4 絶望の
【ダンジョンボスを倒しました】
【チュートリアルダンジョンの踏破を確認】
【戦闘に用いた武器を確認します】
【確認中………………完了】
【ダンジョンコア……98.0%】
【素手……2.0%】
【最も使用された武器はダンジョンコアです】
達成感のある疲労と、思い出したように痛み始める身体に、秋斗はゆっくりと倒れ伏した。
ひんやりとした床の感触が、闘いで火照った身体に心地良い。
睡眠不足だったのもあってか、すぐに瞼が落ちた。
【チュートリアルダンジョン クリア報酬】
【『”ダンジョンコア”使い』ジョブを獲得します】
【ERROR】
【ダンジョンコア使いは一覧にありません】
【類似職業を検索】
【職業『ダンジョンマスター』を獲得します】
【職業『ダンジョンマスター』を昇格します】
【職業『魔王』を獲得します】
【各種ステータスが増大します】
【身体に異常を検知しました】
【HPを全回復します】
【スキル『案内人』を獲得します】
2階では、スマホの画面に災害時の一斉送信メールが浮かび上がり、窓の外には異形の怪物が闊歩していた。
悲鳴や怒号、盛大な破砕音が閉ざされた窓から微かに響いていた。
▽
「ん、う……」
喉乾いた、だるくて眠い、寝起きなのに疲れた、最高に不快な目覚めだった。
倦怠感を覚えるほどに眠りこけたはずが、窓の外は未だ明るかった。
iPadの電源を入れる。
『5月6日(日) 08:34』
……丸1日寝ていたということか。
ギュルルル、と腹が鳴った。
寝ていたとはいえ一昨日の晩から何も食べていないのだ、腹が減るのも仕方ないだろう。
意図せずして2晩熟成されたカレーを温め直す間にテレビをつける。
画面の中央に⟲が浮かんで再生が止まったユーチューブを消し、テレビニュースをつけた。
『……です。自治体の指示に従って落ち着いて避難してください』
画面には誰も居なかった。
テレビには放送局の名前とロゴが青い背景に浮かぶだけの画像と、ただ一定の音声がいつまでも流れていた。
何かの災害……というか、ゴブリンが出たんだろうな。
iPadを見ると、アンテナマークは問題なく3本立っていたので、ツイッターを開く。
グーグル先生じゃなんて調べればいいか分からないからね。
ニュースはツイッターかニュースアプリを見るのが1番だ。
世間一般でゴブリンがなんと呼ばれているかが分かればグーグルで調べられる。
グーグルかなにかで調べればより正確な情報やより多くの情報が手に入る。
『落ち着いて避難してください。敵対不明生物の襲撃に注意してください。各自治体の指示に従って────』
チャンネルをいくら変えても、まともに映るものはなかった。
ゴブリンが出てから1日以上が経っている。
1日経てば、ある程度落ち着いてきてSNSを開くタイミングもあったろう。
特に避難初日の消灯前とか。
『なんか外にデカい犬いる!!』
『ゴブリン倒したった』
『警察と自衛隊何してんの??』
『巨人が暴れてるんで立体機動装置の至急オナシャス』
『スライムが家とかしてるんですが被災者生活再建支援法適用されますか?』
余裕かコイツら。
”1日”になってるからモンスター発生間も無い頃のの投稿だな。
『ゴブリン』とか『モンスター』とか、思いつく限り色々なフレーズで検索すると、出てくる出てくる。
パッと見ただけでも北海道、大阪、宮城、福島、大分、香川……
色んなところで○○の△△っていう避難所に居るんですけど色々辛いよ自衛隊助けてみたいなツイートが数多く見つかった。
「日本中……あ、いや、世界中で起きてるのか?」
『monster』『creature』『alien』『slime』『dragon』…………
色んなファンタジーワードを英語で検索すれば、出るわ出るわ。
プルプル震えるスライムの動画、空飛ぶ悪魔に囲まれ天を衝く異様な巨塔、やっぱりゴブリンもいるし、オークも居た。
「うわ、なんだこれ……デカいってレベルじゃないぞ……」
『dragon』検索で引っかかった1つのツイート。それに添付されてある動画。
ドラゴンが空を旋回し、自由の女神像に降り立った。
アメリカニューヨーク港内、リバティ島に立つ巨像、正式名称”世界を照らす自由”。
その全長は、台座50mに本体40m。
それを踏まえて見ると、そのドラゴンはどう見ても全長20mはあった。
「ティラノサウルスよりでかいよな……?」
そして、問題はその後。
カメラが、突如何も無い空を写し始めた。
(なにか撮りたいものでもあるのか?)
音量を少し上げて、言葉を拾う。
ファッキンファッキンいう声に混じってLook!とかcoming!coming!という悲鳴が聞こえてくる。
雑音が酷い上に早口過ぎて普通の会話は聴き取れない。
単語を拾うので精一杯だ。
しばらくして、マイガー!マイガー!って怒鳴ってる撮影者が、ようやくソレに焦点を合わせた。
ソレは鳥のようで。
飛行機のようで。
しかし、近づくにつれ、その威容が明らかになるにつれ……
そのシルエットは、鳥ではなく、その両翼を羽ばたく姿は、明らかに航空機でもなかった。
羽の生えた爬虫類。
すなわち、竜だ。
……ソレが近づくにつれ、その存在を理解する程に。
…………人々は立ち止まり、絶望した。
全長数百mはあろうかという巨竜が、女神像を掠めて飛んで行った。
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