第三話 あっしは、しがない旅がらす・下
八雲妖怪奇談
第三話 あっしは、しがない旅がらす・下
〈面影〉
「大丈夫⁉︎ ……痛かったでしょう、ラフカディオ!」
「痛くないよ、大丈夫だよお母様」
庭園で遊んでいて、転んだ拍子に肘を擦り剥いた少年は、母を心配させまいと強がってみせた。
「血が出てるわ、こっちにおいでなさい」
少年を傍に呼んだ母は、そっと我が子の右腕を取った。そして小さな声で何かつぶやき、血の滲む肘の傷を優しく撫でる。
すると、痛々しかった擦り傷が嘘のようにきれいに治った。
「やっぱりすごいなぁ。ありがとう、お母様!」
「……お母様? お母、さま……」
傷が治ったことにお礼を言おうと顔を上げた少年の表情が凍りついた。
目の前の母親が、橙色の激しい炎に包まれ燃え尽きてゆく――
ハーンは飛び起きた。
「ああっ……よかった、大丈夫ですか⁉︎」
傍には、土に汚れた手ぬぐいを握りしめた娘がいた。ようやく目を開けたハーンに、せつはホッと大きなため息をつく。
「ずっと呻き声を上げられていて、とても心配しました……」
介抱してくれていた娘の顔を見て、ハーンはおもむろに尋ねる。
「……重蔵は?」
「あっ……は、はい、重蔵さんなら、また行かれましたが」
西洋人らしき男の言葉に、はっとした様子でせつは応えた。
「暫しここに居てくれ、己れも行かねば……礼を云う!」
ハーンは立ち上がって娘に頭を深く下げると、足早に重蔵のもとへと駆け出す。
「あのっ……」
せつは何か言いかけたが、ハーンが走っていく姿を黙って見送った。
「すまない! 重蔵」
「早かったな、大丈夫なのか⁉︎」
魑魅魍魎を捌きながら、重蔵が相方の身を案じる。
「まあ……なんとかな」
魔除けから刃をのばすと、それはいつものように洗練された刀剣の形を成した。
しかし妖気が不足しているのか、ほんのりと弱々しい輝きを放っている。
「くっ、やはりだいぶ弱まったか。何か、妖気を回復させる方法は……」
「お! そうだ、ちょうどいい“わいん”があるぞ、西の!」
ハーンが重蔵の視線の先を追うと、鼻血を垂らしてのびている警官の顔が目に入ってしまった。
「む、むぅ……背にハラは、代えられぬか」
眉をひそめながらも、ハーンは鬼瓦のだんごっ鼻にそっと左手を添えた。
――ハーンは、口からでなくとも体表から血を吸うことができた。他者の血にこそ限られるものの、人間のわずかな血でも大きく妖気を回復できるのだ。
少しばかり血を頂戴したハーンは、礼代わりに鬼瓦警官に治癒のまじないを施した。相変わらずのびたままではあったが、だんごっ鼻に付いた重蔵の蹴り跡がつるりとキレイになった。
魑魅魍魎の大量発生――でろでろデロデロ……と、音で例えるならば、まさにそのような擬音が相応しいだろう。
ナス、かぶ、かぼちゃ、ガリガリのにわとりや太ったムクドリの如き面妖なる群れ群れは泡のように溢れ出て、とどまるところを知らなかった。
「仕方ねえ、久しぶりにやるか……アレを、西の!」
「よかろう! ――妖霊血界‼︎」
ある程度妖気を回復させたハーンは重蔵の呼びかけに呼応した。鮮やかな薄紅色に染まった刃を前方に向かって勢いよく振り払う。赤黒い光の鎖が妖怪の群れをひとまとめに封じ込めると、結界の前に重蔵が躍り出た。
「つむじ風の足参本、侮るなよッ……霹靂突きッ‼︎」
重蔵は彼を知る妖怪たちから、人間に化けて杖を持った姿を指して足参本と呼ばれていた。霹靂とは雷のこと――妖気を集中して仕込み刀を素早く回転させ、結界へ真っ直ぐ突き刺す。
――バヂイイイイッッ‼︎
