、頭、胴体、手足がそれぞれ牛乳パックみたいな直方体を、人の形に組み立てた、まるで小学生の工作みたいな構造です。

 ゲームでは、この牛乳パックの柄に当たる部分、外側の外皮を『スキン』と称し、デフォルトでは頭の部分に鬼瓦権造みたいなオッサンの絵が張り付いています。

 このスキンを色々変えて、外見を変えることができるのです。


 マインクラフト以外でも、キャラクターの衣装や外見をダウンロードコンテンツなどで後々変更できる仕様は、ポリゴンを用いた昨今の3Dゲームでは、結構色々な作品で良くあるサービスです。 


 残念ながら変更出来るのは外見だけで、動きは元のままな事が多く、戦士が手斧で敵をなぎ倒すゲームがあったとして、その操作キャラを、可憐な少女に変更できたとしても、その乙女が、元々の戦士の動きなので、ガニ股で走り回り手斧を振り回す、残念なプレイ映像になってしまいます。


 マインクラフトでは、キャラクターの外見以外にも、立方体を積み重ねて作られたような箱庭世界の柄、(デフォルトでは普通の木とか土とか岩とかです)を『テクスチャー』と称し、(コンピューターで用いる3Dポリゴンの「柄」も一般的にテクスチャーと呼びます)そのテクスチャーも変更が可能で、『お菓子の世界』とか『機械の世界』など、プレイフィールドの外観を変えることも出来ます。


 私はコンピュータープログラマーではないので、簡単にしか説明できませんが、『キャラクターの形』『キャラクターの柄』『キャラクターの動き』『フィールドの形』『フィールドの柄』などがそれぞれのコンピュータープログラムの領域に記録されていて、 例えば『A』というキャラクターを『B』という領域に配置して、『C』の動作をさせる、などという命令がコンピューター内でされているのだと思います。

 その『A』というキャラクターを表すプログラムの部分を『A'』なり『A''』なりに置き換えることで、後から外観を入れ替えることが可能なのでしょう。


 何でこんなことを細々説明しているのかと言うと、私は現在札幌に住んでいますが、母方の祖父母の家は『有珠』にありました。

 あの『有珠山』の有珠です。

 2008年夏にサミットが開催された洞爺湖と、ちょうど有珠山を挟んで反対側にあります。

 有珠山は二、三十年毎に噴火し、1977年の噴火では北海道内の119市町村に火山灰が降り注ぎましたが、祖父母の家は余りにも噴火口に近く、大して降灰は無かったそうです。


 既に祖父母は亡く、家は廃屋となっています。

 祖母の死後、母の兄弟達が、祖父の扱いや相続などで揉めて、整理が出来なかったのです。


 私は祖父母が好きで、小学生の頃から夏休みと冬休みはそこで過ごしました。

 中学生高校生になってもそうしました。

 二十歳を過ぎてアニメ会社を退職し、フリーターをやっていたときも続く休みがあったら通っていました。


 祖父母の死後、揉め事もあり、すっかり有珠の家には近寄らなくなりましたが、祖父母の家で過ごす夢はよく見ました。


 しかし、今にして思えば、その夢の中は本当に祖父母の家だったのでしょうか。

 確かに間取りや、家具などは祖父母の家の物だったはずです。

 

 でも、言い換えれば間取りや家具以外、そこが祖父母の家と云える物がないのです。


 毎回夢の度に訪れて、毎回、夢の祖父母の家は何かが違うのです。


 私は何故、その夢の中の家を祖父母の家だと思ったのでしょうか。

 それは祖父母の家の家具が配置されているからです。

 祖父母の家の家具が有るから、そこを祖父母の家であると思ったのです。


 夢の法則は甚だ謎です。

 夢の世界と云うものがあって、住所があり、移動出来るものなのか?

 全く判りません。


 夢を映画のような映像として考える。

 その認識が、夢というモノの理解を妨げているように思えるのです。

 前段『序』にて、『夢の中では脳が知り得ること以外は起こり得ない』という残念ながらどなたの言葉かは忘れましたが、その様な説を紹介しました。

 

 その、『知り得る()()』と云う部分をちょっと譲歩していただいて、以下のように変更してみたら、夢への認識は変わってくるのでは無いでしょうか?


『夢の中では脳が知り得るイメージ(スキン或いはテクスチャ)以外は表現し得ない』


 繰り返しますが、私が現在も見る、(残念ながら悪夢に分類しています) 祖父母の家で過ごす夢は、本当に祖父母の家で過ごす夢だったのでしょうか?

 

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