龍の義孫
本編のずっと未来の話。ネタバレ注意です。
本編の方が進まないので、むしゃくしゃして書いた。後悔はしていない。
うちの家族について話そうと思う。
うちはお母さん、お父さん、おじいちゃん、僕の四人家族だ。
たまにおじさんとおばさんが突撃してくる。……突撃してくる。
お母さんはヒト型、おじいちゃんは龍型、お父さんは半々で過ごしている。僕は最近ヒト型になれるようになった。
あ、ちなみにうちはヒトの家族じゃないよ。お母さんは自分を『普通のヒト』だって言ってるけど、いろんな意味で絶対違うよ。
お母さんは昔、人間だったらしい。今もまだ四分の一くらいは人間らしいけど、それを言うとおじいちゃんがすごく嫌そうな、悲しそうな顔をするから、僕もお母さんも、おじいちゃんの前でそういう話はしないように気をつけている。
おじいちゃんは、お母さんのことをすごく大事にしている。元々の種族が違うから、おじいちゃんが言うような『実の娘』ではないのだろうけど。
ただ、前にそれを言ったら、
「半分は血のつながりを作ってあるのだから、人間に当てはめれば実の娘と言えるであろう?」
と、真顔で言われた。
お母さんから、死にかけた時におじいちゃんに助けてもらって半分龍になった、というあれこれを聞いたことはあった。
けど、おじいちゃん、もしかして助けるついでに何かやらかしていないか?作ったってなんだ、作ったって………。
いや、おじいちゃんはものすごく綺麗でかっこよくて、強くて何でも教えてくれる、素直に憧れる龍ではあるし、僕のこともかわいがってくれてるとは思うんだよ?
でも、お母さんに対する過保護っぷりがすごい。
過保護エピソードは多すぎるので省かせてもらうけど、たった今、目の前で入浴後のお母さんの髪の水分をふわっと飛ばしている。あと、湯冷めしないようにって、なんか神々しい布を肩に掛けてた。あ、水分補給って飲み物も出してる。髪の毛もとかし始めた……龍型なのに器用だな。ちなみにだけど、龍って全耐性だから寒さ暑さ関係ないし、風邪なんて引かないよ?水分なんて、空気中から必要量自動で取り込むよ?僕も風呂上りだけど放置だよ?
思わず生温かい目で見ちゃうのも仕方ないよね?
おじいちゃんの過保護っぷりについて、お母さんは、
「慣れた。というか慣れたと思い込まないと色々無理………。」
と、遠い目をして言っていた。
お母さんがおじいちゃんに構われている間、お父さんは何をしているかというと、お母さんの影に入って休んでいるか、小型龍化してお母さんに抱っこされている。
お母さんは存在するだけで龍も癒せるすごい人で、くっついていると効果がもっと上がる。おじいちゃんのしてた仕事を一部任されるようになって、お父さんはいつもお疲れ気味なので、できるだけくっついているそうだ。
本当は、弟か妹を作るようにがんばっていた方が元気になれるらしい。なんでがんばった方が疲れがとれるのか聞こうとしたら、お父さんが吹き飛んだ。お母さんに殴られたらしい。お母さんに聞いたら、もう少し大きくなってからお父さんに聞くように言われた。
代わりに、お父さんが朝から元気一杯で機嫌がいい日があるけどもしかして?と聞いてみたら、お母さんが真っ赤になった顔を手で隠して小さくなってしまった。あーとかうーとかうなっている。なんかかわいい。
いつの間にかヒト型をとったお父さんが僕の隣にいて、いっしょにお母さんを見ていた。表情があんまり変わらないので分かりにくいが、にやにやしている。
おじいちゃんは、『うちの子何しててもかわいい』という顔でお母さんを見守っている。
ふと、弟か妹がいたら、僕ももっと楽しく過ごせるのではないかと思った。いっぱい頭を撫でてあげたり、抱っこしたり、ご飯をあーんで食べさせてあげたり。おじいちゃんとお父さんはお母さんに、お母さんは僕にして、楽しそうにしてるけど、僕にはそうする相手がいない。それは何だかさみしい。
そういえば、誕生日に何が欲しいか聞かれていた。何でもいいよ、とも言っていた。
「お母さん。」
あーうー言っているお母さんに声を掛けると、お母さんが顔を上げてくれた。まだ赤い。
「誕生日に欲しいもの決まったよ。」
「この流れで!?」
お母さんがなぜか引きつった顔をしているが、せっかくなので言っておく。
「弟か妹が欲しいな。できれば妹で。」
「やっぱりか!」
またお母さんが顔を手で覆ってうなり出してしまった。
でも、何でもいいって言われてたし、他には特に欲しいものもない。あと、ちっちゃくなってたお母さんがかわいかったから妹がいいとは言ったけど、別に弟でもいいと思う。