青白い無数の筋が紅き結界の中をせわしなく駆け巡り、珍妙なる野菜畑は霧散した。重蔵の放った電撃が、湧き出てきた群れ全体に伝わったのか、気付けば木々の葉がざわめいていた林道は静寂に包まれている。
「やったな! 西の」
「ああ……だが、只事ではなさそうだな」
重蔵とともに目前の怪奇を退治したハーンは、経験的にこれですべてが収まるとは思えなかった。ひとまず二人は空き地に待たせているせつのもとへと戻った。
「ご無事ですか? お二人とも」
「いやーおかげで助かったぜ、せつ」
重蔵はせつに笑顔で礼を言った。
「実は、誤って蜂の巣を小突いてしまってな、必死に追い払ってたんだ……。相方は蜂が大の苦手なのだ、気を失ってしまうくらいに、なあ!」
「重蔵……己れは」
言いかけたハーンを制して重蔵が囁く。
「今はそうしておけ、無用な心配を掛けてやることもない」
ハーンは重蔵のせつへの配慮を汲み、娘へ声を掛ける。
「大変、迷惑をかけてすまなかった。せつ殿、でよいかな」
「はい……あの、あなた様は」
せつはハーンの名前を知らないため、介抱中や駆けて行った際にも何と呼べばよいか困っていたのだ。
「申し遅れた、我が名はラフカディオ……。西の洋より日本へ参った、ラフカディオ・ハーンと申す」
せつの問い掛けに応じてハーンは丁寧に自己紹介する。
「らふか……はーん……! そのお名前、たしかあのときの⁉︎」
せつはどこかで聞いた気がするその名を耳にして、ハッと気が付いた。
「もし、あなた様は、闇夜の中でも白く光る刀をお持ちではありませんか?」
「なぜそれを、まさか……そなた、あの娘か」
せつが白き刃のことを口にして、ハーンは思い出した――首無し地蔵との死闘を繰り広げていた際、娘の首の傷を治したときにふと彼女の顔が見えたことを。
あのときは地蔵との闘いに気を取られていたが、それはたしかにあの夜助けた娘の面影であった。ハーンが驚く表情を見たせつは、にっこりとほほ笑んでいた。
「そうか、そうであったか……まことに、よかった」
ハーンは娘のその後が無事であったことを知り、安堵した。
〈コマイヌ〉
三者がそれぞれの再会を喜んでいたが、ふとあることが気になり、ハーンは重蔵に話しかけた。
「重蔵、己れが倒れる前に鐘の音が鳴ったな。あれはどこの寺かわかるか?」
「ん? ああ、たしかあれは、たぶんあの古寺だな。行ってみるか?」
「うむ、できるだけ急ごう。少し気掛かりなことが浮かんだ」
「そうか、ならせつも来るといい。もう遅いし、なんなら寺に泊めてもらえるか聞こう」
重蔵がそう言うと、三人は足早に鐘の鳴った寺へと向かった。
小さな寺の境内。気付けば夕焼け空は紫に染まり、濃紺の闇が辺りを支配し始めていた。
狛犬は一般的には一対で神社を護るとされるが、ここは寺ながら珍しくもたった一匹で、厳しい表情で参拝者を威嚇するように佇んでいる。
「せつ、わるいが住職を尋ねてきてくれないか?」
「いいですよ、探してみますね」
せつは重蔵の頼みを聞き、寺の主が居そうな所を探しに歩いて行った。
「……で、なにか思い当たったのか、西の?」
「うむ、出雲大社しかり寺社仏閣の多い土地で妖霊が湧き出るということは、やはり何かしら特別な原因があるのではと考えた。そこで、魑魅魍魎が現れた場所から最も近い寺を調べてみようと思ったのだ」
「なるほどな。たしかに以前はこの辺りじゃこんなことはなかった」
ハーンの考えに重蔵が同調する。果たして原因は何か。首を捻りながらふと目を寺の外へ向けたとき、重蔵はいやなものを見てしまった。
