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「おかえり~。あら、その袋、浴衣買ったの?」
家に帰ると、母が玄関で待ち構えていた。
大方、めったに人と約束をしない私がお出かけをしたので、気になっていたのだろう。
「うん。なかなか可愛い柄のを買えた」
「そう、よかったわね。言ってくれれば、もっとお小遣い、渡したのに」
「いいよ、別に。身の丈にあった買い物しないと」
「香月らしいわね」
さ、ご飯できてるよと言いながら、母はキッチンに入っていった。
私も、手を洗うとキッチンへと向かった。
「おかえり、香月ちゃん」
「あ、ただいま…」
お父さんもいた。
気まずそうにしてしまう自分を何とかしたいとは思うけれど…。
「香月、浴衣買ってきたそうなのよ~」
「へぇ~。15日、夏祭りだもんね。浴衣か、いいなぁ女の子は。」
「男性だって、浴衣きればいいじゃないの」
「う~ん、なんか華やかさとかさ、違うんだよね」
「2人でいってくれば?浴衣きてさ」
「うん、それもいいかもね。今度買おうか」
「そうね。香月はお友達と行っちゃうから、2人になっちゃうけど」
仲良さそうな2人を見ていると、新婚とはいえ、お互いの波長が合っているんだろうな、と我が親ながら眩しく見える。
自分には無いものを持っている2人。
「ごちそうさま」
いつも最初に席を立つのは私だ。
なんとなく、早く退出しなければいけないと感じてしまう。
「は~い、お粗末さま」
お母さんが陽気に応える。
「お風呂、沸いちゃってるから、入りなさいね」
「わかった」
サッと入って、サッとあがると、メールが来ていた。
「今日は楽しかったよ!
お疲れ様~!
今度は香月ちゃんから誘ってくれても
良いんだからね!
おやすみ」
サナちゃんからだ。
本当にこういうところがマメで可愛らしいと思う。
私には真似できない。
「ありがとう。おやすみ」
とだけ返事をしておく。
なんとなく、クーラーではなく、窓を開けて涼をとろうと思った。
ガラリと窓を開けると、どこからか火薬のにおいがする。
近所の子供たちが手持ちの花火でもしていたんだろうか?
田舎だから、家の周りで花火をしても咎められる事はない。
カエルの声を聞きながら、ほんのり香る火薬のにおいをスンスンと嗅いでいた。