お母さんがうなっているので、隣のお父さんに言ってみた。
「やっぱり、弟でも妹でもいいや。どっちでもかわいいと思う。」
すると、お父さんが滅多にしない満面の笑みでうなずいた。
「そうだな、お父さんもどっちでもいいと思う。むしろどっちも欲しいかな?」
その発想はなかった。目を丸くする。
両方いた方がもっといいかもしれない。
もっと我がまま言ってもいいよ、とお母さんには言われているし、ちょっと欲張ってみることにした。
うなっているお母さんの腕をちょいちょい引っ張って顔を上げてもらう。
「お母さん、妹と弟、両方お願い。」
「えーっ!?」
お母さんが真っ赤な顔で困っている。ちょっと我がままを言い過ぎたのかもしれない。でもどっちかは欲しいし、ちょっとしょんぼりな気分でお願いしてみる。
「ごめんなさい、我がまま言っちゃった。ダメならどっちかでもいいよ。」
なんだかだんだん声が小さくなってしまった。お母さんの腕に手をおいたまま、しゅんとして下を向いていたら、ぎゅっと抱き締められた。
「ごめんね、まー君は何にも悪くないよ!ちょっと我がままが予想外で!なんていうか、そう来たか~って!」
あわあわしたお母さんが、片手を僕の肩に置き、もう片方の手で頭を撫でてくれながら、目を合わせてくる。お母さんの目は、片方は柔らかいこげ茶色、もう片方はおじいちゃんと同じきれいな青だ。お母さんは『チュウニビョウ』っぽくてちょっと、と恥ずかしがっていたけど、僕はお母さんの優しい目は好き。
ちなみにまー君とは僕のこと。『マコト』という名前からの愛称だ。お母さんしか使わないが。弟か妹がいれば、使われることも増えるかな?
「お母さん。」
「なあに?」
「弟か妹ができたら、僕のことまーくんって呼んでくれるのかな?それともおにいちゃんかな?」
それはどっちでも嬉しいかもしれない。
想像して、自然と頬がゆるんだ。
「くっ!うちの子があざとかわいいっ!!」
手で口をばっと覆って、急に横を向いてお母さんが叫んだ。びっくりした。
そんなやり取りをしていたら、目の前のお母さんが浮き上がった。お父さんが抱き上げたようだ。
じたばたしているお母さんに、耳元でお父さんが話している。あ、お母さんがもっと赤くなった。
お父さんは右腕にお母さんを載せると、左腕で僕を抱き上げて、おじいちゃんの方を向いて声を掛ける。
「では、我々はそろそろ失礼します。」
そう言って頭を軽く下げると、おじいちゃんも応えてうなずいた。
「おやすみなさい。」
「ああ、おやすみ。」
僕があいさつすると、微笑んであいさつを返してくれた。
「おやすみ、なさい。」
「おやすみ、また明日会えることを楽しみにいているよ。」
お母さんがまだきょどったままあいさつすると、龍なのに満面の笑みでおじいちゃんが返す。
挨拶が終わったのを確認してから、お父さんが術で空間を開いて僕たちの部屋に繋ぎ、移動する。
僕たち、というよりお母さんに危ないことがないように、僕たちの部屋にはおじいちゃんがすごい結界を張っていて、許可したヒトだけ、しかも転移でしか入れないようにしてあるらしい。僕やお母さんはまだ転移は使えないから、お父さんかおじいちゃんが一緒じゃないと部屋には入れない。転移はむずかしい術なので、お父さんはすごくがんばって覚えたそうだ。覗き見防止とか防音とか気配を隠すとか、そういう結界の強化もがんばったらしい。何に使うんだろう?
お母さんと特に仲良しの精霊さん3人も入れる。僕の面倒を見るために、何度か来てくれていた。
龍は本来、あまり睡眠を必要としない。でも元人間のお母さんは寝るのが好きみたいなので、僕たちもそれに合わせている。お母さんとお父さんに挟まれて寝るのはなんだか幸せだし。お布団って気持ちいいよね。
眠りに入る前、僕の髪を撫でる手の温かさを感じる。今日はお父さんの手だ。
僕は、髪だけはお母さんそっくりだ。真っ黒で、一房だけ真っ白な髪は僕の自慢。他はお父さんそっくりで、美形?らしい。お母さんに『私の遺伝子、欠片も感じない!』とものすごく嬉しそうに言われたときは、大泣きした。僕はお母さん大好きなのに、ひどくないかな?
お母さんとお父さん、それからおじいちゃんにもついでに守られて、今日も眠りについた。
うちの家族について話したいと思う。
うちのお母さんは絶対に『普通のヒト』ではない半分以上龍、お父さんはお仕事をがんばっている龍、おじいちゃんは色々最上級の龍、そして今日もぬくぬく眠れる僕の四人家族だ。
近々、妹か弟も増えるだろう。
小さい龍は正義だと思います。