「おいおい……うそだろ?」
頭を抱えてうんざりといった様子で重蔵がぼやく。
破れた提灯や紙風船に、壊れた荷車……それとドテかぼちゃ。さっきまで嫌というほど切り捨てた半透明の妖怪の群れが、何処からともなく二人のもとへと向かってきたのだ。
「まさかこいつら、追っかけてっきたのか?」
「やもしれんな、どうやら己れたちのことがよほど気に入ったのか」
「冗談きついぜ、西の……」
先ほどの電撃でかなりの妖気を消耗したのか、重蔵はかなり堪えているように見える。
「すまんが重蔵、少しの間ここを頼めるか」
「あいよ、わかりやしたよ先生! 任せとけ」
重蔵がやれやれといった様子で肩を回し、ハーンは寺の御堂へと走り出した。
奇妙な群れは重蔵に近づきながら次々と集まりむくむくと膨れ上がる。
「ちぃっ、夜だとずいぶん威勢がいいじゃあねえか」
寄り集まった魑魅魍魎が、大きく歪んだ塊を形作ってゆく…… 。辺りは昏く、陽はすっかり落ちていた。
逢魔時――大禍時とも書く――と呼ばれるこの時刻は、黄昏時から夜へと移り変わる時分。魔物や妖怪が活発となる魔の入り口である。
――白刃を生み出しながら、ハーンは古寺の拝殿に吊るされた鈴めがけて跳んだ。
「八百万の神々よ……罰当たりを赦したまえっ‼︎」
詫び叫びつつハーンは御堂から垂れる紅白の鈴の緒を斬り落とした。緒の端っこを掴むと、シャンシャン鈴を鳴らしながらあるところへ駆け戻る。
戻った先は狛犬――その首元へ何かを切っ先で刻み付けると、鈴緒に念を込めてぐるりと巻き付けた。
「ぬあああっ‼︎」
大声がした方向にハーンが振り返ると、重蔵が脚を掴まれ高々とぶら下げられている。
なんと妖怪の群れが混ざり合い、巨大な人の形を成していた。
「くそっ! 放せコイツっ、うああッッ⁉︎」
背丈十尺(約三メートル)以上は優にある怪物に、重蔵が玩具の如く振り回される。
大入道という妖怪が、まさにこの様な容姿だが、伝聞や絵で見るそれと目の前の妖怪には若干の違いがあった――所謂坊主の顔ではなく、ひどく不気味なひとつ目である。
「今ゆくぞ、重蔵!」
単眼の大入道が、右手に掴んだ重蔵を硬い石の地面に叩き付けようと思いきり振りかぶった。
「動きを止めてくれ! 西のオオッ‼︎」
「……妖霊、血界刃ッ‼︎」
ありったけの妖力を込めた紅き刃を地に擦りつけながら巨体に走り寄って足を薙ぐ――そのまま流れるように膝へと駆け上がり両の腕を斬りつけ、最後は胸に踏み込んで大きなひとつ目に縦筋一閃を放った。
「グルアアァアアアアーッッ⁉︎」
反響するような凄まじい雄叫びを上げる異形の人型。斬った痕を結ぶように赤黒い妖気の鎖が大入道の身体を縛り付ける。半透明な巨体が怯んだ隙に、重蔵は抜け降りて膝をつく。
寺一帯が暗がりに覆われる中、大入道は激しく身震いし……斬ったそばから切り口がふさがってゆく――夜は多くの妖怪にとって最も力に満ちあふれる絶好の時であった――
死にもの狂いで大入道がもがくと、腕を止めている妖気の拘束が破られる。
「ぬぅ、血の質が悪かったか⁉︎ 留めが短い」
「いや、十分だ‼︎」
――重蔵は叫んだ……そう、絶好の時分なのは何も大入道に限った話ではない。
仕込み刀を順手に構えて力を振り絞ると、黒い影が空高く翔び上がった。
「グリュアアアアウッッ‼︎」
大入道が顔に巻き付いた妖気の鎖を力任せに引きちぎる。
影が高速で翻りつつ、ヤタガラスは大入道の頭めがけて真っ直ぐ急降下した――
「蒼天・霹靂突きッッッ‼︎」
鋭い直刀が大きな眼玉を刺し貫く!
