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泳いでいた人が、突然、立ち上がり、バッとこちらを見た。
「なんだ、びっくりした。せんせーかと思った」
私の姿を捉えた少年は、ホッとしたように人懐っこく笑った。
「ここ、立ち入り禁止じゃなかった?」
プールの柵越しに話しかける。
「だって暑いし。それに、こんな網の柵、登ってくれって言ってるようなもんじゃん」
確かに、この高さであれば、やんちゃな男子高校生なんて、あっという間に超えてしまうだろう。
「あんたも泳ぐ?今さっき、水を張ったばかりの冷たいプール」
「今さっきって…、あなたが水を入れたの?」
勝手に入った上、そんなことまでして大丈夫なのだろうか?
むしろ、学校側の監視が甘すぎではないだろうか?