表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私はあなたを真似る  作者: 石月 ひさか
進路指導合宿
18/37

当日の朝


そして進路指導合宿当日。


幸い天候に恵まれ、抜ける様な晴天だった。


空には雲一つなく、まだ5月だというのに初夏の様に暖かい。


「何この気温。まだ5月上旬だってのに……。これもきっと温暖化の影響なんでしょうね」


朝香はサングラス越しに太陽を見上げ、忌々しそうにぼやく。


進路指導合宿は私服指定となっており、2人は私服姿で学校へと向かっていた。


「ちょっと朝香、それはちょっと派手過ぎじゃないの?」


眉を寄せながらぼやく。


いくら私服指定とはいえ、行事の一環だ。


夢美は白いカーディガンとキャミソール、それにクロップドパンツ姿だったが、朝香はまるでクラブに出掛ける様な格好だった。


赤いチューブトップに黒いショートパンツを履いており、惜しげもなくナマ足をさらしている。


上着はあるようだが暑いからと腕にかけており、靴にはヒールがついている。


「別に良いじゃない。私服なんだから」


「そうだけど……。それは露出し過ぎよ」


ただですら髪色は明るいし、化粧も派手なのだから。


誰がどう見ても学校へ行く格好には見えないし、最悪教師に注意を受けるかもしれない。


「別に露出なんてしてないって。言っとくけど、私は家では裸族なのよ。今日は1日中服を着てなきゃならないんだから、ストレス溜まるわ」


「え?ら、裸族って──まさか全裸なの?」


いくら自宅でも、家族もいるのに全裸で過ごすなんてあり得ない。


朝香は当然の様に「全裸なわけないでしょ」と言い放つ。


「私は下着タイプの裸族よ」


「下着でも充分信じられないわ」


溜め息を吐きつつ学校へ向かう。すると、同じく登校途中の心理と出会した。


心理はこちらを見ると、明らかにギョッとした表情を浮かべる。


「なんだよ、その格好」


今からクラブにでも行くのか?と同じ感想をぼやく。


「おはよう。心理も注意してよ。朝香の格好は露出過剰よね」


「まぁ、今日は確かに暑いけどさ。にしてもその格好はやべーんじゃねぇの?つーかお前、ノーブラ?」


呟き、朝香の肩を見つめる。


「はぁ?んなわけないでしょ。ヌーブラつけてるわよ」


「ヌーブラ?何それ」


どうやら男の心理には理解できない代物らしい。


行き先は同じな為、3人は並んで歩き出す。


すれ違うサラリーマンや他校の生徒が、チラチラと朝香を見ているのがわかった。


「ちょっと、せめて上着を着てよ。それに、サングラスも外して」


「うるさいわねぇ。わかったわよ」


朝香は渋々腕にかけていたデニムのジャケットを羽織る。だがサングラスは外すつもりはないらしい。


「ったく。TPO弁えろよ。これだから高校デビューの奴は」


心理がぽつりと呟く。とたんに朝香は怒りの表情を浮かべ、胸ぐらをつかんで引き寄せた。


「アンタ、今なんつった?」


「ご、ごめん。なんでもない」


やはり心理は、朝香達には敵わない。


素直に謝ると、朝香は鼻を鳴らし、荷物を片手にさっさと先へ行ってしまった。


それを見送りながら、2人は顔を見合わせる。


「あぁいう奴は加減を知らねぇんだよな。夢、なんでちゃんと教えとかなかったんだよ」


「だって、あんな方向にいくなんて思ってなかったもの。私、あんな感じじゃなかったでしょう?」


「まぁ、そうだけど……。揉め事起こさなきゃいいけどな」


「そうね」


今日ばかりは、朝香が同じクラスではなくて本当に良かった。


夢美は心の中で、密かにそう思っていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