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「お、おじゃましま~す」
いかにもヨーロッパ風!みたいなメルヘンで綺麗なお家だ。
「あ!待ってたよ~、香月!上がって上がって」
せっせとスリッパを出し、ドアを開けてくれる。
部屋の中は甘いにおいで充満していた。
「丁度、ケーキできたとこだったの。今、冷やしてる」
「本当に作ったんだ。有言実行だね」
「楽しみにしててね。あ、ここに座って待ってて。お兄ちゃん呼んでくる」
白いソファを勧められたのでおとなしく座る。
佐奈はリビングから出ていた。
「お兄ちゃーーーん!香月きたよーーー!!」
どうやら、兄の部屋まで呼びに言ったわけではないようだ。
それにしても、彼女の声量には脱帽させられる。
そして、よく通る声だと思う。
しばらくして、佐奈が戻ってきた。
「お兄ちゃん、今来るって。信じられない。寝てたんだよ!?」
「ま、まあ、今、9時だし。土曜だし。学生は寝ててもおかしくないんじゃない?」
「でも、香月がくるのに…」
「おはよ~。久しぶりだね、香月ちゃん」
「只野先輩…、お久しぶりです」
「ちょっとぉ~、お客さんの前でスエットとかありえない!」
「俺の正装だから、これ。そんなことより、俺に用って何?」
「あ、えっと…、高木先輩のことで」
「高木…、ああ、倫太郎か。懐かしいな」
「父が、チケットを貰ったみたいで」
私は、お父さんが貰ってきたチケットを先輩に見せた。
「お、倫太郎じゃん!あいつがコンサートねぇ。俺のサポートが漸く実ったか」
「サポート?」
「そう。やってたでしょ?船流したり、紙飛行機折ったり。うちの親父、外科医なんだよね。んで、倫太郎が患者」
「お、お兄ちゃん。香月とはいえ、患者さんの情報は…」
「だって、知ってるんでしょ?倫太郎がピアノ弾いてた事も、弾けなくなった事も」
「はい」
「そうだったの!?なーんだ」
「それで、高木先輩はどうして居なくなったのか、分かりますか?」
「俺の口から言っていいのか、考えもんだけど…、強いて言うなら…、名医が国外にいたってことかな」
「じゃあ、先輩は直ったんですね」
「多分ね」
「よかった」
「それ、行くの?」
「はい。行こうと思っています」
「そっか。感想、聞かせてね」
「それはぜひ」
「運命の再会か~~。倫太郎じゃなかったら、素敵なのにね」
「お宅の妹さんの恋愛妄想脳、なんとかならないですか?」
「名医待ち」




