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私はあなたを真似る  作者: 石月 ひさか
進路指導合宿
20/37

秘密の打ち明け


各自荷物を置くと、配られた昼食を食べ、管理棟にある多目的室へと向かった。


管理棟には受付の他、小さな売店やコインシャワー、それに5つの多目的室がある。


ちょうど各クラスで1室ずつ割り当たる為、今回のメインである進路相談は各自クラスでまとまって行われる。


1組は1階奥にある広間に集まり、グループ毎分かれて席に着いた。


「て言うか、今さら進路の話をしなくてもいいよね。むしろ今から考えてる様じゃ遅いくらいなんだから」


そう言うのは、自身はすでに希望の大学の推薦枠を確保している斎藤梢だ。


実際の願書はまだ先だが、1年の頃からの成績も優秀な為、すでに枠は約束されているらしい。


「梢は良いわよね。あとは時期になったら願書出せば良いだけなんでしょ?私は専門だから、そんなのないし。この後のテストがやばかったら、願書も厳しくなっちゃうんだからさぁ」


美容系の専門学校を希望している香澄が深い溜め息を吐く。


「そんな事言ったら、私だって同じ。短大だから色々あるし。それにぶっちゃけ、長い目で見た将来の就職の事なんか考えてないもん」


呟きながら、沙保里は遠くを見つめる。


卒業後の進路は決めてはいるが、その後の事まではまだ決めていない様だ。


「夢美ちゃんは栄養士だっけ?推薦狙ってるの?」


「ううん。普通に受験するつもりよ。それに、こんな時期に編入だから、推薦枠は難しいだろうから」


1年から通っていれば可能性もあるかもしれないが、なにせ3年からの編入だ。


推薦枠については、初めから望んでいない。


「でも、前の学校での成績はどうだったの?確か、エスカレーター式の女子校だよね。偏差値も高かったんじゃない?」


確かに夢美が以前通っていた学校は、中学からのエスカレーター式なだけあり、なかなかの難関だった。


できる限り男がいない環境で過ごすため、俗に言うお受験も必死に頑張った。


留年等をしている余裕もない為、成績は比較的上位にもいた。


が、推薦枠となると、成績だけでは通らないのだ。


内申──これが絡むと、なかなか厄介な事になってしまう。


「成績は、まぁまぁだったんだけど。でも良いのよ。他の、4年制の大学に行く子達がとった方が良いもの」


そんな話をしていると、担任が室内に入ってきた。


「みなさん揃ってますか?では始めましょう。前からプリントを配ります。それに、自身の進路のことを──」


────────────


「はぁ。終わった終わった!疲れたぁ」


数時間後、形だけの進路相談会は終了し、皆ぞろぞろと多目的室を出て行く。


夢美と晃司は一緒に残り、後片付けをしていた。これも代表の務めだ。


「俺1人で大丈夫だから、夢美はコテージ戻っていても良いぞ」


晃司は使った椅子を片付けながら言う。


「なに言ってるの。私だって代表なんだから。それに2人でやった方が早いじゃない」


確かに室内は学校の教室よりも一回り程小さいくらいで、片付けるものも人数分のパイプ椅子くらいだ。


1人でも充分対応できる量だが、だからと言ってじゃあお願いと戻るわけにもいかない。


「指とか挟まない様に気を付けろよ?」


「大丈夫よ。私、そんなおっちょこちょいじゃないんだから」


どうやら晃司の中での夢美のイメージはドジっ子の様だ。


それはやや不本意だが、心配されるのは新鮮だし、意外にも悪い気はしない。


「この後は確か、飯と風呂だよな。あ、その前に自由時間あったっけ」


「そうね。30分くらいだけど」


「俺達トランプやる予定なんだよ。よかったら後で、夢美も来ないか?」


その言葉に、動揺して思わず持っていた椅子を落としかけてしまった。


「おい、大丈夫か?」


「だ、大丈夫大丈夫……。ちょっとびっくりしちゃって」


晃司の好意は全て、心理の身内だから向けられているものだ。


それはわかっているはずなのに、妙にドキドキしてしまう。


「そんなびっくりしなくても。俺達のコテージわかるよな?」


「うん。わかるけど、遠慮しておくわ。友達同士で遊んでる所にお邪魔するのは悪いし」


やはり晃司は、まだ夢美の体質の事を知らないらしい。


そろそろ、心理が言っているかなと思っていたのだが。


「気にするなよ。あいつらもみんな、夢美と仲良くなりたがってるさ。歓迎されるって」


「う、うん……。でもほら、やっぱり私1人で男子の所に行くのはちょっとあれだし」


「じゃあ夢美のグループの子も一緒でもいいぞ。佐保里とか木戸とかも──」


「ごめんなさい、ダメなの」


言い切ると、晃司は目を丸くして黙り込んでしまった。


いくら女子校出身とはいえ、ここまで固くなに断るのはおかしいと思ったのだろう。


「あ、いや……ごめんな。何も無理矢理誘うつもりはなくて──」


「西君に、話しておかなきゃならないことがあるの」


もともと、晃司にはこの体質の事を告げるつもりではいた。


タイミングがなく先送りにしていたが、今なら2人きりだし、話の流れ的にいいタイミングだろう。


「え?な、なんだ?」


晃司は話の流れが読めず戸惑っている。


夢美は目を伏せると、ポツリと呟いた。


「私ね、アレルギーがあるのよ。男の人に」


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