本意ではないこと
家に帰った夢美は、早々に風呂を済ませ、ベッドに潜り込んだ。
まさか哲也にあんな事を言われるなんて。
いや、まさかではない。最初からこうなる事はわかっていた。
晃司に紹介しても良いかと問われた時から、向こうがこちらに好意を持ってくれている事はわかっていた筈なのだ。
それなのに自分は、体質の事を告げる事もなく、ただ気を持たせる様な事をしただけに過ぎない。
本当に、最低な女だ。
(私、なんでこんなに下手なの)
今まで友人は多かったし、人間関係を築くのには長けている方だと思っていた。
その為、こんなにも恋愛下手だとは思っていなかったのだ。
枕に顔を埋めると、自然と涙が出た。
哲也を傷付けてしまった罪悪感もある。が、それよりも、自分はやっぱり好きな人とは結ばれない運命にあるという悲しさと、本心とは真逆の事を口にしなければならない悔しさが勝っていた。
晃司には心理がいた。
哲也の事も、もっと一緒にいたいなと思い始めていた。
告白された時は嬉しかった。
もしも自分にアレルギーなんて特殊な体質がなければ、喜んで受け入れる事ができた。
が、現実は違った。
それに、哲也は晃司の様に『大丈夫』な人ではなかった。
どんな人だって、触れられない相手と付き合いたいなんて思わないだろう。
その為、本当は嬉しかったのに、真逆の事を口にしなければならなかったのだ。
(ごめんなさい京極君。私も、本当はあなたと付き合いたかった。だけど、ダメだったの……)
あのあと哲也からは、なんの連絡もない。
当然だろう。
あんな風に振り払って逃げてしまったのだから。
幸い明日は週末で学校は休みだ。
その間に気持ちの整理をつけ、きちんと説明をして謝らなければ。
ベッドに潜り込みながら、夢美は声を押し殺して泣き続けていた。




