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第3話「七年ぶりの再会」

 七年後


 世界の片隅に存在する城、7年前の闘いなどまるでなかったかのように綺麗な大理石で作られた城の玉座に魔王は1人座っていた。本来この城には眷属が沢山いたのだが勇者にほとんどが倒されかろうじて生き残った者にはしばらく剣技を習ってから暇を出していた。


「思えば、眷属を間において体力を奪うなどと哀れな作戦を考えたものだ」


 魔王は寂しそうに呟く。彼はこの7年、一人きりでこの城で考えるのはあの勇者との戦いのことばかりだった。勇者との戦いはいつ何度思い出しても魔王の心に熱い何かを滾らせた。この世に生まれてから数十年ほど前までは逃げ惑う市民を、動物たちを狩りと称しながら殺していたのだが、それにはもう飽きてしまったのだ。


「逃げ惑う弱者をただただ潰すだけでは歯応えもなくつまらぬ」


 そう呟いて以来、ずっとこの城に籠ってたまに魔王を退治しようと城に訪れる者たちと戦っていたのだ。

 結果的にその判断は成功で勇者と出会えたのだ。勇者はこれまで魔王が戦った中で一番彼を楽しませた相手だった。そもそも彼の第一形態と呼ぶべき人間の姿なのだがそれを破ったのが勇者一人しかいなかった。


 そんな魔王が眷属たちに暇を出した理由はただ一つ、今度は勇者と全力の闘いをするためだった。


 あのとき、勇者が黄金の剣を発現させて間もなく倒れたのを魔王は眷属たちとの戦いにより消耗したためだと考えていたのだ。魔王は戦いを思い出し心を滾らせるとともにいつもこの判断を嘆いていた。それ故に次は勇者と全力で戦うために暇を出した。


「それにしても遅い、人間の5年に合わせたはずなのだが……我の計測方法が間違っていたのか? 」


 城の天井を見上げる。


 あのあと、魔王は勇者を殺さずに家に帰した。しかし、ただ帰したのではない。5年後に再び再戦するという誓いを立ててのことだ。「5年もたてばもっと強くなり我を楽しませてくれるだろう」と楽しみにしていたのだがそれから7年、勇者は一向に現れない。魔王は普段年を数えたりはしなかったのだが人間のことを考え年を数えていたのだが余りにも勇者が遅い。


「さては勇者め……我をたぶらかしたな! 」


 約7年たっても現れないのでその結論に達した魔王は怒りに身を震わせながら勢いよく椅子から立ち上がる。


「かくなる上は何処に隠れようとも、何人葬ろうとも勇者を必ず見つけ出してやるぞおおおおおおお! ! 」


 怒りに身を任せて叫んだその時だった。


「それは、残念ながら不可能です」


 幼さを感じさせる高い声が城内に響いた。


「何者か」


 魔王は声の下方向に振り向き声の発声した方向を睨みつける。しかし、その者の姿をみると「おお」と感嘆の声を上げた。その者の姿はまさしく金色の鎧を身に纏い腰には1本の鞘に収められた黄金の剣と、あの日戦った勇者そっくりだった。


「おお、待っておったぞ」


 あの時の続きをしようとばかりに両手を広げる。しかし勇者はそれに答えない。代わりにガタガタと大きく震え出した。


「き、きゃああああ! 」


 勇者が見た目にそぐわない可愛らしい声を出し転倒したかと思うと、鎧の中から成人男性の代わりに長いブロンドヘアをなびかせた8歳くらいの幼い少女が姿を現した。





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