10 生存者
ふおおおおおおおおおっ!
すげぇ!
マジですげぇ!!(語彙力)
「ファイアーボール!」
ゴウッ!
ほんの少しの喪失感と共に、赤橙の火の玉が飛んでいく。
ドゴォ!
「これが魔法か……凄いな!」
まさか、自分が魔法を使う日が来るなんて。
プスプスと煙をあげる木を眺めて、そう呟く。
「……うりゃ!お、無詠唱いけた!」
《詠唱や魔法名の宣言はイメージの補填による現象強化の手法です。時間がかかる分威力が増します》
「八大地獄の第六、五戒を破りし邪見の者が堕ちる場所。焦熱地獄…………インフェルノッ!」
これは厨二病では無い、詠唱なのだ……と言い聞かせて、なんか言ってみる。
詠唱?”焦熱地獄”ってスマホで調べた……
ぼふっ!
先程サッカーボール大の火球が出現した場所から、黒の煙が吹き荒れた。
目に染みる。
《具体的なイメージのない詠唱はむしろ魔法の発動を妨げます》
「……デカい火なんか見た事ないからなぁ」
《他者の魔法を何度も見る事でその魔法名や詠唱と発動する現象が深く結びつきます》
「なるほど、魔法系の高ランクモンスターを召喚して魔法を見せてもらうのがいいかな」
属性は特異なものを除けば火、水、風、土、光、闇があるんだったな。
ユーチューブで爆発や竜巻の映像を見ておこう。
画面越しでも見ると見ないで想像の精度は大きく変わるだろう。
「って、こんなことしてる場合じゃないな」
圧倒的物量で敵モンスター共を押し潰す我が軍団を見て、俺はなんで自分だけ遊んでるんだろうと我に返った。
更に、魔法も使わず石を投げ続けるスケルトンメイジをみつけ…………
彼が魔法のスキルを持っていないことに気づき、【火魔法】をそっと返すのだった。
「えーと、頑張れ」
健気か、お前。
……しかし、うちの軍強いな。
個々の力量としては雑魚も多いが、その数を活かす連携で簡単に敵を倒している。
スケルトン達は恐怖心がないのか、味方が吹き飛ばされても次々と突撃していく。
「ははは…………圧倒的じゃないか、我が軍は」
スケルトンシーフから何か報告を受けたらしいジェネラルが、俺を向いて思念を発する。
(地上の敵を殲滅しました。また、第2層に繋がる階段を発見したとの事です)
「間違いないか?」
(間違いありません。実際に降りたところ、階下には森が広がり、オークや森狼が居たとの事です)
「広さは?」
(我が隊全てで探索できる程度の広さはある、と)
なるほどなぁ。
しかし、地下に森か。ダンジョンの”フィールド”と言うやつだな。
戦力はスケルトンだけで十分だろう。
万一ピンチになれば直ぐに戻れと命令して、地上で次の報告を待つ事にしよう。
「よし、行け。俺は地上に残る。ダンジョンコアを破壊しろ。ただし探索の続行が厳しくなれば即帰還だ」
コクリと頷いたスケルトンジェネラルを見送って、屋敷内の物色を始めた。
「まず”家”売却……無理か」
そのままは無理でも、素材にバラしたら売却できるという可能性はないだろうか。
(扉だけ売却……も、無理。靴も無理、と……)
やはり家の所有権が家の中の小物全てに及んでいるようだ。
家が家で無くなれば売却出来るかもしれないが……それではダンジョン化と変わらない。
「日本刀置いてあるって……」
最初に入った、道場みたいな建物の倉庫に薙刀やら日本刀やら槍やら、色んな武器が保管されていた。
全て実物。
試しに壁に振り下ろすと、壁が裂かれた。
こんなの模造刀では有り得ない。
カッコよかったのでその中から1つを引っ掴んで、激しい戦闘痕が残る板張りの道場を通り外に出た。
次は蔵。扉を外して中に入る。
蔵は2つあったが、気になるものはなかった。
「次……これが母屋か。時代劇っぽい感じだな」
道場は床がめくれていたりして危なかったから土足で入ったが、何となくブーツを脱いで家に入る。
中は普通の家だった。
トイレと風呂は何故か洋式だったが、他は全部和室。
和洋折衷な家ならよく見るが、今どき完全和式というのは珍しい。
和室でも扉に鍵をつけれるのかと感心しながらバキバキ探索を進める。
五輪書や兵法書が沢山置いてある部屋や漫画やラノベが置いてある部屋、女性の部屋っぽくて、下心は無かったけど箪笥を開けたら女性モノの下着がわんさか出てきた部屋やらを一通り回り終わって2階へ。
物置部屋を見て1階に戻り、最後にもう一度と下心は全く無いけど各部屋を探索し、ちょっと疲れたからと布団に横になって、下心は無かったものの罪悪感に駆られて家を出ようとした時。
2階に上がる階段の裏。
地下への階段がそこにあった。
なんで見落としたか分からないくらいに堂々と。
階段を下り、扉を開く…………
シュッ!!
その瞬間。右から刀が、正面から槍が、左側からは薙刀が繰り出された。
「なんだ、お前ら──」
が、ステータスの恩恵によって強化された秋斗はいとも簡単に左右の手でそれ等を掴み取る。
自分でも驚くような反射速度だった。
怒りに満ちた口調とは裏腹に、俺は内心歓喜で踊り狂っていた。
「──敵か?」
異変の後初めての生存者との遭遇だった。
読んでくださって有難うございます!
他の人初登場。
味方でしょうか?敵でしょうか?
とりあえずまた次回!
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