雨が
この作品は牧田紗矢乃さん主催、第四回・文章×絵企画の投稿作品です。
この作品は、桧野 陽一さんのイラストを元に執筆しました。この場を借りて、御礼申し上げます。
桧野 陽一さん:https://10819.mitemin.net/
ベンチにポツンと座る。
ふう、と空気が肺から気道を通り、それがため息として出ていった。
高校をさぼった、その日に学校で何が起きたか、僕は知る由もない。
少し、幸運があっただけだ。
突然の事故だった。
校門を通ってバスが突っ込んだ。
大事故だ、その時、たまたま通学時間だったという不幸も重なった。
何もかもをなくした。
そのすべてが思い出になり、それが消え失せていく。
この日も、そのベンチに座る。
友人らの通夜も終わり、誰とも会いたくなかった日。
やはりその日も、ため息交じりの空気を吐き捨てていた。
それが別の人の空気と混ざって、拡散して、思い出も何も残っていかなくなる。
頭から涙が伝ってきた。
「……雨か」
ポツポツ、とした雨が流れてくる。
それは友人が流した涙。
そして、これから僕が流す涙。