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第49話「王のいる城へ」

 魔王とアリスは一枚の金色のカードを手に城の入り口に立っていた。二人揃って高い城を見上げる。


「遂にこの時が来たな」


 魔王が感慨深そうに言う。


「そうですね」


 アリスがあっさりと返した。彼女は額に汗を浮かべている。親の仇との対面なのだ、無理はない、と魔王は口角を吊り上げると門の前にいる兵士の元へと歩いていく。


「これを」


 彼は兵士に緊急クエストの報酬として受け取った金色のカードを提示する。


「拝見します」


 そう言うと兵士は魔王の手からカードを取り手を翳すと呪文を唱える。


「『アナリシス』! 」


 カードから何かの情報を読み取ったらしく兵士の表情が変わった。


「これはこれは、緊急クエストを達成された方でしたか、どうぞお進みください」


 お客様を迎える仕草に言葉遣いでそう言うとその言葉を合図に閉ざされていた扉がゴゴゴと音を立てて開く。


「王様のいるところまでご案内いたします」


 門の側には一人の正装に身を包んだ三十代半ば程の男性が立っており門をくぐるとそう言って先陣を切って歩き始めた。広い庭を通り城の中へ入ると床に敷かれたレッドカーペットに幾つもの部屋の扉と大きな階段が目に入る。


「これは潜入したら王の所に向かうのに骨が折れそうだな」


 我の城と同じくらいだな、などと考えながら彼は口にする。突然のその場で捕らえられかねない彼の発言にアリスはギョッとしたようだが、案内人はそれをジョークと受け取ったようで笑って軽く流した。


「まさか、王様に何かしようとか考えてませんよね」


 アリスが不安気に囁き尋ねる。


「さあな、それは貴様の質問への王の返答次第だろう、そうではないか? 」


 魔王も囁き返すとアリスは俯いて黙りこくってしまった。男の後について螺旋階段を上りレッドカーペットを歩くと大きな扉の前にたどり着く。


「失礼ですが、武器はこちらでお預かりします」


 男性がそう言ったので魔王は黒剣を、アリスは短剣を預けた。


「確かに。それでは、中へどうぞ」


 そう言うとともに男は扉を開いた。金色の途端にシャンデリアに何人もの兵士が配置されている長い廊下、レッドカーペットに玉座と城の入り口よりも豪華な光景が広がる。玉座の間の光景を眺めながらも魔王とアリスは遥か前方にいる人物を目で見据える。アリスはまだ分からないようだったが、魔王には六十代程の丸い王冠を被ったふてぶてしい顔の男がはっきりと見えた。


 いよいよだ、遂にこの時がきた。と待ちに待った瞬間を迎えた魔王は生唾を飲み込むアリスの横で冷笑を浮かべながら前へと進んでいく。王はこれから彼が起こそうとしていることを知らずに呑気に、偉そうにふんぞり返っている。それが彼には愉快でたまらなかった。


 しかし、そんな彼にも予想外のことが起こった。彼とアリスが王まで数メートルの距離まで迫りアリスにも王の顔が見えたであろう距離まで接近した時だった。突如王が震えながら立ち上がるとアリスを指差して大声をあげた。


「き、貴様……間違うはずもない。勇者の娘だ! 何故貴様がここにいる! 皆の者! この者らを捕らえよ! ! 」


 その声を合図に端で待機していた兵士たちが剣を抜くと小走りで迫りたちまち二人を囲いだした。











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