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第22話「ストレイワ狩り」

 休憩を終え再び歩き始めること数時間、魔王は遂に到着した。平原にストレイワと思われる何匹かの白と黒の四本足で歩く丸い耳を尖らせた動物が何匹か存在した。


「目を閉じていろ」


 アリスにそう言って魔王がその中の一匹に飛びかかろうとした時だった。


「はああああああああああああっ」


 アリスが短剣を構えて一匹の動物に飛びかかる。突然のことで反応できなかったのであろう動物は避けることが出来ず短剣が刺さると悲鳴を上げ動かなくなった。突然の事態に魔王は目を丸くした。


「どういう風の吹き回しだ」


「どっちにしても、私は強くならなければならないと思ったので」


 アリスが真剣な眼差しで答える。良い目をしている、魔王は笑った。


「ならばあと三体だな」


「三体ですか! ? 」


 魔王の提案に思わずアリスはオウム返しで答える。いつの間にか倍になっているのだから無理はないだろう。


「ああ、二体というのは帰りの運びを考えてのことだろう。だが我には『ゲート』がある。何十体だろうとその気になれば平気だが腐敗というものがあるのだろう? だが四体は持って行っても困らんだろう」


「なるほど、そうですね」


 アリスは納得したようで頷いた。


「よし、行くぞ! 」


 魔王の言葉を合図にアリスは素早く次の獲物を求めて走り出す。見つけると素早くそちらの方へと向かっていった。我も負けていられぬな、魔王は張り切って自らも獲物をみつける。と力を込めて地面を蹴りアリスの狩りを邪魔しないほどに離れた獲物の前へと瞬時に移動する。


「遅い! 」


 そして突如目の前に現れ驚く獲物に剣を差し込む。獲物は何が起きたのかも分からない間に地面に倒れた。しかし、倒れた瞬間魔王の姿はそこにはなかった。獲物が倒れた瞬間、素早く次の獲物をみつけた魔王は移動し二匹目の魔物も仕留めていた。


「終わったか、さて向こうはどうなっているか」


 仕留めた獲物二体を両肩に担ぎながらアリスの元へと向かう。すると丁度彼女も二体目を倒したところだった。


「流石ですね魔王さん」


「いや、貴様もなかなかだ、流石我が鍛えた勇者の娘」


 満足そうに言うと魔王は指をパチンと鳴らして『ゲート』を開いた。


「帰るぞ」


 そう言うと魔王はアリスが倒した二体を浮かせゲートに入っていく。アリスは笑いながらも駆け足で後を追いかけた。


 ゲートの先は食堂の目の前だ。浮かせた二体を地面に置いたのをみてからアリスが「仕込み中」と書いてある札のかかった扉を開くといつもの調子で店長が顔を出す。


「ごめんね、まだ準備中で……もう終わったのかい! ? それに四体も! ? 」


 女性が驚きながらも二人に駆け寄る。


「サービスというやつだ、追加で金は取らん」


「それは助かるねえ、なら少しだけどこちらもサービスさせて貰うよ」


 そう言いながら店長は厨房の方を向く。


「ストレイワ定食二つ! 」


「二つ? 」


 それを聞いた魔王が呟く。


「お代は頂かないからさ、食べていってよ」


「待て、我は」


「せっかくですのでお言葉に甘えていただきましょう! ま……オウマさん! 」


 そう言ってアリスは元気よく魔王の手を引き隅の席まで行くと着席する。魔王は観念し彼女に倣った。しばらくすると店長が料理を運んでくる。


「はい、ストレイワ定食お待ち! 」


 テーブルに二つことりとお盆が置かれる。


「いただきまーす! 」


 そう言うとアリスはすぐに肉に齧り付いた。


「やっぱり美味しい! ささ、オウマさんも」


「ああ」


 食事などという行為は必要ないのだがここまで来ると観念するしかない。魔王は覚悟を決めて肉を切り口へと運ぶ。その様子をアリスばかりか店長も固唾を飲んでみつめていた。口に含み噛んだ瞬間、魔王が眉を顰める。


「食事というのも、悪くないな」


 それを聞いたアリスと店長は満面の笑みを浮かべた。








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