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でも、こんなに悪いことをしていても、のうのうとプールに浮かんでいるこの人を見ていたら、どうでも良くなってきた。
さすがに全身、水に浸かることはでしないから、靴と靴下だけ抜いで、足だけプールに浸けてみる。
水はひんやりとしていた。
確かに、水を入れて時間が経ったプールは緩くなってしまうから、水が張りたてなのは本当なのだろう。
「控えめだなぁ。どうせ悪いことするなら堂々としちゃえば良いのに」
「超えられない一線というものがありまして…」
言い終わる前に、あろうことかコイツは私の足を掴んで、プールの中に引きずり込んだ。
叫ぶ余裕すらなく、ドボンと水に入る。
しかも、容赦ない力で引っ張られたせいで、深く潜ってしまい、鼻から口から水が入ってきた。
急いで足をつき、顔を水面から出すと、激しく咳き込んでしまった。
「ごめんごめん、力強すぎた」
笑いながら謝ってくるコイツに心底腹がたつ。
私は、予期せぬ出来事が起こることが本当に苦手なのだ。
順応性が皆無なのだ。
すごく、ストレス…