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第25話「アリスVSキマイラ」

 草原で剣を構えキマイラと相対するアリス、魔王は念のためにといつでも助けられる用意をしながら対決を見つめていた。


 まず魔王が疑問に思ったのはキマイラの様子だった、もう追撃を仕掛けてきてもおかしくはないはずなのに未だに動かないままだ。キマイラすらも怯えさせるか、魔王はそう考えて口角を吊り上げる。


 アリスは一度深呼吸をすると高らかに宣言する。


「貴方は、私が倒します! 」


 そう言い終わるや否やアリスの構えた短剣に謎の光が集まった。魔王は言葉を失う。あれは間違いない、七年前にオスカーが繰り出した伝説の一撃だ! いや、それ以上だ……魔王は心の底から湧き上がる喜びから震えた。


 ガ、ウウウウウウ


 光が集まり自らを一刀両断するほどの大きさまで成長したのを見てキマイラは弱音を上げるように小さく鳴く。しかし次の瞬間、


 ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!


 自らを鼓舞するように力の限り雄たけびを上げるとともにアリス目掛けて突進してきた。


「はあああああああああああああああああああああああああああ」


 それを見たアリスは慌てず冷静に巨大な剣を重さ自体は短剣と同じというようにいとも簡単に振り下ろした。


 ガ、ガアアア……


 見事に一刀両断されたキマイラは弱弱しく鳴くと動かなくなった。どういうことだ、あの剣は敵を斬るものの質量はない魔法みたいなものなのだろうか、と疑問に思った魔王は尋ねるべく立ち上がりアリスの所へ向かおうとした直後のことだった。


「あれ……私……」


 そう呟きながらアリスが倒れ掛かるのを魔王は急いで受け止めた。


「どうやら無意識のうちで今尋ねても無駄なようだな、とはいえだ。これは勇者以上の強敵になるかもしれないぞ、フッフッフ! ハァーッハッハ! 」


 既に真っ暗になった草原に魔王の高笑いが響き渡った。




 魔王は『ゲート』でアリスを安全な城に避難させた後再び草原へと来ていた。目的はキマイラの報酬をもらうためだ。本来はアリスが貰うべきだが彼女がいつ目覚めるかも分からず遅くなって誰かに手柄をとられるのも癪なのでこうして討伐の証拠をギルドに持っていこうと考えたのだ。

 アリスに関しては恐らく体力を消耗しただけだろう、念のため『ヒール』をかけておいたので命に別状はなさそうだった。


 魔王は暗闇の中人間よりは優れた目でキマイラの残骸をみてどの部分を持っていくべきか顎に手を当てる。


「やはり、厄介であり特徴的な頭か」


 そう呟くと炎で止血を済ませた先ほど自分が斬った蛇の頭と待っ二つになった二頭の頭部をそれぞれ半分ずつ肩に担ぎパチンと指を鳴らすと『ゲート』でギルドへと向かった。


「ようこs……ええっ! ? 」


 いつものように『ゲート』でギルド内の人間からはドアから入ってきたように見えるよう調整してから潜ると出たタイミングで受付嬢が悲鳴を上げる。


「どうした? 」


 背中に薬草が詰まった籠、肩にキマイラの頭部三つを担いだまま首を傾げると受付嬢が慌てて駆け寄ってきた。


「どどどどうしたんですかオウマさん」


 慌てて外に出るように押し出される。


「これはすまなかった、実は薬草のクエストを受けている最中にこのキマイラというのがやってきてな。他に誰もいなかったものだから倒したのだが……こういう場合報酬はどうなるのだ? 」


「えっちょっと待ってください、熟練冒険者でも苦戦を強いられるキマイラを倒した! ? ええっ? 」


 ギルドの外で通行人が見つめる中未だ整理が追い付かないとばかりに受付嬢が慌てて言う。ここでアリスが倒したなんて言ったら更に混乱するだろうから言わなくて正解だったな、と魔王は彼女を見つめながら考えた。


 しばらくそうしていると落ち着いたのだろうか受付嬢は深呼吸をするといつもの調子で淡々と話す。


「そういった場合でしたらこのように戦利品も持ってきてくださっているので報酬はオウマさんにお支払い致します。ただ、申し訳ありませんが念のためお支払いは明日までお待ちください」


 報酬を受け取るのはアリスがふさわしい、と彼女の話に魔王は頷いた。


「それで構わない、おっと我の受けたクエストの報告にもいかねばな」


 そう言うと魔王はキマイラの戦利品を担いだまま薬屋へと向かった。

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