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第29話「女子トーク」

「指定された洞窟は遠いので馬車で移動しませんか? 」


 セントブルクの大通りを歩いている途中、エイリが突如提案する。


「確かに帰りはゲ……徒歩で宝石を持ったまま帰るのは個数にもよりますが大変かもしれませんね」


 アリスが頷いたので帰りは『ゲート』が使えぬのならここは合わせたほうが良いだろう、と考え魔王も頷いた。


「それではここでしばらくお待ちください」


 噴水広場でそう言うとエイリは門を出た後カシャカシャと歩いて行った。あの方向に馬車がある店などあっただろうか、と魔王は疑問に思い首を傾げたがそのことを誰にも話さなかった。


「お待たせしました」


 二十分程立つとエイリがカシャカシャと音を立てて帰ってくる。


「いえいえ、ありだとうございます」


 アリスは丁寧にお礼を述べる。


「お代は私の奢りですので遠慮なさらないでください」


 エイリは胸を張って答えた。


「それは有難い、やはり上位ともなるとよほど儲かっているのだな」


「ま……オウマさんそんな言い方は! 」


 アリスが魔王を窘める中その言葉に肯定するようにエイリは頭を下げた。


「それでは行くか」


 その言葉を合図に魔王は歩き出す。それにアリスとエイリも続いた。魔王は人ごみをかき分けながら門へと向かう間キョロキョロと辺りを見回す。


「どうかなさったのですか? 」


 エイリが尋ねると


「いや、誰もかれも皆女性はどこかに宝石をつけているのだな」


 と興味深そうに答えた。


 そのまま道なりに歩いていくと門から数十メートル程離れたところに二匹の栗毛色の馬を従え立派な客車が付いた一台の馬車が止まっていた。御者が二人いて手綱を握っている。


「お待ちしておりました……エイリ様」


 二人の御者が礼儀正しくエイリを迎える。礼儀正しいスーツ姿とは対照的に無精髭にギロリとした目と二人とも人相はかなりのものだった。


「さあ、オウマさんにアリスさん、お先に乗ってください」


 エイリに促されるままに魔王とアリスは階段に気を付けて客車へと乗り込む。中はかなりの広さで洞窟の中で何個宝石を見つけても持っていけそうだ、と魔王は考えた。エイリは魔王たちが乗り込んだ後五分程何やら御者と会話をしてから客室へと乗り込んでくる。


「お待たせしました、それでは出発しましょう。御者さんのお話ですと三時間程で到着するそうです」


「三時間か……」


 暇なのは慣れていると言わんばかりに魔王は呟くと腰を下ろし目を閉じた。それを見計らったのかエイリは座っているアリスの元へと近寄り声をかける。


「アリスちゃんって好きな人いる? 」


「え! ? 」


 突然の質問にアリスは頬を染めて答える。


「私はいたんだ、今はもういないけど」


 切なそうに言うエイリにアリスは声をかける。


「どんな方だったのですか? 」


「二年間付き合っていたのだけど格好良くて優しくて強くて、最高の人だったよ。でもね、お金がなくて振られちゃった」


「お金、ですか? 」


 アリスが聞き返す。


「うん、あの時私にお金があれば……いや、ごめんね急にこんな話をして」


 一瞬声色が恐ろしいものになっていたのに気が付いたのかエイリは取り繕うように優しく言う。


「そうだ、アリスちゃんはどうなの? さっき真っ赤だったけれど」


「え、私ですか……私は……好きなのかどうかは分かりませんけど救いたい人はいます」


 しどろもどろにそう答えるとアリスは目を閉じている魔王の方をチラリと見た。





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