周りが一瞬青白く光り、少し間を置いてから耳を裂くような雷音が轟いた。
重蔵の一撃によって、大入道は風船が破裂するかのように弾け飛んだ。形を成せなくなった妖気が夜の闇に散ってゆく。
ハーンは眼前に妖気帖をかざし、呪文を唱えた。
――我が記憶に刻まれよ……真奇念写‼︎――
漂う妖気が急速に吸い込まれ、新たな頁には大きな目玉の絵が浮かぶ。
ヤタガラスから人の姿へと変わり身しながら、重蔵は狛犬を見やってハーンに尋ねた。
「ん? これは何の術だ」
ハーンは寺の神具を用いて、周辺の土地から魑魅魍魎が新しく湧き出ぬように“退魔の印”を施したと話す。狛犬の首元には五芒星を刻み、刻印が風化せぬよう鈴の緒にも簡単なまじないを掛けて保護したのだ。
「どれだけ保つかはわからぬ、応急処置だ」
「ほお、紅白の首綱か! 鈴も付いてて、イイ飾り付けだな、ご利益ご利益……」
「こるあああーーーッ‼︎ だれじゃああ! 罰当たりなことしおってええ⁉︎」
つるつる頭で白いあごひげを生やした寺の住職が、甲高い声を上げながら怒って駆けつけてきた。心配してせつも後から追ってくる。
「それになんじゃあの音は⁉︎ 誰か大砲でも撃ちおったのか‼︎」
「ご住職、申し訳ない。訳あって勝手にお祓いをさせて頂いた」
「なんじゃと! おまえさんがやったんか⁉︎」
今にもハーンを喰い殺しそうな勢いの住職の前に重蔵が割って入った。
「住職ッ、オレは知っとるぞ! これはな……西で流行りのまじないだ! 無病息災! 商売繁盛! 満願成就! とにもかくにもコレはめでたい‼︎ 出雲大社にも近きこの寺を聖地とされよ、参拝客も多く訪れることだろう‼︎」
「なにぃ⁉︎ ……おお! そうかそうか! ならよいわい。すまんのう、この古寺に気を使ってくださって」
住職は目を丸くして、長くて立派な白ひげをさすりながら、新たなる狛犬の飾りを物珍しそうに眺めて悦に入っていた。
「ふう……やれやれ」と住職に聞こえないように重蔵が呟く。
重蔵の咄嗟の機転でことなきを得た。
「時に住職、この古寺の名はなんというのかな」
ハーンが尋ねると、住職はにんまりといい笑顔で答えた。
「この寺は昔から『うわばみ寺』と呼ばれておりましてな。悪霊や病から、蛇の神様が守って下さると伝えられておりますのじゃ」
「へえー、蛇の神様ねえ。おもしろいわね」
せつが興味深そうに聴いている。
「蛇神様……か」
ハーンは意味深な目をして遠くを眺めた。
「そうじゃ、今日はもう遅い。あなた方、よければ御堂で休んでゆきなされ」
住職は三人に寺で泊まるよう勧めてくれた。
〈土地神〉
蝋燭の明かり仄かに灯る御堂の中。
「面白いものがあるぞ、重蔵」
ハーンは御堂の天井近くに掲げられた、あるものを見ながら重蔵に語りかけた。
「ほーう、たしかに面白いな、こいつは」
「ともすると今回の事件、住職の話のとおり土地の守り神が関係しているのやもしれんな」
二人が見上げるそれは、一枚の絵だった――風吹き荒れる林の中で、悪鬼らしき妖怪の群れを白い大蛇が丸呑みにしている印象的な古めかしい絵図である――
「日本には実に多くの神々が、あらゆる土地に住まうと聞く。守護神としてガマ蛙やカモといった、動物の神を祀る処もあるそうだな、重蔵」
