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「か、香月ちゃん?どうかした?」
「え、あ、ううん。なんでもない」
チケットを見つめ、ボーっとしてしまっていたらしい。
「お父さん、私、このコンサート、行く」
「そ、そうか。このピアニストが娘と同世代って聞いたからって、チケットくれたんだよ。いい刺激になるといいね」
「うん。そうだね」
もう一度、チケットに目を向ける。
先輩、ピアノ弾ける様になったんだ。
よかった。
「佐奈、只野先輩に会いたいんだけど」
次の日の昼休み、私は佐奈に切り出した。
「えっ?お兄ちゃんに?」
「そう」
「香月がお姉ちゃんになるのはすごく嬉しいけど、女として、お兄ちゃんはあまりオススメしないなぁ」
「いや、そういうんじゃなくて、高木先輩の話がしたかったんだけど」
「え?ああ、倫太郎ね。いや、あの人もオススメはしないなぁ。香月がいいなら…」
「その恋愛脳、なんとかして…」
どうして異性というだけでこれだけ盛り上がれるの、この子は。
先輩も私も、たぶん今はお互いのことよりもピアノが好きでしょうがないと言う感じだと思う。
むしろ、先輩は私以上にピアノ大好きなんじゃないかな。
「お兄ちゃん、大学生だけど、実家から通ってるからすぐ会えると思うよ。ちょっといつ空いてるか聞いてみるね」
「うん。申し訳ないけど、よろしくね」
そして、放課後。
「香月~、今週の土曜、空いてるって~」
「本当?じゃあ、土曜、佐奈ん家、お邪魔する」
「待ってる~~!張り切ってケーキ作っておくね!」
「あの、そんなに無理しなくても」
「だって香月がくるんだもん~。がんばるよ」
「う、うん」
只野先輩に聞いておきたいことがあった。
高木先輩に会う前に。
コンサートに行ったからって、高木先輩と話ができると決まったわけではないけど。