「ああ、この寺も蛇の神様が祀られてるってな」
「つまるところ、魑魅魍魎などの妖怪が溢れかえらぬよう調和を保っている存在が守り神とされているのではないかと、この絵を見る限り己れは思う」
ハーンの推測に、なるほどといった様子で重蔵が聞き入っている。
「……てことは、妖怪の群れが湧き出たのは本来居たはずの神様が居なくなっちまったからか?」
「さてな、己れとて流石に神を見たことはない。魔のもの、妖のものならば確かに在るがな」
「土地神様の守護ねぇ……それじゃあ今度、詳しく調べてみるか」
重蔵は以前、日本の妖怪や神々の由来について調べていると話していた。今回の件で新たな課題ができたようだ。
「そういえば大丈夫か? 西の、急に倒れたが、もしかしてお袋さんの……」
重蔵は言いかけたが、それ以上は踏み込むまいと口をつぐんだ。
「心配を掛けたな。もうこのとおり、何ということはない」
――黄昏空によって、ハーンの脳裏には少年時代に目にした母の死が思い起こされた。最愛の母が亡くなったときの光景と、沈みゆく夕陽の情景が重なってハーンの心が錯乱したのだった――
「……まあ、夕暮れ時に出歩くのは控えよう。おぬしにはまた助けられたな、重蔵。出会った頃を思い出す、ありがとう」
「なあに、気にするな。だがさすがに今日はオレも疲れたな。ゆっくり寝るとしよう。それじゃあまた明日な、西の」
重蔵は風に当たりながら寝るといい、寺の外へ出て行った。
少しすると、住職に一宿借りることへの礼を終えたせつが戻ってきた。
「あれ、重蔵さんは?」
「少し夜風と戯れたいそうだ」
御堂で静かに座るハーンを見て、せつは先ほどからずっと考えていたことを口にした。
「わたしを助けて頂いた夜、あなた様は……何を追い払われたのですか?」
「いや、追い払ったのではない。もとある姿へ返したのだ」
「……?」
せつがきょとんとした表情でいるのを見やって、ハーンは口を開いた。
「己れはただの人間ではない。吸血鬼と人の間の子なのだ」
「キュウケ、つき……?」
聞いたことのない言葉にせつは戸惑った様子だ。
暫しの沈黙が続いた後、ハーンはせつに言った。
「己れにはもう関わらぬほうがよい。あまり無茶はなさるな、せつ殿。それでは……」
ハーンは娘の今後の無事を祈りつつ、一礼して立ち上がる。
「あ、あの……お待ちください! なぜあなた様の刀は光っていたのですか? まるで闇を照らす灯籠みたいに……」
せつは背を向けつつある男となんとか話を続けようと疑問を投げ掛ける。
「わたしっ、知りたいのです! たくさんそういう、不思議なことや奇妙なことを」
その場から立ち去ろうとしたハーンは足を止め、己を必死に引き留めようとする娘の好奇心に興味を引かれた。
「……それでは、何から話そうか」
――夏の夜風に雲は流れて、うわばみ寺の御堂の中から話声が微かに響く。明け方までとある男女が語り合っていたことは、おそらく誰も知らない。
〈昇進への執念〉
……鬼がわらがむくっと起き上がった。
「むうぅ〜ん、やっぱりおかしいぃ〜……本官がかならず事件を解決してえぇ〜……むにゃり」
――ばたん。おおきないびきが真夜中の林の中で鳴り響いていた。
八雲妖怪奇談 第三話 あっしは、しがない旅がらす・下
終わり